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「友情・努力・勝利」の一般化

 面白い小説を書くために、いや、クソ小説を書かないための必須要項を紹介していく。これを押さえておけば、誰でもそこそこ面白い小説が書けるから、取り入れていけ。前置きはいらないよな。早速本題だ。

 まず、「友情・努力・勝利」って聞いたことあるよな。かの雑誌ジャンプの基本的な物語の構造だ。これについて話したい。

 とはいえ、孤独な主人公が場当たり的に行動して痛い目見るって話でも面白くはできるよな。だからもっと一般化して、応用が利くようにした。すなわち「ドラマ・ロマン・カタルシス」だ。

 それぞれ対応する言葉はそこに含まれる。友情はドラマの一面、努力はロマンの一面、勝利はカタルシスの一面だ。これに基づいてこそ、物語は物語の体をなす。

 例を挙げようか。よくある勇者と魔王で当てはめよう。

「勇者が復讐を誓い・聖剣を入手して・魔王を倒す」。どうだ? 想像ついたか? 

 「勇者が復讐を誓い」はドラマだ。キャラクター(作中存在)同士の様々な関係性によって、主人公は動機を得たり、敵味方が確定したりする。最も、キャラクターは人に限らないぞ。宿命的アイテムや力を手に入れたとか、血筋でもいい。とにかく、意思的な力学に根差すものとして、キャラクターを取り巻くしがらみだな。

 ドラマがないってことは「聖剣を入手して・魔王を倒す」 話になる。偶然スーパーパワーを手に入れて、特に意味もなくぶっ放して勝つって話だ。言うまでもなくクソだよな。何をするのかってことと同じくらい、何のためにするのかってのも大事なんだ。それがなきゃ、文字通りお話にならないのさ。だが残念ながらこれを疎かにしてるなろう小説は多いな。

 ドラマを作ることで与太話フィクションに”意味”を持たせろ。それがあってこそ”物語”というものだ。難しいことじゃない。考えてるか考えなしかってだけの違いだ。

 さて、お次は「ロマン」だ。おいおい「ドラマ」は分かったけど「ロマン」って何だよ? 物の雅? 言いたいことは分かる。勿論そうじゃない。それも大事だけどな。

 正直他に適切な表現が思い付かなかった。だが説明を聞けば、納得できるはずだ。

 ここで言う「ロマン」は、結果に至るための具体的な行動力学のことだ。先の例えの「聖剣を入手して」って部分だな。魔王の倒し方にも色々あるだろ。弱点になるキーアイテムとか仲間を集めるとか、神様にすがるとかな。ジャンプではこれを「努力」としている。当人が努力によって成長して、困難を克服していく様を描く訳だ。

 察しが良ければもう理解できたはずだ。「ドラマ」が”何のためにするのか”を描くことなら、「ロマン」とは”実際に何をするのか”だ。

 根本的に小説っていうのは、何よりもまず風景描写によって成り立つ。そもそもこれを理解してない奴が多いのが残念でならないが。絵画で例えれば分かりやすい。絵の具なしに絵が描けるか? 何を描いたか以前に、絵の具がキャンバスに乗ってなきゃまず絵ですらない訳だ。風景描写はまさに絵の具だ。どの絵の具をどう使うかは自由だが、絵の具を使うことからは逃れられない。こればかりは例外はない。

 この風景描写によって、作者は作中の人物の行動を表現する。つまり俺が何を言いたいかっていうと、究極的に小説とは”誰が何した”を描写することの連続だってことだ。

 そこで「ロマン」の話だな。”実際に何をするのか”だ。”何がどうなるのか”と言い換えてもいい。これはまさしく小説の基本。描写そのものだ。

 「ドラマ」が役者を決め、目的を決め、物語に意味を与える。だがそれは形あるものではない。「ドラマ」がもたらした意味に実体を伴わせるのが「ロマン」だ。具体的に誰が何したか、その話の内容、運びのことだ。文章化って言うと語弊があるからこう言うしかない。小説化って言えばいいのかな。

 ドミノの並べ方がドラマで、実際に崩れる様がロマンだ。これなら分かりやすいか? どっちが欠けてもドミノ倒しは成立しない。

 「ロマン」を「聖剣を入手して」の部分だと言ったな。これがなきゃ、「勇者は復讐を誓い・魔王を倒す」になる。決意だけしたらそれでオッケー、後は結果が着いてくるってお話にならないよな? 残念ながらこれもなろうの典型的悪例だ。動機は分かった。じゃあ結果に至るまでの紆余曲折を楽しもうと身構えたら、何のこともなく叶ってしまう。え? 本題はどこ? ここ? そして始まる満足パート。ああ、作者が自分の願望を書きたかっただけね、となる。それは書き物であって、読み物じゃない。お前は物書きじゃなくマスかきだったのかと。間違いなくクソ小説だよな。

 「ロマン」、つまりこれは誰が何する話だっていうのを明確に読者にイメージさせて、それを描写で遂行することで、物語はアクティビティとして成立する。作者が作品世界とシナリオを投射するんじゃない。読者が自分の脳に作品世界とシナリオを映写するんだ。忘れるな。お前の頭の中に作品はない。あるのはアイデアだけだ。作品は読者の頭の中にある。小説を読むことで読者の脳が再生する情景と情動こそがお前の作品だ。だから常に行動力学に気を付けろ。「平たく言ったらこの物語はどういう話なのか」って視点を常に持て。読者はどうせ平たくしか見てないし、メモ取ってる訳じゃないんだ。

 細かい話を区切りも着けず延々と垂れ流すのは、分かりやすい行動力学に真っ向から反する書き方だ。戦記ものには特に多い。人間の脳でシミュレーションできないから感情移入できない。どっからどこまでがひとつの起承転結なんだって、まるっきり判別不能な上に複数の案件が同時平行してそれぞれの起承転結がごちゃごちゃってパターン多いぞ。俺は物語のダイジェスト化って呼んでるが、そうなったら最早物語ではないからな。雑音のオーケストラが音楽じゃないように。

 次へ進もう。さあさ、お待ちかね。「カタルシス」だ! 言うまでもないな。「快感」のことだ。

 「友情・努力・勝利」の「勝利」に当たる。勝つのは皆好きだよな。だが勝つばかりが快感じゃない。物語を読むことで満たされる達成感、それこそが本質だ。話のオチ、つまり落とし所。動機があって、実行して、結果が出る。シナリオ上の結果の良し悪しに関わらず、読者の心に何かが残る。それが価値あるものでなきゃ、読む意味がないからな。

 重要なのは読者にとって価値があることだ。最近よくある劣等生成り上がりザマア系、分かるよな? ザマアってする瞬間のために物語があるはずだ。そう、物語はその目的へ向かって進行している。分かりやすい構図だ。

 ただちょっと言っておかなきゃならないことがある。これは閑話になるが、最近よく見るザマア系は「ロマン」が伴っていないことが多い。スーパーパワーは最初から備わっていて、単にそれが検知されなかったのが表出したから持て囃されるってタイプの話だ。

 見返したいって動機はある。だが具体的な見返すまでのストーリーがない。力や名誉を勝ち取る過程は描写されない。なぜなら最初からスーパーパワーは持ってるから。間抜けな話だ。真抜けと言うべきか? ストーリーなくして何を読者に読ませたいんだ? いや、満足パート書きたいだけか……帰って、どうぞ。そうなるよな、読者としては。

 話を戻そう。小説には長期的な全体のストーリーと、短期的なイベントとしてのストーリーとあると思うが、各次元においても、ひとつの”お話”としてカタルシスがあるべきだ。長話をだらだら続けててもダレるよな。”息切れ”しないためにも、小話の次元で起承転結ほしいところだ。

 「勇者が復讐を誓い・聖剣を入手して・魔王を倒す」。シンプルだが壮大な物語だ。全体的な流れは分かるが、魔王を倒すまでカタルシスがないのか? いつまでも待ってられないよな。だから小分けにしてそれぞれにオチを付ける。

 「勇者が全てを失って・下手人を見つけて・復讐を誓う」、「魔王に聖剣が有効と知り・試練を乗り越え・聖剣を手にする」、「決戦の舞台が整い・聖なる力を駆使して・魔王を倒す」と、簡単に分けて見たがどうだ? 全三章仕立てとすれば丁度良いんじゃないか? 過程とゴールが分かりやすいし、それぞれの小話がカタルシスを備えたひとつの物語として成立しそうだよな。つまりそういうことだよ、物語を作るっていうのは。

 「カタルシス」をマネジメントしろ。この話のゴールと快感はどこにある? そうやって常に”どう読まれるか”を考えろ。難しいことじゃない。意識するか、考えなしかだ。これをするとエタりにくくもなるかもな。ゴールが自分で見えるし、話が面白いかつまらないか一目瞭然だからな。

 ありふれていることを恐れるな。どうせ世界はパクりに満ちている。重要なのは、面白さの合理性だ。合理的なら必ず面白い。お前の面白いと思う作品を同じように分析してみろ。「ドラマ・ロマン・カタルシス」に当てはめてみれば、必ず明確に合致しているはずだ。

 「誰が何のために・いつどこでどうやって・何をするのか」、5W1Hだ。簡単なことさ。

 願わくば、世界がもっと面白い創作で占めるように。

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