襲撃
翌日空が明るくなってきたころイブキに揺すり起こされた。どうやら話しを聞いているうちに眠ってしまったようだ。仲間が来たらしい。
「兄貴っご無事で良かったです!」
「それでこいつは何っすか?捕虜ですか?さすがイブキさんです!」
金色で肩より少し長く外側に跳ねている髪のクレハと同じくらいの身長で兄貴と口にした青色の着物を着た青年はキハチといい本当の兄弟ではないようだ。
もう一人はイブキよりは背は低いものの細見でベージュ色で襟足が肩につくくらいの髪で緑色の着物を着た青年はツルミというらしい。二人ともイブキを慕っているということは伝わってきた。
「こいつはクレハ。人間だ。でも捕まった俺を助けてくれた恩人だ。丁重に扱え。」
「イブキさんの恩人なら俺らの恩人も同然っす!」
「人間ってのは気に入らねぇけど兄貴がそういうなら仕方ねぇ」
ツルミは友好的な態度だがキハチは渋々といった態度で答え、表情もそれぞれである。
乗馬経験のないクレハはイブキと共に馬に乗ると背中にしがみつく。
「落ちないかこれ?」
「それはクレハ次第だな。しっかり捕まってろ。」
初めて乗る馬の背中は不安定で恐怖しかないが乗らないわけにはいかないのでイブキの存在だけがたよりだ。
「兄貴にくっつき過ぎんなよ」
キハチに睨まれているが気にしている余裕なんかない。
「そういうな。こいつは俺たちと違って上等な育ちをしてきたんだ。何もかもが初めてだ。」
イブキの言葉に驚いた顔になる。日常的に使っているものが初めてとはどういう生活を送ってきたのかと信じられないと言いたそうにクレハをみる。
「急ぐぞ。砂嵐が起きたら厄介だ」
砂漠の中を三頭の馬が進む。周りは砂しかない。何もかもドームの中とは違いすぎる。この中を鬼たちは平然と生活しているのだと思うとゾッとする。もう何度こんな気持ちになったのかわからないくらいである。