黄金の瞳と進化した都市4
ひとけのない細い道を通り下水道へ降りて駆けていく。
「確かに見つからないかもしれないけど本当にドームの外向かっているのか?」
「間違ってないよ。僕一度ドームの外に行こうとした事あっていろいろな道を調べたんだ。このルートが一番見つかりにくいってわかったんだ。」
「何で外に行かなかったんだ」
「何もかも管理された世界は気持ち悪いって思うよ。でもそんな欲しいものがなんでもある環境に慣れてしまっているからなくなるのは無理なんだよね。」
イブキの問いにアゲハは淡々と答えた。
(アゲハは色々考えているんだな。私はどうだろう、今まで自分で選択したり考えたりしたりてこなかったな。)
下水道をはしごで上がりマンホールから出るとドームの白い壁が見えた。
問題があるとすればここからだろうか。当然かもしれないが先回りした警備員たちが武器を構えて出入り口に立っている。
「僕があいつらを引き付けるからそのすきに出て」
「引き付けるってどうやって?」
「これだよっ」
アゲハが袋を出した。その中にはカラフルな小さい球やそれよりもやや大きい球が沢山入っている。
「かんしゃく玉に幻惑玉まであるじゃないか。」
「役立ちそうだと思って持ってきたんだよ。僕今までの兄さんは嫌いだけど今日の兄さんは嫌いじゃないよ。じゃあね元気で」
アゲハは足音を立てないように離れていく。そして少し遠い所からかんしゃく玉がいくつも鳴り響く音と人型の物が去っていくのが見えた。近くで見れば煙だとわかってしまうが人の形まで作り出してしまうなんて幻惑玉は今の状況ではありがたいと思う。
叫び声を上げながら警備員たちが追っていく。
「今だ!」
「ああ!」
ドームの入り口をクレハが開け二人は外にむかって走り出す。
実際に見る外の世界は一目見て過酷な砂漠が広がっているとわかりクレハは足がすくみそうになる。
「立ち止まるなっ来い!」
イブキがクレハの腕を掴み止まることなく外へと足をふみだした。
後ろではアゲハの叫び声が聞こえる。振り返ると叫びながら煙玉で視界を遮る姿が見えた。
そしてドームの出入り口が閉じられていくのが見えた。
(アゲハの事だから僕たちに脅されて仕方なかったとか怖かったとかうまく言うだろう。)
もう二度と会う事はないとわかっていてもアゲハなら心配ない気がする。
これではどちらが年上かわからないと心の中で思いながらできるだけ早くドームの近くからはなれなければと動きにくい砂漠の中を急ぐクレハとイブキであった。
〈つづく〉