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魔王の世界征服  作者: NY
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プロローグ

その世界には強い光がなく、薄暗い。その世界は「アンフェール」と呼ばれている。



 薄暗い世界だが、そこには生命が存在している。その生命は魔族と称されている。



 魔族は多くの種族がおり、長い間種族間闘争を繰り広げ続けていた。



 しかし、最近になって種族間闘争を根絶したものが現れた。その名を”ヘルシャフト・イムペリウム”といった。



 悪魔族の突然変異種であるこの男は、古今東西あらゆる魔族の中でも最強の力を持っていた。彼は魔族であることに誇りを持ち、種族間闘争が恒常化しているこの世界の現状を憂えていた。そこでヘルシャフトは生まれ持った超常の力を持ってあらゆる勢力を制圧し、傘下に加え、まとめ上げていった。



 そして彼はこの世界で唯一の王となった。王となったヘルシャフトは魔族の繁栄のために様々な方策を施していった。軍を強くし、法を整備し、資源の供給を安定化するために活動した。



 しかし問題があった。この世界には資源が少なかったのだ。食料、材木、土地など、多くのものが足りなかった。今はまだ足りているが、将来的に足りなくなることは明白だった。



 そこでヘルシャフトは配下の軍団に魔界を捜索させた。資源を見つけ出し、優れた魔族を発掘し、繁栄のための様々なものをしらみつぶしに探させた。



 ことが起きたのは、それから一年後のことだった。












 「別の世界を発見した?」

 「そうです、陛下。こことは異なる世界です。少し調べさせたところ、この世界とは大きく異なる世界であることが分かっています。その世界には魔族がおらず、人種と呼ばれる生物が大半を占めているとか」



 この世界・・・アンフェールにある巨大な城。その中で最も大きな部屋、玉座の間にて、二人の魔族が話をしている。一人はアンフェールの王であるヘルシャフト。もう一人はアンフェールの研究者にして魔法支援軍の将軍でもある、マズバハ・ヘノシディオという男である。マズバハは体が小さく、背中には黒い羽根が生えている。それはヘルフェアリー族と呼ばれている者たちの特徴だ。



 周囲には近衛の兵隊が待機しており、不意の襲撃が来ないか警戒していた。



 「そして何よりその世界には、アンフェールとは比較にならないほどの豊富な資源が存在していることが、部下からの報告によってわかっております。特に土が上質であるため植物を育てるのが容易そうであるとのことです。また、その世界特有の生物として人種というのがいるのですが、これが非常に弱い存在であることが分かっております」

 「それは素晴らしいな。アンフェールに足りないものが全てそろっているということか」

 「その通りです。これらを手にすれば、魔族は資源不足に困ることはなくなるでしょう」

 「では、もうしばらくその異世界がどのような所か探らせろ。特に問題が内容であれば、その世界を征服し、魔族の繁栄のために利用させてもらうとしよう」

 「かしこまりました、陛下」



 話が終わり、マズバハは一礼したのち玉座の間を後にする。



 異世界の存在とそこへの生き方を知ったのは二か月前のことだった。魔法に関する研究を行っていたのだが、いくつか行っていた研究のうちの一つ、転移魔法に関する研究をしていた時のこと。ある研究者が疲労から魔法式を間違えて転移魔法を発動させたときにその現象は起こった。



 突如巨大な門のようなものが発生し、くぐってみると明らかにアンフェールではない別の場所に出てきたのだ。アンフェールではそうそうみられるものではない緑一面の世界は研究者たちに衝撃を与えた。この資源があればアンフェールを豊かにできるだろうと歓喜したものだ。



 しかし、其れとは別に研究者たちに衝撃を与えたことがある。それは、その異世界には魔族に相当するものが存在しないということだった。その世界では人種と呼ばれる、吸血鬼やサキュバスによく似た、しかしそれらと比べて非常に弱い生物が地上を折檻していたのだ。研究者である自分たちは魔族軍の中では弱いほうなのだが、そんな自分たちから見ても弱かった。



 そんな弱い者達が別々に国を作り互いに相争っているのは理解できなかったが、どうせ魔族の者になるのだから関係のないことだった。全ては魔族の繁栄のためだ。



 城の一角にある研究室に戻ってきたマズバハは、部屋の中央に広がる門を確認する。門は消えていないようだ。研究者は多くが出払っているようで、数人が何らかの作業をしているだけだった。



 自分の机の上に報告書があるのを見たマズバハがそれを取りに行こうとすると、門から部下が出てきた。偵察から戻ったようだ。



 「戻ったか」

 「はい、今帰還しました。向こう側の門の周辺を調べていましたが、やはり様々な資源がありますね。情勢は特に変わったことはありませんでした」

 「そうか。もうしばらくしたらもう一度別の場所に門を発生させて資源の徴収を開始することになる。そうなるともっと広範囲に偵察をすることになるから備えておくように」

 「了解しました」



 それだけ言ったマズバハは報告書に目を通しながら異世界のことを考える。どのように資源を使うべきか。恒久的に安定した資源を得られるように調整したり、アンフェールで増やせるかどうかを確認する必要がある。人種たちがどのような技術を持っているのか。あの世界をよく知っているのはあの世界の住民だ。その技術を得ることは必須といえる。



 何はともあれこれで資源問題は一息つけるはずだ。そんなことを考えながらマズバハは仕事をつづけた。







 ヘルシャフト配下の主要人物に招集がかけられたのは二か月後のことだった。

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