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はるかかなたのエクソダス  作者: 風庭悠
第1章:見えざる鎖~護衛体技(ガード・アーツ)品評会編
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第6話 エリカが出番不足にぷんぷん&ライバル登場な件

 1日目の最後は準々決勝である。これも1on1のオフェンス/ディフェンスで、結果は副将戦を待たずに俺たちの勝利が決まった。


「俺を温存してくれてありがとう。」

エリカのような筋肉バカと違い、俺には楽をできたら素直にありがたい、と思える良識があるのだ。ただ正確を期すならば、「温存」ではなく「用無し」ではあるが。


「とりあえず明日の準備をしなくちゃ。」

 

 俺は翌日の準決勝のことで頭がいっぱいであった。その種目は、観客からは最も人気の高い強襲アサルトである。銃同士のアマレク人スマートなゲームと違い、銃がない奴隷同士のアサルトはどうしても泥臭くなりがちである。そしてこれは前もってステージが決まっていて、前日に自分が守る拠点、相手を陥れる罠、相手を阻止するバリケードを準備できるのである。

 

 つまり知力のゲームでもあるわけだ。ただ。それだけ世間からの批判も多い。もともとはテロリズムを防ぐための学習だったが、最近は逆にテロリストの手口を教えているのではないか、というものだ。もっとも、これは俺たちにとってはただのゲームである。なぜならリアリティ0だからである。大体犯罪者はまず武器を調達するところから始めるからだ。それができなきゃ犯罪などに手を染めたりはしない。

 このゲームの醍醐味は通称「クラッカー」と呼ばれる模擬指向性地雷クレイモアが一つだけ使える、という点だ、こいつの中身は火薬と紙だけで、火薬が炸裂しても紙吹雪だけしか出てこないのためまったく殺傷能力はない。ただこれに遭うと死亡判定が下されるのだ。こいつをどこにしかけ、いつ使うか、まさにカードゲームのジョーカーなのである。

 

 俺はこの準備が大好きで、手伝いに駆り出される男子連中によれば、「怪しい魔法の薬で満たされた大鍋をかき混ぜながらぐつぐつと煮込む魔女」のような表情で取り組んでいるんだそうだ。まあ、表現は巧いと思うが、お前らその本物とやらを見たことがあるのかよ。


[星歴992年10月22日]

 

準決勝第二試合。種目、強襲アサルト

 俺たちは後攻であった。これはコイントスで決まる。さあ、みんな、俺の作ったトラップをみてくだしゃあ。げへへへへへ。いかんいかん。キャラがぶれそうである。


 今回のステージは2階建ての民家である。お互い銃が使えないのがわかっているので、大抵ひとまとまりの行動となりがちである。まあ、そのマンネリ化を防ぐための模擬地雷クラッカーなんだけどね。侵入口もあらかじめ決められている。審判・観客用のモニターのカメラワークのためだと思うが。まあ、お遊びなんで。

 大きい大会だとTV中継もあるし、解説者がドヤ顔で解説することもある。まあ、アジト(ディフェンス/犯人側本拠地)のリビングからぶっこんでもいいのだが、人質をあっさり殺される可能性が大だから、まずやらない。このゲームはポイント制で、制限時間30分の間に1人味方が戦闘不能に陥れば一人当たり-10P。人質が死ねば-50P。奪還すれば+100。とまあこんなカンジである。

 

 ここは解説者風に実況してみるか。「」内は解説者な。

 さあ、オフェンスの聖ネクベト女学院が侵入しました。女学院とは名ばかりのいかつい男たちのチームです。

「まあ、そこに通うお嬢様のボディガードの戦いですからね。」

さあ、どう攻める。まずは2階には敵がいませんでした。

「これは戦いがコンパクトになりがちな銃なし同士の戦いのパターンですね。本当はステージを有効活用して欲しいものですな」


 まずポイントは2階の階段です。おっと階段にはラインが幾重にも張りめぐらされてあります。明らかにディフェンス側の時間稼ぎであります。本物か、ワナか。注意が必要ですね。

「ここは丁寧にいってほしいですね。まだ時間はありますから。」


 1本1本慎重にラインを切断していきます。このどこかに本物のクラッカーのライン(導火線)が含まれているかもしれません。

「まあ疑似地雷クラッカーに偽物も本物もありませんがね。おっとこれは口が滑りました。」


 どうやらすべてダミーだったようです。ルールによりクラッカーのリモコン起動は禁止であります。ラインのみの起動。それが駆け引きの醍醐味であります。偵察が一階廊下の無人を確認。手招きで降下を指示します。見張りを一人残しての慎重な降下。

「大丈夫、まだまだ時間はありますよ。」

 

さあ、最後の一人が降下を始め、おーっと、ここで天井からバテストの選手が最後の一人の背後に飛び降りた。おっと、あっという間にとらえられます。ここでシリコンダガー、木製のナイフをシリコンで被膜したダミーナイフです。あっさり首筋の電極をつぶします。おっとここで死亡ランプ点灯。ネクベトの次鋒の選手ですね。いや残念でした。

「ここはラザロ君が一枚上手でしたね。」

ラザロ選手、あっさりと2階に退避。ネクベトも深追いはしません。2階のドアを封鎖、そのままロープでベランダからアジトへ降下、帰投します。鮮やかな動きです。


 おっとここでネクベトの動きが慎重になります。カメラ切り替わりますか?あ、どうやらクラッカーを発見した模様であります。紙袋に入って偽装されている模様です。見えずらいですね。

「さすが試合巧者のバテストチームですね。日差しの入る部分の陰になるところに設置してあります。明度差による偽装でしょう。」

 

 なるほど。さて、クラッカーにつながるラインは3本です。慎重に越えていきます。この廊下を過ぎればアジトのリビング。さらにクライアント(被奪還者)の監禁場所であるキッチンです。


「アジトに戦力を集中して迎え撃つようですね。」

全員がライン越えます。さあ、もう一度戦術の確認、一気に突入するようです。

ああ、ここで大きな物音、土煙が立ちます。おとおここでクラッカーの音がしましたね。どういうことでしょうか?ここでバテストチームが取り付けた床下の映像が入ってきました。なんと床下にクラッカーがうつっております。これは今の映像ではなく、先ほどの映像のようです。続きをみてみましょう。

床を踏み抜いてネクベトの選手が落ち、ああ、ここでクラッカーがさく裂です。審判も映像を確認しております。

「どうやら落とし穴ですね。落とし穴を掘ってというか床板をぬいて床下に敵を落とし、落ちた瞬間にクラッカーがさく裂したようです。ひどいブービートラップですね。」

 

さっきの紙袋のクラッカーが偽物だったということですか?

「そうです。偽装に見せかけたクラッカーを偽装したんですね。お互いにクラッカーは一つしかないことを知っていますからその心理を逆手に取られましたね。。ネクベトはクラッカーをやり過ごしたと思って安心したんでしょう。油断しましたね。」

 

 審判の旗が上がります。3選手の死亡が宣告されました。まさに痛恨の極み。ああ、いま生き残った選手がギブアップ(棄権)を宣言しました。まずはチームバテスト先勝です。後半バテストが人質を奪還できれば決勝進出となります。一方ネクベトは苦しくなりました。守り切った上にバテストを殲滅しなければなりません。

「そうですね、ただ、焦ると余計にバテストの思う壺ですから、そこはどっしりと構えて守備に徹してほしいですね。」


 俺たちの完全勝利だった。

「あたしの出番がなーいー。」

エリカが駄々をこねる。

「よしよし、後半はしっかり働いてもらうからね。」

俺は半分呆れながらエリカを慰める。


「ほう、あのチーム、奴隷にしてはやるね。」

白いスーツで身を固めた若いアマレク人の男がつぶやいた。彼の名はアモン・クレメンス。アマレク連邦スフィア共和国大統領、ラムセス・クレメンス13世の三男である。


「そうでしょう?あの副将のゼロス・マクベイン。って子が面白くてね。よく突拍子もない作戦をやらかすんですよ。まるで数年前のあなたのようにね。」

案内役をしているのは彼の学院時代のチームのコーチで、今回はこの品評会で大会委員を務めている男であった。

 

 アモンは現在名門メンフィス大学のチームで主将兼作戦参謀を務め、3年連続学生チャンピオンである。

「今日は、奴隷チームのトーナメント参加に文句をつけてやろうと思って来てみたが、気が変わった。できれば後半も見せて欲しいものだな。」

「では貴賓室へご案内します。」

アイデアはいいんだけどな。描写の文章力がねえ。

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