異世界で救世主を目指せ!
黄昏というものを情景で表現するのに、秒針の音と夕陽色に全てを支配された教室以上の喩えがあるだろうか。
入学して半年、毎日のように行われる小テストに順位付け、下位10名は放課後に再テスト。さすがに心身ともにズタボロだ。
他のみんなもきっとそうだろう。
どうやら俺はこのクラスでは落ちこぼれみたいで、今日もこうして再テストを受けながら窓の外を眺めている。
「明日はちゃんと勉強してこいよ〜。」
と10人分の再テスト用紙をビラビラさせながら適当に生徒の誰に誰に話しかけるわけでもなく声を張る。
「毎日してるっつーの。」
と目を細めて担任を睨みつけながら鞄に筆箱をつめる。
「本当によろしいのですね?」
会議室に座る6人のうちの1人が眼鏡で光を反射させた。
「ええ、構いませんよ。やっと時間操作の問題がクリアできたんですからね。こちらとしても大分待ちくたびれましたよ」
「それでは明日にでも。担任の先生、よろしいですね」
「はい、では明日」
チャイムとともに担任が教室に入ってくる。いつもの光景だ。なんてつまらないんだ。とため息をつきかけてやめる。
ん?今日は小テストのペーパーを持っていない。ないのか。
「えーおはようございます。今からみなさんは異世界に飛ばされますが、そこで救世主を目指してもらいます。」
笑いが一切起こらないのは疑問のほうが大きいから。入学して半年だが担任が冗談を言っているのは見たことがない。酔っ払って訳のわからないことを言い出したのか?実はラノベオタク?様々な可能性を頭の中で巡らす。
担任は教室のざわめきも御構い無しに表情1つ変えずに続ける。
「救世主になれるのは1人だけです。もしなれる者が現れればその者には卒業証書が授与されます。」
あ、頭どうかしちゃったのかもしれない。本気でそう思ったのはこれが初めてである。何故ならこの担任は冗談は100%言わないと確信しているから、事実かそうでないならそれくらいしか理由などないから。
教室にはどよめきが上がった。その中クラスでも指折りの成績を誇る久保田が立ち上がる。
「卒業って、日本の高校に飛び級なんてシステムないでしょう」
真面目か。と思わずツッコミを入れたくなる。問題はそこじゃねぇだろ。
「ありません。
でもこの件は、特例で政府が認めた特権的措置だよ。君たちはラッキーなんだよ」
担任は微笑みながら久保田を諭すように言った。
何のための嘘だ。さっきからこいつは何を言っているんだ、嘘をつく合理的理由などあるはずもなく文字通りおれの頭の中は混乱状態に陥った。
ガタっと隣で席を立つ音。
「危険はないんですか?」
こいつは秋間。
今までおれが聞いてわからなかった問題はない。そしていつも冷静沈着で何考えてるかわかんないやつ。
「その世界では、もしかしたら死ぬことがあるかもしれない。」
また一段とどよめきが上がる。
担任は少し溜めてこう続ける。
「でももし死んでも現実の世界に戻ってくる。それだけだ。」
「拒否もできるが、拒否する人ー」
みなとても手を挙げれるような状況ではなく、クラスに誰も挙手がいないと一瞥する
「いないみたいだね。それじゃあ早速始めましょう。
お願いします!」
その瞬間クラスは強い光に包まれた。




