第四十二章 文子の一目惚れ
亮太は、文子の様子が最近おかしい事が気になっていた。
そんなある日、亮太は、「文子、昼休みには赤信号でフラッと出たりして最近おかしいぞ。俺が止めなければ死んでいたかもしれないじゃないか。何かあったのか?」と心配していた。
麻里が、「陽子さん、文子は恋の病なのよ。」と亮太に耳打ちした。
亮太は、「えっ?本当か?文子、ちょっと来て。」と女子更衣室につれていった。
「文子、恋の病って本当か?そんなに悩んでいるのだったら告白しろよ。その勇気がなければ俺が間に入って伝えてやろうか?誰だ?相手は。」と文子の力になろうとしていた。
文子は、「私が歩道橋で足が絡んで転倒した時に、手を差し伸べてくれた人で、さわやかな男性で一目惚れしましたが、どこの誰だかわからないのよ。」と相手が誰なのかわからないと告げた。
亮太は、「その時に自己紹介して、相手の名前を聞かなかったのか?」と確認した。
文子は、「あの時はミニスカートで荷物を両手に持っていたのでバランスを崩して、顔からこけてその男性にパンツ丸見えになり、恥かしくてその場から逃げるように立ち去ったのよ。」とその理由を説明した。
亮太は、「その男性の特徴は?俺も気にかけておくよ。」と文子に協力しようとしていた。
文子は、「中肉中背で特徴がなかったわ。」と相手の男性の事を考えながら返答した。
亮太は、「それじゃ、捜しようがないわね。」と文子に任せるしかないかと諦めた。
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ある日、亮太が昼食後外出していると文子が後ろから、「陽子さん、いた。あの人よ。」と亮太に伝えた。
亮太は、「何しているのよ!アタックしろよ。」と文子の背中を押した。
文子は、「そんな事できないわ。」と恥かしそうでした。
亮太は、「仕方ないな。俺が声をかけてやるよ。」と信号待ちしている文子が一目惚れした男性に向かっていった。
文子は、「やめて!恥かしいから。」と亮太の腕を掴んで止めた。
亮太は、「どうするんだよ。いっちゃったじゃないか。」と呆れると共に、その男性をどこかで見た覚えがあった。
そんなある日、その男性が昌子と歩いている事に亮太が気付いた。
亮太は昌子がその男性と別れると声を掛けた。
亮太は、「昌子、今一緒にいた男性は誰だ?」と声を掛けた。
昌子は、「何?私の弟の重雄よ。私の結婚式の時に会ったでしょう?」と重雄に何かあるのか気になった。
亮太は、そうか。だから見覚えがあったのかと納得していた。
亮太は、「昌子、文子が今、恋の病になっている事は知っているか?」とこの問題を昌子に任せようと考えていた。
昌子は、「ええ、知っているわ。文子に聞きましたが、どこの誰だかわからないそうじゃないの。」と文子の問題と弟が、どう関係しているのか理解できない様子でした。
亮太は、「先日、ついに文子がその男性を見つけたよ。今、別れた、昌子の弟よ。この問題は昌子に任せるよ。」と文子の相手を教えた。
昌子は、「えっ!?嘘でしょう?何かの間違いかも知れないので、一度二人を会わせるわ。」と文子の相手をはっきりさせようとしていた。
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昌子は帰宅後、友彦に事情を説明して、「家に重雄と文子を呼んで、二人を会わせれば、文子の様子から相手が重雄なのかどうか判明するわ。」と相談した。
友彦は、「それは良い考えだ。週末にでも二人を呼んで、ここで会わせろよ。俺は商売柄、週末は出勤で平日に休みだから、この件はお前に任せるよ。」と友彦も賛成した。
昌子は早速、重雄に電話して、いつも食事はどうしているのか確認すると、外食かコンビニ弁当だと聞いた。
昌子は、「そんな食事をしていると栄養が偏るわよ。土曜日の夕飯は家で御馳走するから来て。」と重雄を家に呼んだ。
重雄は、「本当か?助かるよ。今週の土曜日の夕方六時ごろに行くよ。」と喜んでいた。
翌日出勤した昌子は文子に、「文子、最近恋の病で悩んでいるそうね。土曜日に家に来て。夕飯でも食べながら相談に乗るわ。」と文子も家に呼んだ。
その後、昌子が席を立つと、亮太が後を追った。
亮太は、「昌子、今週末にお前の弟も来るのか?二人を会わせるのか?」とどんな作戦なのか心配して確認した。
昌子は、「勿論重雄も呼んでいるわ。」と意気込んでいた。
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週末、文子が重雄より先に、昌子の自宅に来た。
文子は、食事の準備が数人分あったので、「私以外に誰か来るのですか?」と確認した。
昌子は、「主人のもありますが、主人は仕事の関係で、何時に帰ってくるかわからないわ。このような話は男性の意見も聞いたほうがいいと思うので、私の弟を呼んだのよ。」と説明していると玄関のベルが鳴った。
昌子が重雄を連れてきて、「文子、私の弟の重雄よ。」と紹介した。
文子は、「えっ?あっ、・・・・き、木島文子です。」と明らかに動揺していた。
その様子を見て昌子は、文子が一目惚れした相手は陽子さんが指摘したように重雄に間違いないと確信した。
昌子は、「文子、どうしたの?モジモジして。気晴らしに、明日テーマパークにでも行ったら?一人だと周りから浮いてしまうから重雄、あんたも行きなさいよ。」と提案した。
重雄は、「何で俺も行くのだ?」と昌子の提案が予想外でした。
昌子は、「それじゃ、明日の朝十時に待ち合わせしなさいね。」と強引に進めた。
重雄は、「誰も行くと言ってないだろう。だいたい、初対面の女性に失礼だろう。」と姉の強引さに呆れていた。
昌子は、「文子、初対面なの?」と確認した。
文子は、「いえ、先日会っています。」と震えるような声で呟いた。
重雄は、「えっ?どこかでお会いしましたか?」と文子を見ながら考えていた。
昌子は、「もう、あんたは薄情ね。先日歩道橋で文子を助けなかった?」とヒントを与えた。
重雄は、「あっ、思い出した。歩道橋で、顔からこけてパンツ丸見えになった女性だ。顔のバンドエイドはその時のものなの?大丈夫でしたか?」と心配していた。
昌子は、「パンツに注目しないの!こんな怪我は大丈夫よね。明日は二人で楽しんできなさいね。それじゃ、食事しましょう。」と、その後、食事しながら雑談していた。
食後、重雄と文子は後片付けを手伝っていた。
片付け終わるとテーブルに座り雑談する中で、昌子が連絡先を交換するように提案した。
二人は連絡先を交換して、もう少し雑談して二人は帰った。
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日曜日の夕方に昌子は重雄に電話して、今日は文子と上手くいったのか確認すると、重雄もまんざらではない様子でした。
翌日出勤すると、土曜日に二人会わせてどうだったのか亮太に確認された。
昌子は、「陽子さんの指摘通り、文子が一目惚れした相手は私の弟だったわ。昨日、強引に二人をテーマパークでデートさせたわ。夕方重雄に電話して確認すると、重雄もまんざらではない様子でした。」と報告していると文子が出勤してきた。
昌子は、「文子、昨日はどうでしたか?重雄は一人住まいで、食事は外食やコンビニ弁当にしているので栄養が偏るのよ。たまに重雄の食事を作ってくれたら私も安心なのでお願いできませんか?」と強引に二人をくっつけようとしていた。
文子は、「そんなの押し掛け女房みたいで嫌だわ。それにどこに住んでいるのかも知らないのよ。」と恥かしそうでした。
昌子は、「何、生娘みたいな事を言っているのよ。重雄には昼休みに私から電話して都合を聞いておくわ。住んでいる場所は心配しなくても私が案内してあげるわ。」と強引に決めてしまった。
昌子は昼休みに重雄に電話した。
「重雄、今、大丈夫?」と、今電話で話できる状態か確認した。
重雄は、「今、昼休み中なので大丈夫だけれども姉ちゃん、突然どうしたの?」と何かあったのか確認した。
昌子は、「先日は家で食事したけれども、今日はあんたの家に行き食事作るわ。都合はどう?」と重雄の予定を確認した。
重雄は、「今日は早く帰れそうなので待っているよ。」と先日からどうしたのか不思議そうでした。
昌子は、「わかったわ。食材を買ってから行くので。七時ごろになると思うわ。何が食べたい?」と希望メニューを確認した。
重雄は、「勿論肉だ。トンカツ食べたいな。」と希望した。
昌子は、「あんたは子どもの頃から肉が好きだったわね。でも、肉ばかり食べるのは駄目よ。野菜サラダも作るわよ。」とメニューを考えていた。
昌子は、「文子、今日の帰りに食材を買って弟の所に行くわよ。」と強引に決めた。
そんな様子を見て亮太は、さすが昌子さんだ。積極的だな。この件を昌子に任せて正解だったわ。と安心していた。
やがて、二人は交際を始めて、数ヵ月後、昌子が重雄にプロポーズするように助言して二人は婚約した。
次回投稿予定日は、8月23日を予定しています。