第43話:ささやかな式と、厳かな邂逅
診療所を広くとるにはどうしても俺の部屋(元校長質)が邪魔だった。
改装を仕切ってくれるシモンと顔を突き合わせ相談していると、クララさんがお茶を出してくれた。
「すみません。」
俺たちが、校長室について悩んでいるのを見てとると、クララさんは
「ばかねえ」
と俺たちの悩みを一笑に付す。
「なんかいい案でもあるんですか?」
俺たちはちょっとむっとしていた。
「簡単じゃない。尊さんが2階に上がってくればいいのよ。」
「そうか、気づかなかったよ。」
シモンは手をたたき、俺とローレンさんは飲んでるお茶を噴いた。
「だってもうねえ。そういう関係でしょ?」
先日、俺とアーニャは正式に婚約した。俺はお尋ね者なので、法的な結婚は難しいと思っていた。ただ、その事実は村人には伝えらえていた。一応、それで済んだつもりにしていた。
「まあ、けじめは必要だな。」
ローレンさんのツルの一声で俺たちは結婚式を挙げることになったのだ。
結婚式は庭の旧体育館で行われた。花もみんなが自分の庭にあるものを持ってきて飾ってくれた。披露宴も料理持ち寄りで、校庭で立食パーティーということになた。
ウエディングドレスはクララさんのを借りた。俺は護衛体技の制服でいいや、と思ったが、そうもいかず、簡単にスーツを仕立ててもらうことにした。コサージュをつけると割とそれっぽい。
当日は大勢の村人が参列してくれた。ローブデコルテのウエディングドレスを着たアーニャはとても綺麗だった。
ヌーゼリアル星の方に則った結婚式だ。体育館の扉が開くと俺とアーニャが音楽に会わせて入場する。パウラさんがアーニャのドレスの裾をさばいてくれた。
壇上に上がり、用意された席に着く。まず村長さんが、俺たちがヌーゼリアルの法によって夫婦になったことを宣言する。次いで王が宝剣を俺とアーニャの肩にあて、誓いの言葉を宣べさせる。
「わたし不知火尊はアニエス(アーニャ)を妻とし、法に則って夫に求められた責任を果たし、死が二人を分かつまで、妻に忠節を尽くし、愛し、いつくしむことを誓います。」
「わたし不知火アニエス・エンデヴェールは尊を夫とし、法に則って妻に求められた責任を果たし、死が二人を分かつまで、夫に忠節を尽くし、愛し、敬うことを誓います。」
そのあと、指輪をブリ子から受けとり、交換する。
後はまた俺たちが音楽にあわせて退場して終了だ。
まあ、簡単にリハーサルもやったけどめちゃくちゃ緊張した。でも、傍らの幸せそうなアーニャを見るとやってよかったって思う。いつか、チームのみんなも呼んで、スフィアの式もやらねばならんのだろうか。
それからの俺はますます忙しかった。診療所、そしてアーサーの探索は続く。
キング・アーサーのランデブーポイントが見つかったのは、このミーディアンの地に来て3年目が経とうとしていた時だった。
きっかけは偶然だった。村人の迷い子になった羊を追っていた俺は、ついにその場所を探りあてたのである。山の急斜面にある洞窟の入り口にある低木に羊は角を引っ掻けてしまっていた。それを救出した俺は、洞窟の奥に何か光るものを見いだしたのである。
光に満たされた洞窟に入ると俺の左目は反応する。
「尊か……やっと会えたな。随分と待たされたのだが。」
相変わらず、黄金の甲冑に赤いマントを羽織ったはでなビジュアルのアバターは健在だった。それ以上に健在だったのは"王様"の口の悪さであった。
「それはこっちのセリフなんだが。あのような抽象的な指示ではなかなか難しいと思いますがね。」
俺も負けずに言い返す。
およそ20年ぶりの再会にお互い、忌憚のない意見をぶつけあった。
「さて、お前がエルフの娘とキャッキャウフフしていた間のことだが、人類の苦悩はますます深まっている。」
王様はわざと俺の気に障るような言葉を紡ぐ。
「何か棘がある言い方だな。王様。残念ながら、あなたの主観は不要だ。客観的な資料を寄越していただこうか。」
俺は自分が留守にしていた日々の間の資料を閲覧する。アマレク政府は俺の持つ能力が、先住民の遺産であることをいち早く察知していた。そして、その技術の奪取に拘る政府によってテラノイドたちに対する締め付けはますます酷くなったようだ。
「やれやれ。」
確かに俺はここ最近幸せに埋もれすぎていたのは事実だ。
アーサーはニヤニヤしながら俺を観察しているようだった。
「で、この事態は俺のせいだと言いたいのか?」
俺の不満げな問いにアーサーは答えた。
「いいや、100%アマレクが悪いだろうな。」
俺はにっこり笑って続けた。
「全くもってその通りだ。で、俺にどうしろと?」
事態が進むときには一気にいくよねえ。ミーディアン編も残りわずか、明日もお昼に会いましょう。ヨロシシク。




