第32話 ついにバトル小説からホームドラマへジョブチェンジという件
「ご紹介します。私の魔法使いさんです。」
アーニャの紹介は、エンデヴェールの家族みんなが絶句した。
「若そうだが、もう三十路なのか?」
ローレンのボケ突っ込みに、妻のクララは少女のように笑う。すいません、そのネタは既に……。
とりあえず俺は一階の教室の一部をねぐらとしてあてがわれた。二階はエンデヴェール家の住まい。1階は俺のほか、オズワルドとペイジの家族と、お守り役のパウラさんが住んでいた。皆それぞれ分担があり、ペイジの妻は料理。オズワルドの妻は掃除と洗濯。パウラはみんなの子育てのほかに教室に村人を集めて読み書き計算の私塾を開いていた。これもエンデヴェール家の収入源の一部であった。
アーニャは俺より少し年上の二十歳、弟のシモンは俺より2つ年下の16歳であった。こいつが結構俺に冷たい。まあ、マリアンの少年版みたいなものだ。シモンは村の大工さんのところで働き、家の修繕などを手伝っていた。
また、さらにその下に妹が三人もいる。これが6歳、4歳、2歳の可愛く、うるさく、かしましい娘たちであった。
上のブリジットは落ち着きがなく、いつもぶっ倒れるまで全力で動く娘で、アーニャにあこがれている。
真ん中のサビーネは逆に落ち着いており、よく物事を観察する冷静な子だ。ただ、毒舌なのがたまに傷で、兄のシモンにも容赦ない。
一番下の子ターラは甘えん坊であり、しかも抜け目ないところがある。甘え尽くすためならなんでもするタイプである。
ベリアルが勝手に「ブリ子」、「サバ子」、「タラ子」と呼んでいておかしい。まあ、のちにみんなからもそう呼ばれるようになるのだが。ベリアル的にはサバ子と一番キャラがかぶりそうなので脅威に感じているんだそうである。
俺は、ここを拠点にホレブ山系を探索し、キングアーサーとのランデブーポイントに行きつかなけばならない。
基本的に週五日、俺はアーニャと羊や牛を追い、土日は山へ探索に行く。こんな繰り返しとなっていた。
「あんたさ、何ができんの?」
今日もシモンがつっかかる。いいねえ、若いのって。あんまり俺と歳はかわらないけど。
「そうですね、少し私の仕事を手伝ってくださったら魔法をお見せしますよ。」
俺は断られるだろうなあ、と思いながら振ってみると、のこのこついてきやがった。今日は村人の不要になった冷蔵庫や洗濯機をもらいうける日なのだ。
「壊れてるけどいいのか?あんちゃん」
俺はどうも新入りの家人と思われているらしい。まあ、おたずねものよりはましだ。この村にはTVがない。アマレクのラジオ放送だけが唯一の情報源であり、ゼロス・マクベインのニュースは知っていても俺とは結びつかないだろう。
俺はコンセントに電源を入れると回線をチェックする。まあ、あとはベリアルに任せて、ナノマシンでちょこちょこっと修理すれば完成だ。
「ついた。」
シモンは驚いて一瞬俺を尊敬のまなざしで見つめ、すぐに顔をもとに戻した。おお、効いてる効いてる。
「これで、何をするの?」
冷蔵庫をさすりながら問うサバ子に
「そうだね、夕飯終わったらアーニャとブリ子と遊びにおいで。いいものを見せてあげる。」
とさそっておいた。
夕飯後、二階から降りてきたエンデヴェール家の四人の娘たちに俺はプリンをふるまった。田舎の牧場や農家から分けてもらったしぼりたての牛乳とうみたての 卵が原料である。美味くないわけが、そして、不味いわけがない。
「~~~~~~!!!!!」
どうだ、言葉に出来ない、だろう?娘たちは幸せそうな顔をして床を転げまわって悶絶した。それはリアクションがでかすぎませんか?みなさん。まあ、作った俺はうれしいけど。
「冷蔵庫はすごい」
サバ子、それは褒めるところが間違っている。俺はこうして「前世」でもやっていたという餌付けを開始したのである。三人のチビ姫たちが陥落するのにさほど時間はかからなかった。
この餌付けには主な副産物がいくつかあった。ペイジの妻が俺にスイーツのレシピを教えてほしい、と依頼してきたことだ。彼女はもともとはただの主婦だったので、ヌーゼリアルの材料とスフィアの材料の違いに戸惑っていたのである。彼女はのちに教室の一つをカフェに改造し、それはエンデヴェール家の収入源の一つになった。
もう一つは、奥様のクララであった。
「尊さん、私の機械もみてもらえないかしら。」
俺はそのとき初めてエンデヴェール家の住まいである二階に招かれたのである。見せられたのはクララの美容機械の数々であった。まあ、ヌーゼリアルとスフィアでは使う電気もやや異なる。俺はナノマシンで変圧器の基盤を組んで取り付ける。作業は2,3日かかったが、すべて使えるようになった。もちろん、ベリアルの働きではあるが。
ありがとな、相棒。
「都合のいいときだけそれか?」
まあまあ。
それから、家の中の電化製品はほぼ俺がメンテすることになったのである。でも、シモンはいまだに俺に心を開こうとはしなかった。
「おぬし、美少年に関心があるのか?」
ベリアル、そういう問いは誤解を招くからやめてくれ。15禁にならないように頑張っているのに。
いかがでしたか?尊君の「誠意大将軍」。尊とエンデヴェール家は世間ずれしている同士がうまくかみ合ってる感じがしますね。たぶん、この家でまともな人はシモン君だけかもしれませんね。ではまた明日。




