外の世界4
火を起こすと煙が出るから万が一追手が来る事を考えると魚は焼けない、とイブキが言った言葉はクレハには理解できなかった。その様子に気付いたイブキは魚や肉はどう調理しているのか聞くと火というものはなく代わりに電気が使われていると。イブキたちでは当たり前のように使われている明かりは火ではなく電気であると。
「じゃあ火を見たことないのか?」
「授業では昔の文明で欠かせないものとしてあったことは知っているけど実物は見たことないな。火災の原因になるから禁止となったんだ。」
「危ないものは全て禁止か。ずいぶん親切な世界じゃねぇか。」
嘲笑うかのようにいうイブキを睨むがクレハの口から文句は出なかった。
「確かに便利過ぎる世界なんだ」
「外は不便だろ?戻ってもいいんだぜ。お前一人くらいならドームに入れてくれるだろ?」
「嫌だ!私は管理されてない本当の世界を見たいんだっそしたら生きたいって気持ちがわかる気がするんだ。」
クレハの言葉にイブキは笑顔を見せる。
「お前意外と強情だな。嫌いじゃねぇぞ。」
「どういたしまして。だいたいドームの外に出てしまえばよほどの事がない限り入れてもらえないんだ。去る者は追わず、だよ。それで鬼の郷にはどうやって行くんだ?君たちの文明に自動車とかバイクといった私たちと同じような機械の移動手段があるとは思えないけど?」
「思っている通りお前さんたちみてぇな高度な技術は持ってねぇよ。クレハは馬に乗った事はあるか?」
「馬って乗るものなのか!あ、そういえば授業で昔は乗馬っていう」
「もういい」
イブキはため息をつく。
「よくわかったからクレハのこれからのことは全部俺に任せろ。それからずいぶん誤解されてるけど鬼は人肉食わねぇし血もすすらねぇよ。だいたい人類はドームの中から出てこないんだぜ。それでどうやって食える?」
「あっ」
(言われてみればそうだ。私たちは今まで鬼を見たことも誰かが被害にあった事を聞いたわけではない)
「たぶん鬼と人類の間で昔何かあったんだろ。だから互いが顔合わせないように真実と異なる噂をずっと流してたんだろうな。」
(今は違うとしても昔は食べたり血を吸っていたかもしれないな。それに食べ物としての人類が近くにいないから食べないだけでその気になれば・・・・・・)
身を守るための武器を何か持ってくればよかったと今更ながら思ってしまう。
(イブキはどうなんだろう?口は悪いけど私の事は色々気にかけてくれているから信じてもいいんだよな?)
「おい、黙り込んで何考えているか知らないが俺はクレハを絶対裏切らないからな。お前は俺の恩人だ。恩人を陥れるなんて事はこの命にかけてもしない。」
「イブキの事疑ったりなんかしない!でもありがとう。」
「状況が状況だから暗い気持ちになるのは仕方ないだろ。ま、時間はあるから鬼の郷について教えてやる」
イブキの説明によると砂嵐から守るために森の中に集落を作り建物は木や岩を使って頑丈に作られているようだ。水は集落にいくつかある井戸を使い、ガスや電気はないため火を使っているようだ。
(電気がない?井戸?)
「まっまてっ食事はどうやって作ってる?風呂は?灯りはどうなってるんだっっ」
「やっぱそういう反応か。実際見ればわかるから楽しみにしてろ。」
イブキの言っていることは理解できないがやはり人類に比べれば鬼の文明は原始的だと思った。