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私、どのゲームの悪役令嬢なの?  作者: うっちー(羽智 遊紀)
王子様との出会い

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その日を迎える為に希は頑張る

 ユーファネートが変わったと家族が感じてから3週間が経っていた。高熱で寝込んでから、今までのようなわがままはなりを潜めており、それどころか()()()()()()ように精力的な活動をしていた。これまで嫌がっていたダンスや礼儀作法も取り憑かれたように完璧に仕上がるまで繰り返し、ライナルト王国の歴史や経済に、他国の情勢までも勉強を始めた。また、特に魔法については力の入れようは尋常ではなく、父親のアルベリヒにお願いして新たな家庭教師を雇うほどであった。


 この世界では15才になると所有する属性が教会に行く事で明確になるのが普通であった。また本人も属性が分かるまでは、属性が違う勉強をしても役に立つ事が少ない為、力を入れて勉強する者もいなかった。しかし希は、ゲーム内でのユーファネートの属性を完全に把握しており、また魔力量も攻略サイトである程度は分かっている為に自重はしなかった。


「ふう。今日はここまでにしましょうか。セバスチャンお茶を」


「はい! 用意出来ております。お疲れかと思いチョコレートも用意しております」


「ふふ。気が利くわね。さすがは私のセバスチャンだわ」


「有り難うございます!」


 希は開いていた魔方陣を閉じると軽く目をつぶった。先ほどまで展開していたのは水の魔方陣であり、ユーファネートの得意属性の一つであった。どうやら、この世界でも魔力を枯渇寸前まで使うのが魔力量をアップする近道であると言われていた。


「かなりお疲れ様ですが無理はなさらないでください。今のお年から魔法の勉強をされるなんて、なにかお考えがあるのでしょうか? ……も、申し訳ございません。私ごときが気にするのは失礼だと思うのですがユーファネート様のお身体が心配で」


「ふふっ。ありががとうセバスチャン。でも大丈夫よ。私なりに考えがあるから。15才の時を楽しみにしておきなさい」


 本当に心配している事が分かるセバスチャンの表情に、希は軽く微笑みながら問題ないと伝える。希としては最大限にゲームの知識を使った能力向上を目指しており、得意属性のレベルアップに魔力量の増加を出来る限り行っていた。そのお陰で急激に魔力量は増えており、希の満足がいく結果となっていた。


「心配してくれているのね。本当にセバスチャンは優しいわね」


「い、いえ。私はユーファネート様の忠実なる執事で御座いますので」


 顔を赤らめているセバスチャンとの会話も終わり、希は気分転換にと厨房に向かう。そこでは来週のレオンハルトに提供する為の料理の献立が考えられている最中であった。そんな戦場となっている中、希は特に気にせずに軽やかに入っていく。突然の来訪者に料理長が怒鳴ろうとしたが、ユーファネートだと分かると、満面の笑みに浮かべて出迎えてくれた。


「レオンハルト殿下へおもてなしする献立は出来た?」


「ご指示のあったように薔薇と落花生を中心とした料理を考えておりますよ。それにしてもお嬢様はこのような調理方法をどこで? 私は落花生は炒めるくらいしか思いつきませんでしたな」


「本で得た知識よ。まあ、これから色々と献立は思いつくからよろしくね」


「もちろんです。楽しみにしております。それと丁度良かった。こちらが来週に来られる殿下への献立です」


 調理台の上に並べられている料理の数々を見て、希は満足した表情になる。それほど完成度が高い物が出来上がっていた。薔薇を散りばめたサラダから始まり、ライナルト侯爵領で特産とされている肉や魚がふんだんに使われていた。また香辛料は控えめにされており、素材の味を引き立てるような調理になっていた。


 そして各料理に落花生が使われており、前菜のサラダには茹で落花生が、また各料理には砕かれた落花生が振りかけられ、ピーナッツバターや砂糖やバターで絡めた物なども並んでいた。これらの料理はすでに侯爵家の面々には提供されており、大絶賛されていた。


「家族がここまで喜ぶなら殿下にお出ししても大丈夫そうね」


「ええ。奥様も領都の高級レストランを出店されると気合いを入れておられますよ」


「早い! お母様の行動力に驚きね」


 希は母親のマルグレートが事業を始めようとしていると聞いて驚いていた。だが、マルグレートが即座に行動に移すほど希が考えたレシピは斬新であり、侯爵家の名を高める為に必要だと認められるほどであった。


◇□◇□◇□


 最終的には希が行った中古品販売は大盛況で終わった。その販売額と金額を決める為に使われたのがオークション形式だと聞いた父親のアルベリヒは、慌てて王都に連絡をしていた。オークションは許可制であり、無許可は処罰対象になるからであった。その為、娘が行ったのはチャリティー事業であると王家には報告されており、実際に売り上げの一部は孤児院に寄付されていた。そしてアルベリヒは王都に連絡した際に、不要品の回収事業を始めるように子飼いの貴族に命じていた。


「流石はお父様と言ったら良いのかしら? まあ確かにあの金額は私も驚愕だったけれども。まさか商人達が競って金額をつり上げるなんて思わないじゃない。ゲームでは――」


 希は「君☆(きみほし)」シリーズの「君と常に儲ける☆ フトコロを温かくするのは誰だ!?」を思い出していた。その中で主人公は自宅の中にある不要品を売るイベントがあったのだ。その中で友好度が一番高いキャラが実家にある高級な品を「使わないから」とプレゼントしてくれるのを思い出し、それを実行したのである。


「あのゲームでは単に売れるだけだったけどね。そしてレオンハルト様の時は剣を持ってきて『古くから倉庫にあった剣だから使わないだろう』だったわね。『どう考えても国宝だろ!』とネットでは総ツッコミだったわね」


 ゲームの内容を思い出していた希は自分の記憶力に感動していた。そのお陰でユーファネートとして事業をする為の金額が用意出来た。その事業は様々であり、今も商人達と詳細を詰めている最中である。そして父親の了承の元、領地の一部を落花生お試し特区として整備中である。


「ついに来週にはレオンハルト様がやってくるわ。この1ヶ月での付け焼き刃での特訓が実を結んでくれると良いのだけど」


 希はどのシリーズでもレオンハルトを最初に攻略するほどに推しており、早く会いたくて仕方がなかった。その為の準備であり、気に入ってもらう為に頑張らないとと小さく気合いを入れるのだった。

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