黄金の瞳と進化した都市
〔黄金の瞳と進化した都市〕
20xx年、世界の都市は透明のドームに覆われていた。
ドームの中は安全が保障されている。
この世界は一度壊れた。
度重なる自然災害に人類はなすすべもなく怯える日々を送っていた。
しかし自然の脅威に怯える日々は人類の努力により減ってきた。いつしか自然災害を遮るために巨大なドームが作られ、その中に居住出来る街ができてきた。街は銀色の高いビルが立ち並んでいる。
人類以外の動物は檻に入れられて全て人類の手で管理されている。そのためドームの中で鳥や虫が飛んでいる事はない。植物も管理されている植物園か観葉植物程度でしか存在していない。
災害の火種となり得るものは排除すると決まった結果である。人類が管理できないものはいかなるものでもドームの外に出す。ドームの外の世界がどれだけ過酷であっても何であろうが例外はないと定められたのである。
そしてこの世界の言語は統一されている。
天候も常春という過ごしやすい作りとなっている。そんな世界にクレハは生まれた。
ドームの環境を整える研究所の所長サカノウエの長男として父親の決めた進路を進んでいる。彼は親の決めた事に逆らったことはない。弟のアゲハが両親に反発する姿を目にしたり、同級生が親と喧嘩をしたりという話を耳にすることはあるが自分はそうしようと思うことすらなかった。
(私は長男だし、父さんはみんなの生活を守っているんだから逆らうなんてとんでもない。)
ある日アゲハに何故いうことを聞かないのかと注意をすると嫌悪に満ちた表情でどうして逆らわないのかと聞かれた。
クレハは自分の思っていることを伝えると怒りを爆発させたアゲハに自分の意志はないのかと罵倒される。
「なぜそんなに怒るんだ?父さんの意志は絶対だろう?」
「何それ!おかしいよ!兄さんは人形なの!?生きてるの!?」
「おかしいのはお前だよ。」
「僕は兄さんのこと全っぜん理解できない!一生分かり合えないね!」
「そうだね。お前とは意見が合うことはなさそうだね。」
クレハにとって弟はただ血が繋がっただけの存在である。いがみ合いとはいえ口を利くことすらまれであるため世間でいう『仲のいい兄弟』というものは理解できないのである。
この世界は平和ではあるが人類が恐れを抱いている存在は自然以外にもある。それは《鬼》と呼ばれている存在である。
鬼とはドームの外で生活している人型の生物である。ドームが内側からでしか開けられない仕組みになっていて外に出る事はないため遭遇した人類はほぼいないが、言い伝えによれば人の血をすすり、人肉を食べ力は人類の倍以上あり、頭部に角を生やしている恐ろしい化物と言われている。
そんなものがドームの外にいるならますます父さんの研究は大事だし自分ももっと知識を付けて補佐していくようにならなければと心に誓っているクレハである。
高校生として学校に通っているクレハは学校帰りに時々父親の研究所によることがあり、その日も制服のまま一人で研究所へと行くといつも以上に人が多くいた。その中に防衛省の制服を着た者や白衣を着た生物学者もいる。
父親に尋ねるとドームの近くをうろついていた鬼を捕まえたようだ。人々に囲まれてハッキリとは見えなかったがクレハと同じ位の背格好の青年に見えた。