動けるもの
目の前で人が殺された。初めて目にする光景に32人は動けずにいる!しかし、1人千石治郎だけは初めてではなかったのだ。1と2じゃない、1か0かの差が他の32人との差を生んだのだ!
33人の頭上に血が降り注ぐ。
瞬間、千石は走り出していた。誰よりも早くこの場から去る。
なるべく恐怖を意識しないように務め、走り方をなるべくいつも通りに全力で走り出した。
「逃がすわけねーだろ!」
聞き慣れたような台詞を吐きつつそのことに気付かない32人の頭上通り、巨大な土の手が伸びてゆく。
そのままの勢いで地面に衝突する土の手を間一髪前転で交わした千石は動揺しながらも冷静さを失わない。
「俺は生きるんだ!!」
過去の光景がフラッシュバックのように過ぎていき、そのまま顔を叩き、走り始める!
「外した…!」もう一度杖を振りかざし、今度は千石の足元から三本の土の手が生えてくる。
今度は避けられない。そう思った瞬間土の手がぐにゃぐにゃに捻じ曲げられ千石の足元ギリギリを貫く。ついた尻餅をすぐに立ち上げまた全力疾走で走り出す。
魔術師はそのまま森の中に消えていく背中を見つめながら、追いかけようとはしなかった
「あいつ…。」魔術師はイライラしたように呟き。
「てめぇら!次に逃げた奴は殺す!!絶対逃げんじゃねーぞ!!」
別人のような声と表情で脅す。この脅しは呆然としている32人には十分以上の効果を発揮した。
今度こそ、動くものはいなくなった。




