外の世界3
「つまり病原菌と災害がいっぱいある外の世界に出たら人間は生きていけないかもな。お前の弟はそういうことわかってたってことか。随分賢いじゃねぇか」
「賢い?学校の成績は下の方だぞ。まあ、生きる事に関しては私よりずっと偉いだろうな」
「そういうこと言うならクレハは成績優秀で言われたことは忠実に行う模範的な奴で冒険はしない性格か。」
「外の世界には最も向かないタイプだと思っただろ?」
「そうだな。それでもお前は変わろうとしている。いいことじゃねぇか。」
互いに害がないと安心したところで夜歩き通しだった疲れが出てきた。
丸太をどこからか見つけてきたイブキは一つをクレハに渡すとそれを枕にして地面に横になる。
そんな行動を奇妙なものを見る目でクレハは見ている。
「突っ立ってねぇでクレハも寝ておけ。それとも一人じゃ寝れないか?」
「別にそうじゃないけどこんなベットもない所で寝れるのかと思って」
「チッこれだからお坊ちゃんは」
イブキは素早く体を起こすとクレハを背後から抱えて再び地面に沈む。
何が起きたのかしばらく理解できなかったが自分はイブキの抱き枕にされているのだと気づく。
「なんでっっイブキこそ一人で寝れないじゃないかっ私は寝れる!ただ外で寝るのは初めてだから驚いただけだ!はなせっ」
「うるせぇな黙らねぇと口塞ぐぞ」
不機嫌さを含んだイブキの声にクレハはおとなしくするしかないと諦めた。
いつのまにかクレハは熟睡していたらしい。イブキに声を掛けられて目を覚ますと日がだいぶ落ちてきていることに気づく。
真っ暗になってしまわないうちに食糧を探す事にするがクレハは何をすればいいのかと立ち尽くしている。
「おい、何でもいいから食べられそうな果物とか手分けして見つけるって言っただろ」
「それだけどどこにあるんだ?」
「は?木についているに決まってんだろ」
「木?どうすればいい。店で売っているものしか知らないんだ」
「あぁ!?あ、そうか知らないかぁ」
イブキはため息をつくとついて来るように促す。そして一つの木の上を指差し枝に付いている赤い実を取るように言うが、木登りということが理解できずに上を向いたままのクレハに呆れた顔を向ける。
「お前本当に、あぁ上等な育ち方じゃできねぇか。いいそこにいろ」
イブキは素早く木を登っていく。しばらくすると拳程の大きさの果実をいくつか抱えて降りてきた。
食えとばかりに一つをクレハに渡すがみつめてばかりで動こうとしない。
「今度はなんだ」
「これ、殺菌消毒してないだろう?まさかこのまま口に入れるのか!」
「んなもんしなくても食えるっ皮ごと食えるし毒もねぇから安心しろ!」
イブキが果実にかぶりつくとクレハは驚いた顔になる。
「だっだってちゃんと消毒しなきゃ体に良くないっっ」
「あのなそういう事言ってる場合じゃねぇだろ。食べなきゃお前の命は終わるぞ。せっかく決断して早々野垂れ死にたいか?」
納得できないという表情になりつつも死ぬのはさすがに嫌だと思ったのか恐る恐る果実に口を近づけてゆっくりとかぶりつく。口の中に甘さが広がり驚いた表情で果実を見る。
「美味しい」
管理されていない、自然のものとはこんなに美味しいのか、それとも空腹のせいなのかわからないが人生で一番美味しいと感じる。