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はるかかなたのエクソダス  作者: 風庭悠
第5章:傷を包み込む翼。~尊とエンデヴェール家編
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第33話 エルフ何人デレるかな?という件

「尊くん、この前のお礼にお夕食でもいかが?」


 上機嫌でつやつやなクララさんからお誘いがかかる。つやつやなのは美容機械が治ったからだ。

 

 俺が仕事を終えて二階に上がると、ローレンさんが晩酌を楽しんでいる。

(ローレンは最近クララがおぬしのことを頼ったり褒めたりするのがおもしろくないのじゃ)

ベリアルのいうように、俺を目にするとローレンは急に機嫌がわるくなった。 こどもかよ。


「旦那様は普段どんなお酒をお召しになられるので?」

まだ料理は前菜の段階である。黙ってちびちびとやるローレンに俺は尋ねた。


「もう、むこう(ヌーゼリアル)からもってきたものは売ったか飲んでしまった。今は、こんなもんしかない。」


 ローレンは瓶をどんという音をたててテーブルにのせた。テラノイドはアルコールの醸造、蒸留は基本的に禁じられていて、しかも売られているアマレクの酒は非常に高い。

 そのため、奴隷街スラムの酒場やこんな辺鄙な村でさえ、密造酒が主である。ちなみに酒場は瓶だけは正規品で中身は密造酒である。

 

 ローレンの瓶も密造酒(家庭用に勝手に作る酒)のようでおそらくは、焼酎のような蒸留酒なのだろうが、まだ原酒どぶろくの段階でありかなり濁っていた。


「それはお辛いでしょう。ただ、酔うだけのお酒ですね。」

俺が慰めると初めてローレンの表情が緩んだ。これまで、だれも同情してくれなかったに違いない。


「まあ、働きもせずに日がな一日飲んだくれておったらそうなろうて。」

どうせ本人には聞こえないと分かっているため、ベリアルも容赦ない。


「では、旦那様にはとっておきの魔法をおみせしましょう。」

俺は瓶を手に取るとそれをゆっくりとゆらす。瓶の中身が泡立ちはじめ、見る見るうちに、瓶の底には沈殿した滓が、上層部には透明な液体に分離する。


「ナノマシンによって醸造を加速したのか」

ベリアルが感心したように言う。俺は滓が混ざらないように液体を新しい瓶に移し替える。


そこからローレンはグラスにつぐとそれを口にした。

「うん、うん。」

久しぶりに飲んだまともなお酒にローレンの顔がほころんだ。それを堪能すると、もう一杯つごうとするが、俺はそれを制した。とても悲しそうな顔をするローレンに

「実は、この魔法には続きがありましてね。」


そういうと俺は瓶をさベらにゆっくりとゆらした。中の液体は透明から琥珀色になっていく。

ローレンの顔が子供のように(酒を飲む人間の表現としてははなはだ不当ではあるが)輝いた。


俺がそれをゆっくりとローレンのグラスに注ぐ。ローレンはすぐに飲まずその香りをかいだ。

「~~~~~!!」

プリンをほおばった娘たちと同じ表情かおだ。

「まあ、親子だからな。」

ベリアルが突っ込む。


そして、それを口にする。

「~~~~~~~~~~!!」

椅子から転げ落ちんばかりに悶絶する。そして俺を力いっぱい抱きしめた。しかし、すぐ恥ずかしくなったのか姿勢をただした。


「どうかね、尊くんも一杯。」

はじめて俺のことを「そのほう」以外で呼んでくれた瞬間であった。ただ……。

「すみません。俺、まだ未成年なもので。」

そう、お酒は二十歳からなのだ。


 きっと故郷くにで王様だったころに飲んでいたお酒と近い味だったのだろう。それからお酒が切れると食事に呼ばれるようになったのは言うまでもない。


 外堀かぞくの話だけでなくアーニャの話もしよう。やはり、同じ仕事をして共に長い時間を過ごすだけあって、親密度が増すのにそれほど時間はかからなかった。

 

 夜明け前に起きると俺たちは1階の家庭科室キッチンに集合、昨日の残り物を使ってお昼ご飯のサンドウイッチを作る。バイクを二人乗りで牧畜農家まで行き、馬を借りると、羊や牛たちを連れて牧草地へ行く。水飲み場で水をやっている間、俺たちは木陰でランチをとり、少し昼寝もする。そして、また夕方には牛小屋や羊の柵へと連れて帰るのだ。


 アーニャは歌が好きで、パウラさんから教わったヌーゼリアルの歌を標準語スタンダードに訳したものを歌ってくれた。スフィアの歌や、俺が教えた地球の歌も。彼女が歌うと本当に心地よくて、昼寝がはかどった。


 アーニャは本当にきれいな顔立ちをしていた。透き通るような白い肌。ふわふわの癖がついた栗毛色の長い髪は陽の光を受けると金色に輝いた。、碧玉エメラルドのようなダークグリーンの瞳。笑うと目じりがたれる表情。

 

 俺は、彼女にすっかり恋をしていた。そしてその感情は俺が人造奴隷ホムンクルスでないことの証でもある。


 そういえばこれまで彼氏とかいなかったのだろうか?


「ああ、私、いろいろと『重い』女に見られてますから。」

俺に訊かれるとアーニャはそう答えた。まあ、確かに。働かない両親。養うべき妹たち、しかも異星人。苦労することは保証つきではある。でも、そんなことを補ってありあまる魅力が彼女にもある。


「でも尊さんも「重い」男ですからお互いさまですね。」

(そうじゃ、ぬしの双肩には人類の「明日」が乗せられておるのじゃ。)

いけね、……忘れてた。


そしてアーニャは俺の手に自分の手を重ねた。

 俺は義妹を助けるために「魔法」を使い、その力を狙う政府に無実の罪で追われていることを明かしていた。それでも俺はこの家から追い出されなかったのである。

 それだけでも、俺はこの家族に感謝しているし、大きな恩がある。


しかし、事件が生じる。シモンが俺を売ったのだ。


次回、久しぶりのバトルになるのか?

明日の正午に配信予定です。

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