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第14話 闇夜に映ゆる炎(姉という敵)

秋、国内では地方都市を中心に大火に見舞われている、そんな話をカズとお晴は耳にする。都中にもうわさが広がり警戒態勢に当たる中、カズが住む長屋の近くで火の手が上がった。


 都を揺るがす、不気味な鬼火事件の幕開けだった。

 時間は少し前にさかのぼる。ここは洛東にある小さな農村。朝の陽ざしが村に差し込み、農民たちは旗作業に出掛ける。

 村の一軒家で眠っている女にも陽の光が当たり、瞼を刺激した。


 んん……。


 女は目を開けた。まだ目が覚めたばかりでぼんやりするけど、今自分がいる部屋が見慣れない場所だということはすぐに気づいた。

 周囲には畳の部屋。布団の上に彼女はいた。部屋は少し散らかっており、誰かがついさっきまでいたようだ。


 おれは今まで何を……。


 とりあえず、周囲を確認しようと起き上がろうとした。


 いたっ……。


 頭がうずき、思わずしゃがみ込んでしまう。頭を触ると、何か柔らかい布のようなものの感触を得た。頭の後ろまで腕を回してみる。包帯が巻かれているようだ。

 どうやらけがをした後、誰かに助けられたようだ。

 でも、なんでおれはこんなところにいるんだ……?


 そういえば昨日、その前日の放火現場で拾った手紙を持って――


 その時、彼女の頭にこれまで眠っていた記憶がよみがえり、徐々に鮮明な絵となって繋がっていく。突如彼女の前に現れた忍び装束の、自分がよく知っている女。そして、無数の部下とみられる忍びたち。


 そうだ、おれは姉貴たちを止めるためにここに来たんだ。

 しかし、仲間の忍びに不意を突かれてしまった。さすが一流の忍びと言われる姉貴から特訓を受けた忍びたちだ。とても一人では太刀打ちできない。

 だからといって、ここで諦めるわけにはいかなかった。今すぐ姉貴たちを止めなければ。この都は、この国は――。


 女は改めて立ち上がった。しかし、頭の痛みがそれを妨害する。

 しかし、これぐらいの痛みはどうってことない。おれは忍びなんだ。


 浴衣のままじゃ動けないので、適当に着物を探す。昨日は慌てて店を飛び出してきたので、忍び装束ではなく、普通の着物で来てしまった。

 幸い、寝ていた布団の枕元に来ていた緑の着物が置いてあった。彼女はすぐに着替え、その家を飛び出した。


 女は北東にある神社を目指した。忍び装束じゃないから動きにくいけど、今は着替えるなんて悠長なことなんてしていられない。

 北東方向には戌亥神社がある。そこから姉貴たちの気配がした。

 神社の森を気配を殺しながら奥に進んでいく。


 神社では掃除屋の二人と神主がいる。

 あいつら、やっぱりここまで嗅ぎつけてきたのか。あれだけ関わるなといったのに……。しかし、もう関わらせないわけにはいかない。あいつらも曲がりなりにも事件を追ってたんだ。

 そして彼らの先にいる忍び装束の長い黒髪の女と、法衣をまとった男。

 間違いない、一人は自分の姉だ。いったい、これから何をしようとしているんだ――。


 しばらくすると、姉と法衣姿の男が飛び上がった。そして鎮守の森の奥に消えていった。

 間違いなく、これから二人は何か行動を起こすはずだ。何か、先回りして手を打てないのか……。

 女もすぐにその場を立ち去った。


 (つづく)



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©ヒロ法師・いろは日誌2018

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