ゲームヒロインであるフィネの登場
『貴方には落花生がお似合いですわ! 落花生のように下々の者として地面に潜っていなさいな。私は薔薇の令嬢として、婚約者のレオンハルト様と舞踏会に行きますわ。貴方は参加するドレスがありますの? そのような物は持っていないでしょう? おーほっほっほ! そうでしょうね。貴方が頭を下げるなら、私のお古を貸し与えてもいいですわよ』
目を吊り上げた状態で私を見てくる見知らぬ貴族の令嬢は、手に持っていた扇子を開いたり閉じたりしながら苛立たし気にしているのがよく分かる。なんでそんなに怒っているのだろう。私はなにもしていないのに。普通に話をしたら駄目なの? それに貴族のルールなんて知らない! 平民だものドレスなんて持ってるわけないじゃない!
『なんで! なんでそこまで言われないといけないの!?』
『なぜですって? 貴方が私の婚約者であるレオンハルト様に色目を使っているからですわ。わざわざそのような説明をしないと理解も出来ませんの? これだから平民は。それと貴方は勘違いしていますわ』
なぜか見知っている同士のように会話をしている私だけど、目の前の令嬢には全く心当たりがなかった。平民の私がなぜ上級貴族の彼女と対等に話をしているのだろう?
上級貴族? なぜ私は彼女が上級貴族だと知っているの?
『聞いてますの!? これだから平民の娘と話をするのは嫌なのですわ! 人の話を聞く気もない』『そうですわ! 高貴なるユーファネート様が貴方の為の時間を割いているのですよ。しっかりと謙虚に聞くのが当然ですわ!』『ちょっと殿下と仲が良いからと勘違いしているのではありませんか?』
私が戸惑っている間にも、目の前の令嬢達が喋っている。あれ突然、2人増えた気がする。なんでこの2人も私の事を責めているの?
『最後にこれだけは言っておきます。これ以上、殿下に近付くのはお止めなさい。貴方にとって良くない事が起こりますわよ。では失礼』
扇子を閉じて見下した目のまま、颯爽と去って行く令嬢を私はなにも言えずに眺めるしかなった。拳は音が聞こえてきそうな程に握りしめられている。そして気付けば音を立てそうなほど歯を噛みしめていた。なぜか涙がこみ上げてくる。ただ、私にはなにも反論が出来なかった。たたずんでいる自分に気付いた私は思わず――
◇□◇□◇□
「ふざけるんんじゃないわよ! 絶対に貴方なんかには負けないんだから! ……。え? ……ここどこ?」
フィネは叫びながら布団を跳ね上げていた。そして勢いよく起き上がると周りを見渡す。いつも自分が寝ている安布団に、机の上には勉強道具が置かれているのが見えた。小さいながらも自分の居室である。先ほどの生々しい光景を思い出してフィネは身体を震わせた。
「なんだったの? 夢にしては、あまりにも明確すぎるじゃない」
「フィネ。そろそろ起きなさいー」
「はーい」
母親の声が下の階から聞こえてくる。フィネは窓を開けて光と新鮮な空気を取り込むと、大きく深呼吸をした。先ほどのは単なる夢だ。あまりにも鮮明な夢だったが、夢の中の自分は随分と大きかった。それに周りの景色は学校のように見えたが、自分が通っているオンボロな学校とは違い、お金持ちが通うような立派な建物であった。
「あんな高そうな学校に行けるわけないよね。それにしても……」
自分を目の敵にしていた貴族の令嬢は誰だったのだろう。当然ながら、平民の自分は貴族の令嬢に会った事はなく、また取り巻きのように一緒に居た令嬢達も誰一人として知らなかった。
「確か『ユーファネート様』って呼ばれていたよね?」
そう呟いたフィネは今後、関わり合う事はないと思いながらも、絶対にユーファネートと呼ばれた少女には近付かないでおこうと心から誓うのだった。気分を変えようと窓を閉めたフィネは、再び呼ばれた母親に返事をして朝食を食べるために食堂に向かった。
当然ながら彼女は知らない。ユーファネートと呼ばれた令嬢はライネワルト侯爵家の末娘であり、自分と同い年で、5年後には同じ学校に入学する事になると。そして彼女が高そうな学校と言っていた学院に、特待生として入学する事も。そして、夢で見たユーファネート・ライネルトと、実際に会うユーファネート・ライネルトは全くの別人である事も。
【新しい情報が追加されました】
フィネ
「君☆(きみほし)」シリーズの主人公、つまり貴方の事です。精霊に愛され、学院に特待生として入学します。そして、そこから素敵な物語が始めるでしょう。ただし、全てが順風満帆とは限りません。ライバルも登場するでしょう。時には苦難が待ち受けている事でしょう。しかし、貴方はそれらを乗り越えるて成長をしていきます。つらくても諦めないで下さい。立ち塞がるライバルが多いですが、それ以上に貴方には素敵な仲間、いえ、もっと素敵な関係になるかもしれない男性達が数多く居るのですから。




