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地球防衛少女  作者: まさひろ
博多防衛少女
35/46

博多決戦(改定)

 罠の匂いがする、ちらほらと言う話ではない、そこら中、いやこの街そのものが罠の塊だ。無論俺を殺しきる程の強力な香りではない。だが、溢れんばかりの殺気を感じる健気な罠だ。


 八正とやらの効果範囲に入ったのか、景色が一変する。考えればこの八正も世界を変える力だ、これを使えば世界を滅ぼすことが出来るかも知れんが、残念ながら現実世界には影響を与えることは無いと言う。まぁそんなに簡単に近道が見つかってしまっては興がそがれる。それに、そんな事は学者連中の仕事だ。


 隠形が解かれる。無人の博多駅駅ビルの屋上に鬼が現れる。

 と、同時に駅ビルが火柱を上げ大爆発し崩壊した。





「行け!行け!行け!行け!行け!行け!行け!!

 決して足を止めるな!止めたら死ぬぞ!狙いを定めさせるな!」


 生身の俺だったならとてもじゃないが目で追えない速さで巨躯が愉快そうに飛び回る。幾つかの銃弾、ミサイルは直撃するも全く効いた覚えは見えない。こちらの全力攻撃をBGM代わりになまった体をほぐしている感じだ。

 火柱が上がり、瓦礫が吹き飛び、弾幕がビートを刻む。そしてそれらを纏めてレーザービームの様な矢が薙ぎ払っていく。

 空間ごと削り取る威力のその矢が過ぎ去った後に、ごっそりと抉り取られた大気が一気に引き寄せられ大衝撃が巻き起こる。大気は砕け、地は引き裂かれ、ビルは粉砕される。博多の街はミキサーに掛けられ、天地開闢の地獄絵図の様な光景だ。

 そんな中でもこちらの狂人も元気いっぱいに跳ね回る。くそったれの戦闘民族め。落ちれば即死の綱渡りで、なんでそんなにはしゃげるんだ!


 戦闘に参加しているのは、牛若と弁慶さんに佐藤兄弟。屋島さんと吉野さんは非戦闘員なので不参加、伊勢さんは今回の様な激しい戦では足手纏いになるとの自己申告があり、罠を担当してもらって八正空間には入っていない。そう、たった今ボッカンボッカン火柱を上げているのは現実世界で仕掛けられた罠だ。大規模テロなんて話で収まり切れないこいつ等は、後でキッチリ回収するし、特別な信号を掛けないと起動しないと言う言葉を頼りに設置を許可したものだ。

 そして俺の役目は隊の五感となり、対象を補足し続けること。爆発轟音なんでもござれの戦場では、弁慶さんのセンサーでも遅れが出てしまうと言う訳で、俺が全身全霊で敵を捕らえ続けて、牛若達は攻撃に専念する方針だ。


 だがやはり相手は無敵の兵。視覚聴覚など殆ど意味をなさないこの混乱の中、極めて的確に俺達を狙ってくる。こっちは、世界と同化とか言う反則行為を行って、なおギリギリだと言うのに。あっちは余裕しゃくしゃくで狙ってくる。勿論相手の矢の威力もある。衝撃波をまき散らしながら迫る矢は、一射で家一軒を丸のみする極太レーザーの様なもの。矢に当れば即死、衝撃波に巻き込まれればミンチになる事間違いなしだ。おまけにこちらの攻撃は全く効果が見られないとなれば、何だこのチート野郎と嘆くだけでは物足りない。あぁ全く物足りない。なのでペテンを掛けることにした。


 



「はっ?いやー牛若さん?意味が分からないんですが」

「何故です主殿?伯父上の気性を考えればこれが最上の策だと思いますが」


 牛若が、為朝さんの交渉案として出してきたのは、戦いを避けるために戦いをすると言う本末転倒な案だった。だが、その案に疑問を感じるているのは何故か俺一人。継信さんは闘志を漲らせているし、忠信さんは諦めていると言った有様。これだけでも胃が痛いのに、牛若はさらにとんでもない発言を放り込んできた。


「と、言う訳で、そう言った方針と相成りましたので。主殿は伯父上の攻略法を考えて下さい、出来ればこちらの犠牲は無しでお願いします」

「ふ、ざ、け、ん、なーーーー!

 お前らが必至こいて試行錯誤しても見つからない方法を、戦いの素人がどう思いつけって言うんだ!!」

「はっはっは。大丈夫です、某は兄上の次に主殿を信頼しております、もししくじっても皆で仲良く三途の川を渡るだけ、某に流れを読む力が足りなかっただけでございます」

「ちょっ、ちょっとこの馬鹿に何とか言って!」


 なにかがガン決まって、滅茶苦茶爽やかな顔をしている牛若ではらちが明かないと、助けを求めに周囲を見渡しても、継信さんと屋島さんは大笑いしているし、忠信さんと吉野さんは苦笑いを浮かべているし、弁慶さんはいつも通りの無表情なままだった。


「大丈夫です主殿。某何の根拠もなしにこんな事を言い出したのではございません。孫子曰く『敵を知り己を知れば百戦危うからず』、最強のものには最弱をぶつける事が勝ちへの道しるべなのです」

「おっおう?」

「先ほど、主殿自ら仰ったとおり、この中では主殿が最も弱く、虚弱で、実戦経験もない、新兵未満のクソ雑魚ナメクジです。ですので、あえて主殿の策を世界最強の伯父上にぶつけるのです!」

「クソ雑魚……っておい、それは置いといて、いや後でキッチリ回収するけど。

その孫子の奴って3回勝負の内、1つを捨てることで全体的には勝ちを取るみたいな話じゃなかったか?」

「ほほう、主殿にすれば博識でございますね。さては昨日人生最大の猛勉強をしましたね」

「してねーよ!ってかどういうことだ!」

「ははは、まぁ孫子云々は置いとくとしても、実際某たちの発想では、伯父上を出し抜くのは少々難しい面がございまして。と言うのも彼方の世界に生きる者たちにとって伯父上の存在とはそれ程のものなのですよ。

 なので、ここは伯父上に対し新しい視点で臨める主殿の策は黄金にも勝る策となる可能性は極めて高いと言う博打でございます」

「結局博打じゃねーか!おい!ちょっといいのかこれで!」


 と、周囲を見渡せど、景色は変わらず。その後どうにかこうにか粘った結果、俺は屋島さんに胃薬を処方され大人しく自室で策を練る事となった。





 博多駅前通りから国体道路を左へ、多少の蛇行を挟みつつも西へ西へと進路を取る。勿論全力疾走の大逃げだ、逃げる最中に仕掛けた罠によってドミノ倒しのようにビルが爆破し火柱となり、立体駐車場から車が打ち出され、その間隙をついて容赦ない射撃を浴びせる。


 だが、無意味。為朝は明らかに罠が待ち受けていることを知りつつも、それを楽しむように全てを吹き飛ばす矢を放ちながら追走する。


 しかし、彼にも疑問もある。それは牛若達が彼を見失わない事だ、この炎と瓦礫が織りなす嵐の中、高速で移動し続ける彼を的確に狙撃し続けることは、彼の世界の技術力を持っても困難な事なのだ。

 上空に羽虫の様に監視ドローンが広がっている、要所要所にこの世界の一般に使われているものとは異なるレベルの監視カメラが設置されている、牛若には高性能アンドロイドが何体か配備されている。だが、彼の直感はそれを否定していた。それらも一因ではあろうが、全てではない、いやむしろ枝葉でしかないと。


(そう言えば、()()()()何とかいう現地人が八正と同化したとか言っていたな)


 中洲の雑居ビル群を抜けながら彼はそんな事を思い出していた。


(ここの空間もそうだ。今まで数度しか八正空間とやらに入った事は無いが、今までのそれとは何か毛色が違っている)


 春吉橋を通って那珂川を渡ろうとすると、川底に設置されていたミサイルランチャーが一斉に火を噴く。


(もし、それが事実ならば。そいつは俺とは別種の化け物と言う事になる)


 弓を一薙ぎ、迫り来る爆炎や爆風を、たったそれだけで相殺する。

 一行は天神を通り過ぎさらに西へ進む、その先には広大な緑地と池を携えた大濠公園が待っている。

 それは、前回牛若が一矢食らわされそうになった場所である。


大まかなプロットは決まているものの、

基本ライブ感で書いているために、伏線と言うか複線を張っている感じになりました

それもこれも、ついさっき為朝さんの倒し方をひらめいちゃったんでしょうがありません。

……頭悪いですね!くそ雑魚ナメクジなうp主ですが今後ともよろしくお願いいたします。



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