黄金の瞳と進化した都市2
ただ見学にきただけでしかないクレハは当然慌ただしい流れには入る事は出来ず早々に出てくる事となった。
(あれが鬼なのか?私とあまり変わらないみたいなのに。)
想像では目が血走り筋肉質で大きいイメージがあったが自分とほぼ変わらない姿に戸惑いを感じずにはいられなかった。
研究所を出るときに耳にした情報によれば明日には鬼は生物研究所に運ばれて色々と調べられるらしい。
(調べられるって事は解剖されたりするのかな)
クレハは鬼の青年の事が何故か気になって仕方なかった。
その夜父親は研究所に泊まると連絡があった。
夕食を終えたクレハは家族にバレないようにそっと家を出た。
研究所の正門が見えてくるとクレハは立ち止まり唾を飲み込む。そして自分は悪い事をしに行く
のではない、ただ鬼を見に行くだけだと言い聞かせる。
「兄さん何面白そうな事してるの?」
振り向くとアゲハがニヤニヤと笑みを浮かべている。
「お前っと、父さんの忘れ物を渡しに行くだけだっっ」
「こんなひとけのない時間に?どうせ今日捕まった鬼を見に行くんでしょう?優等生のくせにいけないんだ~~」
返す言葉がなく黙って弟を睨む。
「僕もついてくよ」
「何で?お前は私のこと嫌いなんだろう?」
「うん嫌い。でもさぁ面白そうな事は嫌いじゃないよ。真面目な兄さんが父さんに逆らうなんて初めてじゃん。」
「私はそういうつもりじゃないよ。」
「よく言うよ。」
もう何を言っても反抗と思われるだけだとため息をつくと歩き出す。
警備員には父親から連絡があり届け物を渡しに来たと伝える。
日頃から顔をみせているおかげか疑われる事なく入る事ができた。クレハたちは見つからないよ
うに気を付けながらも鬼を閉じ込めている部屋へと進む。
鉄格子の付いた頑丈な鉄のドアに両手首を壁に繋がった鎖に繋がれた腰あたりまである青い髪の男がうなだれているのが見えたがクレハ達に気付き黄金の瞳で睨んできた。
「ここから出せ!こんなとこでいいように実験させられてたまるか!俺はまだ生きるんだ!」
(生きたい、とは)
「私たちは君の敵じゃない。」
「あ?敵じゃねぇっていうならここから出してくれるのか?」
凄みを利かせた声が響きクレハはビクリと体を震わせる。だがアゲハは全く怖がっていない様で顔に微笑みすら浮かべて返事をする。
「いいよ。そうだよね兄さん?」
「でもこんな頑丈なものどうやって開けるんだ。」
「僕なら簡単だよ。」
そういった途端アゲハは針金をポケットから取り出すと扉の鍵を開けてしまった。
「お前普段からこんな事しているのか。とんだ悪ガキだな。」
「そのおかげで今役立っているじゃん。」
クレハに呆れた顔を向けられても飄々と返してきた。
鉄のドアの音を立てないようにゆっくりと開ける。もうこうなったら覚悟決めて助けるしかないと思えてきた。