歪な三角形
ナギとジン。反発し合う2人を繋ぐ転校生秋音。牙向く刃達をまとめる事が出来るのだろうか。剣のように鋭い眼差しをしている二人と拳の如く固い意志を持つ少女の歪な三角形。そしてその周りの生徒達が繰り広げる田舎の日常コメディ!
「…で、なんで俺らも呼ばれるんだ?」
「知るか馬鹿。くたばれ。」
「んだとゴルァ!」
「だから二人とも喧嘩はダメですって!」
俺とジン、そして転入生は次の日の朝、佐藤先生に呼び出されたのだ。
「…ああ、お前ら。朝っぱらからすまないな。」
「そう思うなら呼ぶなよ…ましてこいつと朝から顔合わせなきゃいけないのが何よりも不服なんですが?」
「おいこらジンてめぇこっちのセリフだ!」
「だから二人とも!」
その様子を見ていた佐藤先生は深い溜息をついた。
「お前ら朝っぱらから喧嘩ばかりだなおい…ま、とりあえず要件を二つ言う。一つは武藤、このプリントを小中校に持って行ってくれ。何故かあっちのが混ざってたんだ。なに、学園探検のついでみたいなもんだ。」
そう言って佐藤先生は俺とジンにプリントの束を手渡した。
「「…は?」」
「それがもう一つの要件だ。刀袮谷、白雲、二人は生徒副長として武藤のサポートに回れ。」
「ちょっと待て、なんで俺らが!」
そう叫んだのはジンだった。正直自分も同じことを言うつもりだったので先に言いやがった。
「武藤は転入生だからいろいろ大変だろ。そこで、生徒長に立候補していた2人をサポートに付ける。そういう事で、二人とも頼んだぞ。因みに拒否したら来年も二年生させるつもりだからな。」
「「くたばれクソジジィ!!」」
そんなこんなで半ば強制的に生徒副長にさせられた俺とジンは、転入生の為に渋々お伴する気にもならなかった。
「ち、ちょっと二人とも!そんなとこで座りこまないで!行きますよ!?」
「別に行きたくないわけじゃないけど…ナギも一緒となると吐き気を催すから嫌だ。ナギが死ねばいいんだけどさぁ…」
「ふざけんなこっちのセリフだ死ねやクソが!」
「んだとおい!」
「だからやめて下さいってば!」
道端でダルそうにサボるナギと反対側でサボるジン。それに挟まれた秋音は困り果てていた。
「…何してんだお前ら。こんな道のど真ん中で…」
ふと声のした方を向くと、エプロン姿の女性が立っていた。昨年度卒業した元生徒長、佐久間茉耶だ。現在は実家の銭湯で番台をやっている。
「…!?ま、茉耶姉…」
「あー姉さん、聞いてくださいよ!ナギの奴がさっきからずっと文句しか言わなくて…」
「あ?お前らまたくだらねぇ喧嘩してんのか?全く…ん?」
茉耶は秋音の顔をマジマジと見ると、ナギとジンを交互に見て言った。
「…おいお前ら。こいつはどっちのツレだ?」
「ち、違います!そんなんじゃないんです!!」
真っ赤な顔をしながらそう訂正する秋音の様子を見て、茉耶は思いっきり噴き出した。
「ぶっw冗談だよ。そいつらにツレが出来るわけないさ。…新人さんかな?あたしは佐久間茉耶ってんだ。よろしく。」
「あ、はい。今年からこの町に引っ越して来た武藤秋音です。生徒長をさせて頂いてます!よろしくお願いしますっ!!」
深々と頭を下げる秋音。流石の茉耶も困り果て、ジンとナギを呼び寄せた。
(…おい、どういうことだ?お前ら何をやらかしたんだよ…)
(…ジンが俺に生徒長を譲らなくて…)
(ふざけんな逆だろ!お前が譲ら無かったんだろ?)
(どっちでもいいだろ…んで?見兼ねた佳恵のヤツがあの新入りに任せ、他の奴らも嬉々として賛同した…ってとこか?全く…お前ら変わらねぇな…)
そう茉耶姉が言うと、今度は転入生と肩を組み何かを囁き始めた。
(…お前あの二人をまとめる役になったんだってな。分からない事があったら会いにおいで。あいつらの扱いなら慣れてるから。)
(は、はい…)
茉耶は再びジンとナギと向かい合い、鼻で笑ってから手を振りつつ歩いて行った。
「…なあジン、もしかして…」
「…ああ、姉さんと手を組んだなあの転入生…」
茉耶と別れた三人はそれから数分で小中一貫校の校舎の前に到着した。
「じゃ、俺帰るわ。来た道戻れば帰れるし。」
「えっ…あの!困りますよ!刀袮谷君も呼び止めてくださいよ!」
「…俺にあいつを止める気があるように見えるか?」
「あ…あの……はい…」
怖気づいた転入生を尻目にジンは校門の外へ、俺は校舎の職員室へと向かった。
お疲れ様です、朱音です。
気付いたら約4カ月ぶりの更新だそうで…ストックはあるんですけどねぇ、他が忙しくて…すんません。
今回は繋ぎ目、そんなに話は進みません。次回はナギかジンの昔話が入ってたはずです。
とりあえず次は早めの更新を目指します。
お粗末様でした。