優しいメイドさんはいないのか!?〜1〜
これは作者がフィーリングだけで書き綴ったものになります。
何にも考えて書いてないので、文章は拙く、作者は気持ち悪いというね。本当に気持ち悪い人間ですよ、私は。まあそんな事はどうでもいいね。
ティーカップを持ち上げて豊潤な香りを楽しんだ後、紅茶を口に含む。
「うーん……流石だね、君の入れてくれた紅茶はやはり最高だ」
「恐れ入ります」
恭しく頭を下げる、ボク専属のメイド。
如何にも『できる女』といった風体の彼女は、美しいというよりも可愛い。可憐な風貌であるにも関わらず、その身に纏う真面目そうな雰囲気がそうであることを気付かせない。
きつく結ばれた唇からついつい厳しそうな印象を与えてしまいがちではあるが、彼女は見た目に因らず優しい。
「今日はいい天気だ。後で一緒に朝の散歩でも嗜まないかい?」
「わたくしはまだ雑務が残っております故」
「つれない事を言わないでおくれよ。ボクは君と行きたいんだ」
僅かに頬を染めて迷うように視線を俯かせるメイド。
「……で、ですが坊ちゃま……」
「ボクが行きたいと言っているんだ。それとも、君は嫌なのかい?」
「そんな事ありません!」
大声を出してボクの言葉を否定するメイド。
それから慌てた様に、
「坊ちゃまが御望みになるのであれば……。それに、わたくしも……」
林檎の様に顔を真っ赤にしたメイドは俯き加減にそう言った。
「わたくしも――なんだい?」
「い、意地悪です……坊ちゃまは」
拗ねたように呟くメイドの顔はやはり朱に染まっていて。
「じゃあ、行こうか」
そう言って、ボクはメイドの手を取って広大な中庭目掛けて走り出した。
まあ、当然そんな事はなく。
束の間の現実逃避は失敗に終わった。
ボクは腹部に走った激痛に呻きながら、ベッドの中で悶える。
「お早う御座います、坊ちゃま」
可憐な相貌に、有無を言わせぬ雰囲気を漂わる少女がベッドの脇に仁王立ちしていた。メイド服という彼女なりの戦闘服に身を包み、箒を持っている少女の名前は桔梗。名字は捨てたとかで、詳しくは知らないけれど。
もういっそバイオレンス桔梗でいいよ。
思いこそすれ、口に出す事はない。それは自殺行為に等しいからだ。
「本日は十三秒の寝坊に御座います」
厳かに告げる桔梗の顔には一切の笑顔はなく、いつも通りの無表情。その視線は何処までも苛烈。
ボクがドMならばハアハアしていたところだろうけど、生憎ボクにそんな趣味はない。
しかもただのMならば耐えきれないほどなのだ。ボクの精神を苛む視線が辛い。
「いつまでベッドに縋り付いておられるおつもりですか?」
その目は単刀直入に「出ろ」と語っておられます。
この痛苦を与えたのが何処の誰かすっかりお忘れになっておられるようだ。
くそう、この暴力メイドめ。
ボクが少し寝坊したというだけで、箒による打撃を腹部に与えやがるんですよ。しかも何処の流派で学んだのやら、衝撃が腹部のみならず背中まで突き抜けるという。達人クラスの箒の使い手だ。
ボクは理不尽な仕打ちには決して屈しない。
いくらだって縋り付いてみせるさ!
「…………………………………………………」
……っ。
無言でボクを見詰める桔梗。
なんだこのプレッシャーは……!
沈黙が長すぎてもはや精神が擦り切れそうだった。
このままでは不味い。あまりに長くこの沈黙に耐えていると発狂しそうだ。こんなところで廃人になるのは御免被りたい。
ここは彼女の弱点をついて動揺を誘って今の空気を霧散させるしかない!
「貧乳」
「もう一度仰って下さい。わたくしの聴き間違いの可能性が御座いますので」
「……ず、ずびばぜんでぢだ……」
痛い、全身が痛い――っ!?
それは一瞬の出来事でした。
箒による瞬間的な打突を何発も受けた後、ベッドから引きずり出され、絨毯の上に叩きつけられた。何度も……何度も。この無駄な怪力は一体何なんだ?
地面に倒れこんで再起不能の重傷を負ったボクに投げかけられたのは、優しさとは無縁の言葉であった。
「何故謝罪をなさるのですか?」
ありえるはずのない満面の笑みを浮かべた桔梗は、ボクが人生で数えるほどしか聴いた事のない優しい声音で話す。
「ほ、本当に……勘弁、し……て下さ、い」
ボクは泣きながら言う。
「坊ちゃまが一体何の事を仰っているのかは存じ上げませんが、朝食の準備ができておりますので、お早めにいらして下さい」
可愛らしく首を傾げる桔梗に背筋が泡立つのが判った。
「りょ、了解しました……」
「では、失礼致します」
恭しく頭を下げた桔梗が部屋の扉を静かに閉めて出ていった。
「…………いててて、全くやってくれるあの腐れメイド……!」
ボクがマイバディーを擦りながら毒づいていると、静かに自室の扉が開いた。
ボクは慄然とした面持ちでそれを見詰める。
「言い忘れておりましたが、坊ちゃま。本日は何分多忙なものでしたので、その為か朝食に不備がみられました。わたくしとしても、そのような失敗作を坊ちゃまにお出しする様な真似は出来ません。ですので、朝食の方は廃棄させて頂きました。至らないメイドで誠に申し訳ございません」
扉から顔を出した桔梗が、ボクに冷たい目を向けながら告げたのは、最悪の宣告だった。
「聴かれていたとはな。 この地獄耳が!!」
もちろんそんな事は言わなかった。
その後、土下座で額を玄関の石畳に額を打ち付けて何度も謝罪していると、桔梗は朝食を出してくれた。
これは優しいとは言わないだろうけど、日頃のギャップなのか、涙を浮かべて歓喜するボクがいた。