黄金の瞳と進化した都市3
「アゲハ、もしかしてあの鎖の鍵まで解除出来るのか?」
「あれくらい出来るよ」
鬼に近づこうとしているアゲハを静止させる。
「君を解放するけど私たちを襲わない事を約束してくれないか。」
「恩人を襲うほど落ちぶれちゃいねぇ。そもそも何でお前らは俺を助ける?裏切り行為だろ」
「生きたいって何で?私はそんなに強く思った事ないんだ。」
とたん鬼の青年に呆れた顔を向けられた。
「お前よっぽど退屈な人生送ってるんだな。」
「仕方ないよ。兄さんはずっと父さんの言いなりだからね。」
「ふうん。お前俺と一緒に外の世界に行くか?退屈はしないぜ?」
外の世界、習った通りなら過酷な場所だから不安はある。でも、もし想像した事ないような楽しいことがあるなら。
(私はこのドームの世界に退屈しているのか?)
考えたことがなかった。だけどこの生きようとしている鬼と一緒なら怖くないかもしれないと思えてきた。
「見てみたい、未知の世界」
言葉が自然に出ていた。
「決まりだな。お前はどうする?」
「僕はやめとくよ。逃がしたことばれても何とかするから心配はいらないよ。」
自分と違って器用なアゲハなら本当にどうにでもできそうだと思った。
腕の鎖を外すと鬼を制御するものはなくなった。間近で見る鬼は身にまとう雰囲気は自分たちとは違うと改めて思ったが不思議と怖くはなかった。
「俺はイブキ。お前たちは?」
「私はクレハ、こっちは弟のアゲハだよ。」
問題は研究所をどう出るか。流石にイブキは目立つから正門から出るのは難しいと思われる。
「なぁ抜け道とかねぇか?」
「重要な施設にそんな都合よくないでしょ」
(そういう都合のいいもの、いや、たしか)
「ある。岩で塞いであるけど見たことある。こっちだ。」
誰かに合わないか気にしながら建物を出る。こんなにあっさり行くなんてここのセキュリティは大丈夫なのかと逆に心配になってきた。
建物を出ると急いで敷地内の岩のあるほうに向かう。ここまで順調だなんて絶対におかしいから早く出てしまいたいとクレハは思ってきた。
「ここが出口か。確かに怪しいな」
イブキは両腕を大きく広げて岩を手にする。
「そこまでだ。クレハ、アゲハこっちに来なさい。」
白衣を着ているが銃口を向けている父親が数人の警備員を従えて立っている。
「父さんっやっぱり見張ってたんだ。」
「どうすんだ?」
「私はもう引き返せないっ」
「わかったっっ」
イブキは岩を持ち上げ警備員たちに向かって投げる。
ひるんだ隙に壁に出来た穴をくぐって駆け出す。