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地球防衛少女  作者: まさひろ
博多防衛少女
33/46

切り札(改定)

「あの方は特別だ、血筋はもとより天秤を持っておる」

「真、天才とくべつだ、あの若さで腕は皆伝に達するらしい」

「そうだ、我々とは違う存在とくべつだ、まさに砂が水を吸うが如くあらゆる技を収めていく」

「その通り、戦に関わる事なら何でもだ。正に戦の申しとくべつな存在だ」

「あのお人は、常人とは違う(とくべつ)だ、次々と講師を打ち負かしていくと言う」

「あぁ、我々には理解できない存在とくべつだ。あの速さについていけるものなど何処にいると言うのだ」

「あれは異常とくべつだ、我が子と遊ばせろだと?冗談はよして下さい」

「あれは化けとくべつだ、あの目で見られるだけで肝が縮む」

「あれは怪物とくべつだ、人の理など通じんよ」


「………………そう、彼女はトクベツだ」





「うむ、アレを使うか。弁慶、荷電粒子砲の用意は出来るか」

「可能でございます」


 今日も今日とてシミュレーション、ステージは博多駅、また同じ所で戦うとは限らないが俺にとってはそっちの方がリアルティがある、まぁ戦力にならない俺は、唯の見物人としての参加なのだが。

 そして何度目かのそれが終わった後牛若はそんな事を切り出した。

 荷電粒子砲。荷電粒子を、加速器で光速近くまでぶん回して、それを弾丸代わりにする兵器だったか。SF作品ではおなじみの最終兵器の一つだが、こちらの世界ではまだまだ未来の兵器、たしか加速器の小型化や莫大な電力がネックだったとか。


「うーん。まぁものは試しだが、為朝の旦那あいてか」


 だが、継信さんの反応は今一のご様子。派手好き高威力好きのこの人なら喜んで使いそうなものだが。


「まぁそりゃ否定しねぇけどよ」


 継信さんは俺の軽口に笑いを飛ばしながらこう続けた。


「旦那相手にアレを使うのには、利点と欠点がある。

 利点は流石の旦那でもアレを食らえばひとたまりもない……と思う、いや流石に、多分。

 元々大規模要塞とかそんな感じの、バカでかくて分厚くて頑丈な建物とかをブッ潰す為の兵器だからな。あれを食らえば人間なんか影も残らねぇ。

 欠点としては、繊細で小回りが利かないって言う点だ。威力は申し分ないが、砲撃までに多少の時間と手間がかかる。まぁ元々対城兵器みたいなもんだからな、本来の用途に使うなら問題はないんだが、相手が旦那の場合その隙が問題となる」

「そんなにか?戦艦の主砲で人間を狙うようなもんだろ、効果範囲だって口径サイズと同じと言う訳じゃあるまいし」

「いやー駄目だろうな。旦那の天性の勘ならまず間違いなく嗅ぎ当てる。って言うか以前、業を煮やした敵さんが使おうとしようとしたことがあってな。

 勿論正面切って狙った訳じゃねぇ、遥か離れた山の中腹から、徹底的な偽装した状態からの砲撃だったが、あっさりとそれに気づいた旦那は、それが射撃される前に一矢ぶち込んだ」

「……結果は?」

「大爆発。砲が暴発して山の高さが半分になったよ」

「……わーぉ」


 そんな兵器を運用する方が悪いのか、そんな兵器をぶち抜いてしまうあの人が規格外すぎるのか。もうなんだか、訳が分からん。


「まー、確かに旦那は規格外だよな。俺らの世界では素戔嗚の生まれ変わりだとか、八岐大蛇が化けて出たとかよく言われたもんだ」

「例えとして出てくるのが人間じゃないな」

「ははっ、大将も見てんだろ、それ程の人だって事だ。けど大蛇ほど優しくは無いよな、あの人は酔いつぶれて隙を晒すなんて可愛げはないからな」

「そんな事で、可愛げないとか言われてもな」

「あーけど、あの人が大蛇の生まれ変わりだったら、倒したら叢雲が貰えちまうな」

「そんなもん、何処にしまってるんだよ」

「いやー、あの丈夫さは骨に仕舞っていても全く驚かねぇけどな」


 等と、和気あいあいと軽口をたたき合っているうちに、次のシミュレーションの準備が終わる。忠信さんが来てくれたおかげで、怪しい薬で無理矢理働かされ続ける継信さんの姿が消え、俺の精神衛生上非常によろしくなった。


「デカイな」


 件の荷電粒子砲を見た感想は先ずそれだった。砲身を除いてもハイエース程度のサイズがあるだろう。どう見ても個人携帯装備でなく、自走砲とかの類だ。


「あの、弁慶さん?」

「私は携帯できますので問題はございませんであります」


 あぁ、100の携帯武装とかの設定は生きてたんだ。多分条例とかで決まってるんだろう、グレーゾーンどころかぶっちぎりでアウトの様な感じがするが。



 荷電粒子砲の運用について弁慶さんに聞いてみたが、やはり扱いが難しい兵器と言った感じだ。

 まず、展開速度。通常なら1秒かからず展開できるが、こいつの場合30秒は掛かってしまうとのこと。

 次に攻撃までの時間。起動し射撃可能となるまで15分はかかるとのこと、あの鬼に見つかりませんようにと祈るには15分は長すぎる。

 最後に射撃間隔。次弾射撃まで5分はかかるとのこと、これこそ無理ゲーだ。一発限りと思っていた方がいいだろう。

 全く、相手があの人でなければ正しく必殺の兵器と言えるのだが、人外レベルの戦闘力を持つあの人だと心もとなくなってしまう。それどころか、迎撃され自爆死する未来が濃厚に見えてしまう。



「……ふむ」


 荷電粒子砲運用下での幾度目かのシミュレーションが終了した。成績は大幅に向上、成功率は無限大に上昇した。と言うか今まで成功したことが無かったのが初成功したと言うだけなのだが。


「どうした牛若?何か不満でもあるのか?」


 散々と山の様な敗北の末ようやく勝ち取った勝利を後に、なぜか腑に落ちない顔をしている牛若に声を掛けると。


「やはりこれは仮想試合、某の目算ではおそらくは通用しないでしょう」


 牛若はあっさりとそう切って捨てた。


「それではいかがいたしましょう、為朝様の能力を向上させて再計算いたしますでございますか?」

「いや、その必要はない、と言うか無駄だ。叔父上の怖さはその様に計算で現れない所にある。これ以上計算上の叔父上と試合するのは害悪となるだろう」

「了解でございます」


 そう言い、あっさりと弁慶さんは引き下がる。

 今更、今更だ。VRの中とは言え散々血反吐を吐いて爆死して惨死し続けたことをあっさりと『無意味だった』と切り捨てやがった。

 ちらりと、佐藤兄弟の方を向くと二人ともしょうがなしと言った顔をしている。


「おい、牛若。だったらどうするんだ?」

「んー、まぁ砲は折角用意したので囮にでも使いますか。一射無駄にできますし。後はまぁ出たとこ勝負ですな」


 はははと笑いやがるが、やはりこいつはどっかぶっ壊れているのだろう。あの鬼と無策で戦う?正気の沙汰ではない。

 だが、俺も戦闘面でのアドバイスなど何も浮かばない。正直あの目を思い出すだけでまだ、背中が震えてきそうだ。けど、もう一つ疑問がある、それはこのところずっと抱えていた疑問だ。


「……あと、もう一つ。お前は戦闘訓練ばかりやっているが、為朝さんを説得するのは諦めたのか?交渉について考えてはいないのか?」

「そっちこそ、正しく出たとこ勝負ですよ。あの叔父上相手に杓子定規な官僚答弁なぞ用意していたら、逆効果です。ありったけの思いを込めて正々堂々命乞いするまでです」

「……、そうか。まぁお前がちゃんと考えているのならそれでいい。俺は陰ながら応援することしか出来ないが、相談ならいつでも――」

「はっ?陰ながら?何言ってるんですか主殿?勿論同席して頂くに決まっています。交渉決裂した際、主殿が傍に居なければ八正が使えないではないですか。主殿は某を死なすおつもりですか?」

「えっ?嘘、何それ怖い。俺嫌だよあの人怖いもん」

「叔父上の一射を受けておいてその軽口をたてる人はおそらく主殿が史上初めてでしょう。これは某もますます安心できると言うものです」

「一射違う!確かにぶち込まれたけど、アレは俺であって俺じゃない!生身で受けた骨も残ってねぇよ!」

「ははは。某と主殿は一心同体、主殿を残して先に逝くことなぞ某がゆるしません」

「ふざけんな、最近でもここ一番の笑顔しやがって!そのセリフは厄介ごとに巻き込む奴が言うセリフじゃねぇよ!」


 ぎゃあぎゃあと、取っ組み合いが始まる。とは言っても真一の攻撃を牛若が一方的に捌くのみだが、それにしても最初の頃比べれば、牛若の捌く手が2本に増えている当り、多少はこなれている感が見えてくる。

 もっとも、指1本で捌いていた頃を知るのは当の2人だけなのだが。



「兄上、あの2人は何時もあのちょうしなのですか?」

「はっはー、あんなもんだ。中々やるぜあの大将は、戦はからっきしだが肝だけは太ぇ。並の人間なら仮の姿とは言え、旦那の射を受けてもう一度立ち上がろうなどと考えもしねぇだろうな」


 じゃれあう2人を見守りつつ、継信はそう言い暖かく笑った。


せっかく登場いただいた忠信さんの影が薄い。

やはり多人数を登場させるのは難しいなと。


アポイベントは乗り遅れちゃって今一はまれてないです。

初日二日目と忙しかったものでして。

ジーク君を育て上げれたら満足ということで、討伐戦にはほぼ不参加です。

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