第23話 俺の正体が明かされはじめ。チートの香りがする件
「そのゼロス・マクベインという奴隷養子は本当に『不知火尊』を名乗っていたのですか?」
公安警察に出頭を命じられたテラノイドの代表者組織GOSEN(統治会)の委員の一人である、ジェフリー・ラーソンは戸惑いを隠そうとはしなかった。
「その、『不知火尊』、という名前に何か特別な意味でもあるのかね?」
調査官である公安局長官はいぶかしげに尋ねる。
「そうです。もしそれが本物であれば、それがあなた方のお探し物です。」
ラーソンの答えにアマレク人たちは色めきだった。
「まさか、あのフォークリーチゃーズ……なのか?」
かつて地球人種たちがこの惑星を治めていたころ、この星の支配者は人間ではなく、スーパーコンピューター、キングアーサーシステムだった。キングアーサーはもともと、地球からこの惑星に移民するために使われた宇宙船のホストコンピューターを束ねたものに、この惑星の先住民ケルビムの持つ知恵と技術のアーカイブを加えたものであった。
このコンピューターには人間から摘出された生体脳が使われており、その提供者の一人が不知火尊という名の少年だったのである。キングアーサーにはCPUコアとなる10の生体脳があり、そのうち4つの脳には、この惑星の先住民ケルビムの知恵を存分に利用するためのアプリがインストールされているのである。そのアプリこそが「四つの生き物」なのである。
そのため、この4つの脳は「セラフ」と呼称され、王の最側近であることが知られている。
一方、人智をはるかに超えた知恵を引き出し、その力を意のままに操れることから、そのアプリには悪魔の4つの別称が付けられている。すなわち、アザゼル、ベリアル、ベルゼバブ、ルシフェルである。これはかつてキングアーサーと敵対し、今はGOSENとなっている者たちが付けた蔑称である。ただ、怖れの気持ちも込められている。
アマレクはテラノイドを奴隷にした際に彼らの持つ生体コンピューターシステムのほとんどを接収することに成功していたが、肝心の先住民「ケルビム」の知恵を引き出すためのコア、キングアーサーシステム、とりわけ「フォークリーチャー」を奪いそこなっていた。それらは、その以前に「万神殿」と呼ばれる秘密基地へ密かに移動されていたからである。
それゆえ、アマレク政府はその行方を執拗に追っていたのである。井戸はあっても汲むための手桶がない。彼らの直面している事実だった。そして、その情報をテラノイドから吸い上げるためにGOSENの委員会を飼っているのだった。
「もし、その者が本物の不知火尊であれば、彼の持つ能力はベリアルでしょう。その学生たちが見た通り、彼は『癒しのセラフ』、または『契約のセラフ』と呼ばれているのです。」
DNAを読み取り、ナノマシンによって、人体のどんな病気や怪我や、障害でさえもそれを完全修復する医療システム。ゼロス(尊)が垣間見せた能力は万難を排しても手に入れたいものであった。
「やつは、本当に凶悪だったんです。俺たちはやつの被害者なんです。」
公安警察の取調室で、アネジイブ大学の護衛体技チームのキャプテンは必死に弁解する。不思議なことに刑事は、自分たちの犯罪の動機や、使った手口など、一切聞こうとはしなかった。
彼らはゼロス(尊)の使った「魔法」を事細かに説明し、マリアンをピーする様子を撮影するために持ち込んだ機材に録画されていた動画も提供し、逐一説明したのである。どうやら、あの小生意気なテラノイドをを悪者に仕立てることに成功しそうである。
「ご苦労さん。帰っていいよ。」
無罪放免と言われ、アネジイブ大学の男たちはほっとしていた。
「そうか。君たちが被害者なのだね。それでは、本当にそうなってもらおう。」
そう言った刑事の口元は笑っていたが、目は少しも笑っていないことに彼らは気づかなかった。
その直後、彼らは全員変わり果てた姿で、家に送り届けられてしまった。口封じのために、また、ゼロス(尊)を指名手配する口実のため、全員が公安警察の手によって射殺されてしまったのである。
翌日、警察はこんな発表をする。
「本日、警察は聖バステト女学院所属のテラノイド労務者(奴隷のこと)ゼロス・マクベインを殺人容疑で指名手配した。彼は、護衛体技の試合で友人が傷つけられたことを逆恨みし、対戦相手5人を射殺、逃亡したものである。彼は未成年であるゆえ、生け捕りにした場合にのみ、賞金1億ディル。ただし、死亡させた場合は同額の科料が課せられるであろう。」
無名の未成年の奴隷に多額の懸賞金が掛けられる。表面だけきけば簡単な仕事だ。逃亡奴隷を狩る賞金稼ぎも動きだすだろう。
そう、俺にはあまり時間は残されてはいない。
さあ、逃亡生活のはじまりか?次回 「第24話 旅だちの日は突然に、という件」
お昼休みはうき●きウオッ●ングだ!ではまた明日お会いしましょう。




