第四十一章 亮太、愛美と探偵する
亮太が男装して、隆一や愛美に会うと聞いた泉が、どうなったのか喫茶店に様子を見に来た。
愛美が泉に気付いて、「泉さん。」と声をかけた。
泉は、「亮太から話を聞いていたので、どうなったのか様子を見に来ました。」とここに来た理由を説明した。
亮太は、「要するに野次馬ね。」と笑った。
泉は、「何が野次馬よ。亮太の事を心配して来たんじゃないの。」と亮太を睨んでいた。
愛美は、険悪な雰囲気になってきたので話題を変えて、「陽子さんと亮太さんが同一人物だと知って驚きました。私は陽子さんに二度も助けられたので何か御礼がしたいわ。何がいいかしら。」と亮太に確認した。
泉が、「亮太は元々男性だったから、生理の処理など下手なのよ。同じ探偵事務所の探偵として活動するのであれば、もし、亮太が生理になれば手伝ってあげてね。その他でも女性になった事で亮太が困っていれば助けてあげてね。」と依頼した。
愛美は、「わかったわ。」と助けてもらった御礼として引き受けた。
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数日後、泉は愛美に電話した。
「今週末、亮太は探偵のアルバイトだと言っていましたが、愛美さんも一緒なのですか?」と何か言いたそうでした。
「ええ、そうですが、何かあるのですか?」と泉の考えを確認した。
「その頃に、亮太は生理になると思います。亮太は元々男性だから、自分が生理になっている事に気付かない事があるのよ。亮太の事をお願いするわ。」と今回は愛美に助けてもらおうと考えていた。
「そうなの。わかりました。気を付けておきます。」といざとなったら亮太を助けようと考えていた。
泉は愛美さんに亮太の生理の事を頼んで安心していた。
亮太は友彦から、探偵の依頼があると聞いて、週末探偵事務所に行き、愛美と友彦と三人で打ち合わせした。
友彦は、「今回の依頼は、愛美ちゃんの高校時代の同級生で、東京に進学した木下博子さんが数回ストーカーされていて、愛美ちゃんがこの探偵事務所を博子さんに紹介しました。博子さんからストーカーの身元を調べてほしいと依頼があった。その結果次第で今後の対応を考えるそうだ。ストーカーされるのは週末らしいので二人に任せるよ。」と説明した。
亮太は、「了解。愛美ちゃん、博子さんを紹介して。」と愛美と二人で調査しようとしていた。
愛美は、「わかったわ。」と亮太と一緒なので心強く、博子に電話して優秀な探偵を連れて行くと告げて、正午に赤坂のレストランで待ち合わせした。
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レストランで食事しながら愛美は、「博子ちゃん、彼女は秋山陽子さんで、オリンピック柔道の、松木翔子選手の謎のコーチだから頼りになるわよ。」と亮太の事を紹介した。
博子は、「何度か週刊誌で、お名前を拝見した事があります。何でも、秋山官房長官のお嬢様で、人身売買事件や結婚詐欺などの事件を解決したと掲載されていました。先日は指名手配中の殺人犯と、格闘している様子もテレビニュースでみました。よろしくお願いします。」と亮太が担当してくれるので安心した様子でした。
愛美は、「それだけじゃないわよ。私も何度も陽子さんに助けられているのよ。」と亮太は頼りになると説明した。
博子は、「殺人犯と格闘している時も、誰かを庇っているように見えました。多くの人を助けているのですね。ところで、依頼の件ですが、私は週末の午後、料理教室に通っていますが、その帰りに毎回ストーカーされていて、いつか襲われるんじゃないかと心配なのよ。」と怖がっている様子でした。
亮太は、料理教室の場所と終了時間を聞いて、その時間に料理教室に行った。
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料理教室から出て来た博子さんを、外で待機していた男性がストーカーしていた。
亮太と愛美はしばらく様子を窺っていたが、ストーカー行為をやめる様子がない為に声をかけた。
亮太は、「おい、何故彼女を追い回すのだ。怖がっているじゃないか!」と声を掛けた。
ストーカーは、「ごめんなさい。父に頼まれました。」と謝っていた。
亮太は、「父に頼まれた?わかるように説明しろ。」とストーカーの言葉が理解できませんでした。
ストーカーは、「姉に見合いを勧めても断ってくるだけで、誰か恋人がいるのか調べてこいと父に命令された。」と姉を怖がらせたようでしたので、申し訳なさそうに説明した。
亮太は、「姉だ?お前彼女の弟か?」と確認している間に、愛美が博子に、「博子、ストーカーが、あなたの弟だと言っているけれども、博子に弟がいたの?」と確認した。
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博子は驚いてかけより、「ちょっと!勇太じゃないの!」と怒って、勇太の頭を平手で叩いた。
愛美は、「博子、落ち着いて!」と博子を止めた。
博子は、「ごめん、愛美。ストーカーの正体がわかったので、探偵の依頼はこれで終了として、後日、請求書を郵送して下さい。勇太、ちょっときて。」と勇太と話がしたい様子で、勇太の手を引っ張って行った。
勇太は、「最終電車に間に合わなくなるから今日は帰るよ。」と逃げようとした。
博子は、「まだ充分時間はあるわよ。乗り遅れたら、私のマンションに泊まればいいわよ。明日は休みなんでしょう?帰ったら父に電話するわよ。」と逃げようとしている勇太を無理に連れて帰った。
亮太と愛美は唖然として、博子兄弟を見送った。
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亮太は友彦に電話して。「ストーカーは依頼者の弟だったよ。依頼者から、探偵業務終了として、請求書郵送を依頼された。弟は依頼者がマンションに連れて帰ったよ。」と報告した。
友彦は、「狂暴なストーカーでなくてホッとしたよ。明日、交通費などの清算をして下さい。依頼者への請求金額や、二人の給与を計算しておくから、来週の週末、探偵事務所に来てくれ。」と無事解決してホッとしている様子でした。
愛美もホッとして落ち着くと、亮太の様子がおかしい事に気付いた。
愛美は、「陽子さん、どうかしたの?泉さんから、陽子さんが、そろそろ生理になる頃だと聞きましたが、陽子さん、生理が始まったの?」と確認した。
亮太は、「えっ?そうなのか?生理が始まったのか?どうすればいいんだ?」と不安そうでした。
愛美は、「トイレを捜すより、帰ったほうが早いかもしれないわ。」とタクシーを呼んだ。
その後、タクシーが来るまでの間に、愛美は泉に電話で事情を説明して、準備しておくように依頼した。
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亮太が帰ると泉が、「愛美ちゃん、ありがとう。ちょっと待っていてね。亮太、ちょっと来て。」と愛美を応接室で待たせて、お手伝いさんに、お茶の準備をさせて、泉は亮太の生理の処理をした。
泉は、「ほら、尿漏れパットをしていてよかったでしょう。パッドしてなければ、ズボンにまで染み出して、恐らくタクシーの座席を血で染めていたかもしれないわよ。タンポンしておきなさいと言ったのに。」と今回も何とかなったと安心していた。
亮太は、「タンポンってなんだ?」と確認した。
泉は、「何度教えたら覚えるのよ。何年女をやっているのよ。膣内に挿入して出血を吸収するのよ。もういいわ。私がするわ。」と生理の処理をして、応接室に向かった。
泉は、「愛美ちゃん、待たせてごめんね。もし私の手に負えなかったら助けてもらおうと思って待って貰っていましたが、何とか私一人で処理できました。」と愛美を安心させた。
その話を通路で聞いた治子が応接室に入ってきた。
「泉さん、陽子の体はすみれの体で、すみれに生理の事を教えたのは私だから、こんな時は遠慮なく私を頼ってね。陽子さんは私達の大事な家族だから、教育係だからといって一人で抱え込まないでね。」と家族をもっと頼って本物の家族になろうとしていた。
泉は、「ありがとうございます。今後、私の手に負えない時はよろしくお願いします。」と頭を下げて、亮太の頭も押さえて、「ほら、亮太もお願いして。」と亮太の頭も下げさせた。
亮太は、「それじゃ、泉がいない時は、お姉様に相談すればいいのですか?」と確認した。
泉は、「亮太、そんな心配するより、早く一人前の女性になる事を考えて。そうすれば教育係なんて不要なのよ。」と睨んだ。
亮太は、藪蛇だったと後悔した。
亮太は都合が悪くなってきたので、「愛美ちゃん、帰ろうか。送っていくよ。」と逃げようとした。
泉は、「亮太、何逃げようとしているのよ。愛美ちゃん、隆一さんに電話しておいたわよ。迎えに来てくれるそうよ。もう少し、ここで待っていてね。」と亮太を横目でチラッと見た。
その後、愛美は迎えに来た隆一と帰った。
次回投稿予定日は、8月19日を予定しています。