Ep.5 鬼ごっこPart3
「さぁ!俺様のカリスマに酔いしれな!」
あの能力を使うとキャラまで変わるのだろうか…まぁ気の問題なのだろう
僕は《タイプ:補助 あらゆるものを調整する能力》をコピーした。慌ててコピーした能力だったから何に使うかはいまいち分かっていない。
「おいイチ何コピーしたんだ?お前」
「え?この能力だけど」
僕はトウヤにコピーした能力が書かれた端末を見せた
「…調整か…そうだな…空気とか薄くできるんじゃないか?調整できる範囲がどれくらいかによるけどなそれができるなら俺が【鬼】の周り囲ってやるよ囮になるやつはいるからな」
「…なるほど?」
それだけじゃない静電気さえあればそれを電撃に変えることもできるかもしれないしタイプが補助ということは他の人の能力の力を底上げできるかも…
幅の利きそうな能力だな…結構いい能力かもしれない
「へい!君たち!早く俺様の手助けをしな!」
オウはそう言いながら僕らの方を向いた
だがその後ろにはナイフを持った【鬼】が迫っていた
「後ろ危ねぇぞ!」
言った時には既に遅かったオウに刃が振りかざされるしかしナイフは違う方向へ吹き飛んでいった。
「バカね余所見なんかしてるんじゃないわよただでさえあんたの能力で【鬼】がそっち向いてんのに」
「サンキュー助かったぜ」
「さ、そろそろまた向かってくるわよ」
「その点は問題ない。」
「えっトウヤなんでよ?」
「俺が封じ込めた…イチ出番だぞ」
「わかった」
「【鬼】の周りの空気量を調整。ゼロにする。」
僕が能力を使い空気を薄くすると【鬼】はもがき始めた。
「よし!成功だ!」
しかし【鬼】が暴れた影響でトウヤの作りだした障壁が壊れてしまった
「くっそ…やっぱりまだ薄いか…」
「もう1回できるか?障壁の硬さも調節すればいける」
「いいや…ダメだ…1度他動的に壊れると次のを作り直すのに時間がかかる」
「そんな…じゃあ正面からやるしかないってこと?」
「あるいは俺のが復活するまで耐えるかだな」
「バカ言わないでよあんな速いのからどうやって逃げて耐えるのよ」
「俺様の王の力も時間制限がある…そんなにずっと引いてはいられないぞ」
「じゃあこうしよう」
トウヤが3人に責められとうとうヤケになったのかとんでもない作戦を口にした
「…大丈夫?」
「俺様の心配か?フン問題ない。俺様の力をもってすればそれくらい容易いさ」
「まぁトウヤの防御力がなくなったらそうするしかないわよね…」
「俺様の能力はあと5分くらいで切れる!それまでにやってくれよ?」
「あんたこそちゃんと引き付けときなさいよ」
「おぉ…怖い怖い…よし始めようか俺様のショーを!」
一拍呼吸を置いてオウは【鬼】の方へと向かった
オウが【鬼】に近づくと【鬼】は何ら躊躇いもなくオウへと攻撃をし始めた。
オウはすぐさま後ろへと引きトウヤの作戦を実行に移す。
「さぁ!俺様はこっちだぞ!」
王の力に惹かれた【鬼】はオウの方へと駆け寄って行った。
トウヤの作戦の第1段階は終わった
あとは第2段階そして最終段階へと行けば【鬼】は倒すことが出来る
「イチ!やるよ!」
「おう任せろ」
レイナが飛び込もうとしたタイミングでレイナの能力やレイナ自身の運動能力を調整し最大限まではね上げた。バッタのように跳んだレイナは【鬼】の方へと真っ直ぐ向かっていった
「能力行使」
「腕を剣へと擬態」
一部を剣の形へと擬態させレイナは振り上げた腕を【鬼】に向かって振り下ろした
_______
振り下ろした腕は見事に【鬼】へと命中し【鬼】は一瞬よろめく
今までどんなに攻撃を当ててもビクともしなかったあの【鬼】がたった1発の攻撃でよろめき怯んだ
この好機を逃さまいとレイナはもう一度【鬼】へと突撃するトウヤの策の第2段階ももう一度あの攻撃を当てられることが出来れば完全遂行となる。
レイナは先ほどと同じように【鬼】の近くへ跳び腕を振り下ろした…これで残るは最終段階だと思ったその時レイナは天高く舞い上がった【鬼】とは反対の方向へ
「レイナ!?」
僕は急いでレイナの身体を柔らかくするよう調整したその後地面に衝突したレイナは何事も無かったかのように立ち上がった。僕はレイナの方へと駆け寄る
「何が起きたの?」
「…【鬼】が突然動き出した」
…なぜだ?僕の目からでもあの【鬼】は動くことすらままならないように見えたというのに
「イチ!レイナ!」
トウヤが向こうから大声で僕らの名前を呼んだ
「作戦変更だ!今すぐその場から離れて俺のとこに来い!」
僕にはよくわからなかったが何か悪いことが起こる…そんな気がして僕らはトウヤの指示に従いトウヤのいる方へと走り出す__しかし、それに勘づいた【鬼】は僕らの方へと向かってくる。
さっきまで互角だった速さの【鬼】は僕らよりずっと速い速度で僕らに向かってくる…僕はそれで確信したあの【鬼】は確実に誰かの手によって強化されている
でも一体誰が…そう考えた瞬間【鬼】が真後ろに迫る気配がした__が、それと同時に声が聞こえてきた
「おい!【鬼】!カリスマであるこの俺様のことを無視するつもりか?」
オウだ
「まぁ【鬼】如きじゃあ俺様のことは殺れないかなぁ?」
オウが挑発した途端【鬼】はオウの方を向き動き出す
「ふんっ!そう来ねえとなぁ!」
オウは僕らと反対の方へ走り出そうとした___
僕はつい声に出してしまった
「止まった…?」
【鬼】はその場から動かなくなった…いや動いてはいる…瞬間…突如として【鬼】は動き出した向かうのは僕らでもオウでもトウヤでもない誰もいない"はず"の場所へと走っていった僕らは当然訳が分からなかった
しかし、オウだけは様子が違った
「やめろ!そっちに行くんじゃねぇ!」
「おい!こっち向けよ!俺の王の力だぞ!?」
それでも【鬼】は止まろうとしない。寧ろ速度を上げていく殺しに行くかのように
僕らは何が何だか未だに状況が掴めずにいたが分かることはオウの能力が切れたことだけだ
それがわかった僕は全力で【鬼】を止めようとした
___それでももう遅かった___
【鬼】は向かった方にぶつかった
「アイ!逃げろ!!」
オウはまた叫んだアイという名前を呼びながら
「アイって、、オウの彼女の美少女で有名な子じゃ」
レイナは真っ青な顔でそう言った
同時に【鬼】がむくりと立ち上がった
___片手に少女を抱えながら
その子はぐったりとして動く様子はない
「アイ…?嘘だろ…?」
オウは膝から崩れ落ちた。
オウの彼女であることは事実なようだ
そして無情にもあの声が校内に響いた
『ゲームしゅーりょー』
『このゲームでの脱落者は1年3組 カナメ アイちゃん能力は"味方と指定したものを回復、蘇生させる"能力でした』
『いや〜かなり有用な能力を落としちゃったね〜』
「…おい」
『んー?あれあれ?オウくんどうしたの?膝なんかついちゃってー似合わないよ?』
「なんで…なんでアイが死ななきゃなんねぇんだよ!」
『…はぁ…ねえオウくん君は気づかなかったの?【鬼】が君らと戦ってる間に強くなってること』
そう【鬼】は明らかにゲーム開始時と比べ強くなっていた…この言い草だともしかして…
『実はあれさ僕が能力で強化してたんだよねー』
やはりGM側の仕組んだことだったのか…
『それにしても残念だったね〜もうちょっとオウくんの能力が長く続いてれば勝てそうだったのにいやー残念だ』
嘘だ。
このゲームは恐らく確実に1人を殺るためにできている必ず誰か1人が死ぬまで__言い換えれば"鬼は絶対に殺せない"ようにしていたんだろう
そうでもなければあんな簡単に【鬼】を殺してもゲームクリアなんて言わないはずだ
『さ、それじゃあ生き残った20人のみんな!今日のゲームはこれでおしまい!明日も楽しいゲームが待ってるよ!』
そう言い残したGMは放送を切った
その場には静寂だけが残り僕らを囲んだ
重い…ただ重い空気が僕ら3人にのしかかる
その静寂を切り裂くように後ろからトウヤが僕らに話しかける
「…今は放っておこう…これは俺のミスでもある」
「トウヤはなんも悪くねぇよ…僕がすぐに気づいて【鬼】を止められなかったのが悪いんだ」
「バカねぇ…今回ばかりは誰も悪くないでしょ」
「この"鬼ごっこ"ってゲームは必ずプレイヤーを1人殺すようにできてるんだからあの犠牲は仕方ないわよ」
レイナも気づいていたんだ
このゲームは…"鬼ごっこ"は絶対にクリアできないことを…
僕は行き場のないどこから湧いているのかわからない怒りが込み上げてきた
____でもこのゲームはまだ序の口…そう思い知ることになるのは突然としてやってきたのだ
School game第1ゲーム《鬼ごっこ》
脱落者 1年3組 カナメ アイ
生存者 残り20人
残りゲーム ?個