第41話;「お兄ちゃんへ」マリアンからの手紙
お兄ちゃんへ
手紙を書いています。宛先も住所もわかりません。きっと誰にも読まれない手紙。
先日、お兄ちゃん(ゼロス)が指名手配されました。
私は頭が真っ白になりました。
「お兄ちゃんは人殺しなんかじゃない。手錠をかけただけで死んだりなんかするもんか。」
私は助けを求めてアモン・クレメンスさんに手紙を書きました。アモンさんも事の詳細を知りたかったらしく、すぐに会ってくれました。
私が事の詳細を説明すると、
「マリアン、辛かったね。」
そういって私のの頭を撫でてくれました。でも、彼の答えは絶望的なものでした。
「その話が事実だとしたら、彼を助けるのは難しいだろうね。」
アモンさんは私に、実はお兄ちゃんを部下として欲しかったことを告げてくれました。大学卒業後と同時に護国官として、クレメンス家の騎士団長になることが決まっていたアモンさんは、お兄ちゃんを参謀部にスカウトしたかったそうです。
「いや、あのアンテルス中将も逸材だって褒めていたんだよ。」
現在、首都防衛軍を構成するのはクレメンス騎士団なんだそうです。
「ほんとはリーバイにも近々その話をしに行くつもりだったんだ。」
この惑星にはかつて智天使と呼ばれた先住民がいて、彼らが残した膨大な技術や知恵の集積、それを使いこなすための鍵がお兄ちゃんの脳にインストールされているのだそうです。
だから政府は絶対にあきらめないだろう、そうアモンさんは言い切りました。私は、こんなにもお兄ちゃんのことをわかってくれて、ありのままに評価してくれていることがうれしかったの。
私には、お兄ちゃんの替わりには政府から女性SPが二人、しかも四六時中警備されています。外面的には、私をお兄ちゃんから守る、という目的。でもほんとうは私の口止めと、ほかの騎士団が私を拉致してお兄ちゃんをを手に入れるためのエサにされないようにするためなのでしょう。
「マリアン、裏切られておかわいそうに。」
みな、口々に私をを気遣い、気の毒がってくれます。みんな、政府やマスコミのいうことを鵜呑みにして。
違う。裏切ったのは私だ。私は兄としてではなく、一人の男性としてお兄ちゃんに恋していた。母にはすぐに勘づかれてしまった。そして、それを嫌って、人造人間は恋も結婚もできないからやめなさい。あなたが傷つくだけよ。と私に厳しく当たった。その事実を知ったとき、私は絶望した。そして死にたくなるほどつらかった。
私は、この恋をあきらめるために、お兄ちゃんを嫌いになるしかなかった。自分の心が壊れないように、お兄ちゃんだけを悪者にした。それがお兄ちゃんの心を傷つけることになるのがわかっていたのに。私の態度は最後までお兄ちゃんを痛めつけた。そうわかってたのにやめられなかった。自分の心だけを守るために。
でもお兄ちゃんはそんな卑怯で汚い私を絶対に裏切らなかった。自分はどうなってもいいから私を助けてほしい、って叫んでくれた。その言葉はわたしの心をつきさした。うれしくて、切なくて、申し訳なくて。
おにいちゃんの禍々しい力を目覚めさせたのは、きっと私の罪だ。ほんとは平凡な奴隷として、平凡だけど穏やかで幸せなはずのお兄ちゃんの未来を壊したのは誰でもない、私なんだ。
だから私は戦う力が欲しい。お兄ちゃんを取り戻すための力が。お兄ちゃんの無実を晴らすための力が。
政府は私が口をつぐむならなんでもくれるといった。だから私は望んだ。
最高学府、メンフィス大学法学部政治学科への入学。あの、アモン・クレメンスが通った道。
「私、ジャーナリストになります。」
そう、パパに告げたとき、パパは本当にうれしそうだった。パパは若いころ本当は法律家ではなくジャーナリストになりたかったんだって。でも、ごめんねパパ。
私はパパの夢を継ぐためじゃなく、お兄ちゃんに追いつくためになるの。
お兄ちゃんにあって、
「傷つけてごめんなさい」
「守ってくれてありがとう
そして
「お兄ちゃんは私の初恋の人だよ」
って伝えるために。
たぶん、世界でいちばん不純な動機なんだと思う。お兄ちゃんは言うでしょうね。
「バカですね。マリアン。私はただあなたに幸せになって欲しかっただけなんです。」
……そのセリフを言わせるのが今の私の目標。
ごきげんよう。さよならとは言わない。ゼロス・マクベインはわたしの大切なお兄ちゃん。」
マリアンは手紙を机にいれて鍵をかけた。次にこれを読むとき、わたしは誇れる人間になっているだろうか。もう一度兄に頭を撫でてもらうためでなく、兄と笑顔で握手できるような人間に。
純粋と電波の境目はどこだ?次回、ついに尊とマリアンが。うふ。全年齢対象の壁に果敢に挑んでやるのですよ!明日もまじめに更新します。お楽しみに!




