救出作戦
それは突然現れた。なんの脈略もなく、音もなく。
「逃げろお!お前らぁ!!」
到着と同時に叫ぶ榎田は一目散にロープで縛られているクラスメートの元へ走る。
突然怒号が鳴り響き、誰1人動けずに声の先を見つめる。それは魔術師も例外ではなかった。
先程逃げ出し森に走っていったやつがここにいる。理由を考えはじめたがすぐにやめた。
これはチャンス、今度は絶対に逃がさない...
魔術師はすぐに魔法の発動体制に入る。先ほど魔法の発動を目撃している千石はその攻撃を読み、一瞬で姿を消した。
どこへ行った?発動しかけた魔法をキャンセルしあたりを見回す。
見間違いだったのか?そう思った瞬間、視界が歪む。少し遅れて頭に激痛が走る。
次に理解する、真上から殴られた事を。
次に疑問、どうやって真上に移動した?
次に怒りが込み上げてくることで思考が完全に停止した。
「このやろォォ!何しやがったぁぁ!」
とても女性とは思えない声と形相で叫び出す。千石は怯むことなく次の行動に移る。
千石の奇襲が奇跡的に成功し稼いだ時間で全員のロープを解きおわった榎田はすぐに逃げるように叫ぶ!
「今すぐ逃げろ!!全員バラバラに逃げるんだ!!」
それを聞いて1人、また1人、別々の方向に走り出していく。
蜘蛛の子を散らすように逃げていく者達を目の当たりにし怒りを抑えきれなくなった魔術師はヤケになったかのように連続で魔法を放ってくる。
「殺す、殺す!」
血走った目で土の手を怒りにまかせて動かす魔術師にもはや戦略性など皆無であった。
単調な攻撃を造作もなく躱す千石は全員逃げ切ったのを確認し榎田の位置までテレポートし、榎田の腕を掴みそのまま音沙汰をなく消える。
「あいつら絶対に殺してやるぅ!!」
自分の手の皮を噛みちぎり、魔術師は虚空に向かって叫んでいた。
その叫び声はワープしたはずの榎田たちにも聞こえていた。
すぐ隣の森の木の影にもたれかかりながら異常なまでの汗を流しながら肩で息をする千石の姿があった。
「おまえ、大丈夫か?」
この木の向こうにいる魔術師をみながら声を押し殺す。
返答は返ってこないがこちらに向かって手をかざす。
大丈夫だというサインなのだと解釈しつつも異常であることは間違いないため、敵の様子を見つつ静かに千石を担ぎその場を去っていく。




