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第三十七章 亮太、アリバイ証人になる

ある日、職場に京都府警の広美から泉に着信があった。

電話を受けた女子社員が、「熊川さん、高木さんという女性の方からお電話が入っています。」と取り次いた。

「はい、熊川です。」と誰から電話だろうと考えて電話にでた。

「熊川泉さんですか?」とフルネームで確認した。

「はい、そうですが、その声は広美さんですか?」と聞き覚えのある声でしたので確認した。

「はい、京都府警捜査一課の高木です。」と名乗った。

泉は、警察から電話だと気付いて、何らかの事件に巻き込まれたのかと心配した。

広美は、「警察だと名乗ると、周囲の目もあり御迷惑だと思ったものですから高木と名乗りました。少し確認させて頂きたい事があります。」と電話した目的を説明した。

    **********

泉は、「はい、何でしょうか?」とやはり何らかの事件に巻き込まれたようだわ。確認するって、私、警察に睨まれるような事を何かしたかしら。と心配していた。

広美は、「白石亮太さんは、泉さんの昔の恋人で既に死亡していますよね?」と亮太の事を確認した。

泉は、広美が刑事なのでいい加減な返事はできないと判断して、「そんな昔の事を、どうして今頃調べているのですか?」と何故亮太の事を調べているのか心配していた。

広美は、「実は、ある事件の容疑者が、犯行時刻には東京にいて白石亮太さんを見かけて目があったと供述しています。捜査すると白石亮太さんは既に死亡していた為に、容疑者の言い逃れだと判断して追求しましたが、間違いなく白石亮太さんだったと強く供述しています。容疑者は白石亮太さんの恋人である熊川泉さんが東京に住んでいるはずだから確認してほしいと繰り返しています。白石亮太さんの血縁関係者でもなさそうでしたし、何か御存じないですか?」と確認された。

泉は、「広美さんは、殺人事件の担当でしたよね。殺人事件の捜査ですか?嘘は吐けないですね。確かに白石亮太は生きています。」と伝えた。

広美は、泉の予想外の返答に驚いて、「えっ?本当ですか?何故死んだ事になっているのですか?」と何がどうなっているのか混乱していた。

泉は、「でも、白石亮太の体は死んでいます。」と伝えた。

広美は益々混乱して、「えっ?体だけ死んだとはどういう事ですか?電話では話せないような、込み入った事情がありそうなので、刑事を東京に出張させます。人選については後ほど連絡します。」と死んだ事になっている白石亮太さんが生きていると聞いて、混乱して直接会って事情を聞く事にした。

    **********

泉は電話終了後、慌てて亮太の所に行き、「ちょっと来て。」と亮太の手を引っ張って非常出口に連れ出した。

亮太は、「泉、急にどうしたのだ?」と泉の強引さに驚いていた。

泉は、「男性だった頃の知り合いに最近会ってない?」と確認した。

亮太は、「そんな事で、何でそんなに慌てているのだ?何かあったのか?」と昔の知り合いに偶然会っても、女性の姿をしていて声も女性だから気付かれないだろうと考えていた。

泉は、「今、京都府警捜査一課の高木広美さんから電話があり、殺人事件の容疑者が、犯行時刻に白石亮太に会ったとアリバイ証言しているそうよ。殺人事件なので嘘は吐けないので、白石亮太は生きていると証言したら、死んだ事になっている白石亮太が生きている事情など、京都から刑事が事情を聞きに来るらしいわよ。」と伝えた。

亮太は、「そうか。わかった。刑事がくれば俺も同席するよ。」と最悪正体がばれても仕方ないかと覚悟した。

広美は捜査員達を署に呼び戻して捜査会議で、「念の為に、白石亮太さんの恋人だった熊川泉さんに確認すると、容疑者の証言通り、白石亮太さんは元気に生きているらしいわよ。死んだのは体だけだとの事なのでよくわからなくて、何か込み入った事情がありそうです。電話では話せないようなので刑事を東京に出張させて会って直接事情を聞く事にしました。熊川泉さんと面識のある後藤刑事にお願いします。今から向かえば夕方には泉さんが勤務する会社に到着すると思います。今晩事情を聞いて、明日京都に戻ってきて下さい。他の刑事は事件を別の角度から再度捜査して下さい。」と指示した。

    **********

夕方、泉は受付から、「後藤正子さんが熊川さんに面会に来ています。」と連絡を受けた。

泉は受付に行き、「御無沙汰しています。もうすぐ勤務が終わりますのでしばらくお待ち下さい。」と待合室で待って頂き、亮太の部署に行き、「待合室で待って頂いています。一緒に連れて帰るわよ。」と心の準備をさせた。

勤務終了後、泉は亮太と後藤刑事を秋山邸に案内して、亮太が男性だったころの写真と動画を持ってきて、泉が、「彼が白石亮太です。」と説明した。

後藤刑事は、「私達が捜査した結果、白石亮太さんは亡くなっていました。もし生きているのでしたら、是非会わせて頂けませんか?」と亮太から直接事情を聞きたそうでした。

泉は、「亮太、化粧落として。」と指示した。

亮太が化粧を落とすと泉が、「白石亮太は現在、秋山陽子と名乗っています。」と亮太と陽子が同一人物だと説明した。

後藤刑事は、鳩が豆鉄砲をくらったような顔をして、顔は似ていますが、声も体も違うし混乱していた。

亮太は、交通事故から始まって、秋山官房長官の娘になった事まで全てを説明した。

後藤刑事は信じられませんでした。スカーフを取って、首の手術痕や、化粧を落とした亮太の顔を見ても半信半疑でした。

亮太は、「これでも信じられなかったら、私の主治医を紹介しますので、直接医師に確認して下さい。」と駄目押しした。

    **********

泉は、「所で亮太、最近スッピンで外出してない?」と確認した。

亮太は、「車だから、面倒な化粧しなくてもいいだろうと、スッピンで外出する事はよくあるよ。その時に、その容疑者と会ったのだろう。容疑者としか聞いてないからなんとも言えない。」とスッピンで何度も外出していると白状した。

泉は、「スッピンで何度も外出しているの?生理の処理もちゃんとできないし、もっと女性としての自覚を持ちなさいよ。以前のように、スカート姿、それもミニスカートで、大股開いてないでしょうね。」と確認した。

竜太は、「最近は大股開いてないが、ロングスカートだと走りづらいので、急いでいる時は、スカートをたくしあげて走っているよ。」と笑っていた。

泉は、「笑いごとじゃないわよ。人前でそんな事をしているの?女性としての礼儀作法の教育係としての私の立場がないじゃないの!」と怒っていた。

後藤刑事は笑いながら、容疑者の顔写真を見せると、「清水康夫じゃないか。確かに先日、渋谷で会ったよ。スッピンだったから、ヤバイと思い、慌てて逃げた。」と証言した。

後藤刑事は、亮太が清水康夫と会った日時を確認して、広美に電話した。

「白石亮太さんに会って、直接確認しました。確かに犯行時刻、清水康夫と会ったそうです。白石亮太さんについては、体だけ死んだ理由を聞きましたが、まだ信じられません。明日主治医の大日本医療大学第一外科の東城陽子先生にアポを取ったので、事情を聞いてから京都に戻るので、夕方になると思います。詳しい事情は京都に帰ってから説明します。」と報告した。

    **********

泉は後藤刑事との話が終了後、「亮太は乱暴なので、鏡を何枚も割って、コンパクト鏡も直に壊すから、割れない手鏡をプレゼントするわ。でも、姿見だけは割らずに大事に使っているようね。」と渡した。

亮太は、「そんな鏡があるのか?」と信じられない様子でした。

泉は、「あるわよ。ガラスではなく金属を磨いて作った鏡よ。」と説明した。

亮太は、「昔の女性が使っていたような大きな鏡じゃないか。意外に重たいな。」と不満そうでした。

泉は、「金属だから重たいのは当たり前でしょう。鏡は女性の必需品よ。この手鏡を常にカバンに入れて持ち歩いて。」と手がかかるなと不満そうでした。

後藤刑事は、「何故姿見だけは割らないの?」と不思議そうでした。

泉は、「先ほど説明したように、亮太は男性だから、裸になって女性の裸を見ているのよ。Hね。」と亮太を横目でチラッと見た。

その後、亮太は後藤刑事をホテルまで送った。

その夜、亮太は泉に、明日、急な私用で会社を休む事を結城課長に伝言依頼した。

翌日亮太は、後藤刑事をホテルまで迎いに行き、一緒に主治医の東城陽子先生に会い、事情を聞いて、その後、東京駅まで送り、一緒に昼食を摂り後藤刑事と別れた。

    **********

夕方、京都府警に戻った後藤刑事は捜査会議で、白石亮太さんの事故の新聞記事と、秋山すみれさんが、強盗に頭部を強打され、脳死状態になった新聞記事のコピーを見せて、報告した。

「白石亮太さんは、事故の時、必死に頭部を庇ったので、首から上は正常ですが、首から下は、多臓器同時移植は不可能で、手の施しようがなく、数日の命だったそうです。逆に、秋山すみれさんは頭部だけ死んで、体は正常です。すなわち脳死です。それぞれ、正常な白石亮太さんの頭部と、秋山すみれさんの胴体を手術でつなぎ合わせたそうです。」と説明した。

広美は、「嘘でしょう?白石亮太は男性よ。女性の秋山陽子さんと同一人物だなんて、SF映画みたいな話はとても信じられないわ。フランケンシュタインじゃあるまいし。」と絶句していた。

後藤刑事は、「ええ、私も信じられなかったので、主治医の東城陽子先生を紹介して頂きました。医師には守秘義務がある為、陽子さんに口添えして頂き、東城陽子先生の説明を聞いてきました。陽子さんは、首から上は男性で、首から下は女性で間違いないそうです。ですから、いつ急変してもおかしくないそうです。毎月検査しているそうですが、現段階では正常だそうです。」と追加説明した。

広美は、「とても信じられませんが、医師の、それも世界一の名医の証言もあり、東城陽子先生のサインのある、正式な診断書もある為に信じるしかないでしょう。清水康夫さんが、犯行時刻に東京にいたのであれば、犯行は不可能です。アリバイ成立ね。死んでいる白石亮太に会ったと嘘を吐いていると判断して、彼が犯人だと思い込んでしまいました。もう一度事件を最初から洗い直しましょう。清水康夫さんには私が係長として丁重に謝り即時釈放します。」と部下に指示した。


次回投稿予定日は、8月5日を予定しています。

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