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はるかかなたのエクソダス  作者: 風庭悠
第3章:鎖を切り裂く翼~ゼロス覚醒編。
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第21話 突然のピンチに、「落ち着け」というやつほど解決策が皆無な件

 「お兄ちゃん」という懐かしのフレーズで呼びかけるマリアンの声で、俺は目を醒ました。


「どうやら、拉致監禁されたようですね。」

 

 俺は言葉を発しているつもりだが、音がわんわんと響いて聞こえる。鼓膜をやられたか?いずれにしても聴力の回復にはもう少し時間がかかるようだ。


「ストーさんは?」

俺の問いにマリアンはわからない、とばかりにかぶりを 振る。俺はひとまず現状の把握から入ろうとする。部屋はほぼ真っ暗である。ドアの隙間からかすかに漏れる光で、そこにマリアンがいるというのが判別できる程度だ。俺は両手を後ろ手に、そして両足に手錠をかけられ、ほぼ身動きのできない状態だ。マリアンは両手に手錠がかけられているものの。足は自由のようだ。


「お兄ちゃん、ごめんなさい。私が怪しいものなんか受け取ったばかりに」

そう謝るマリアンだったが、

「大丈夫ですよマリアン。マリアンはどこも悪くあありません。悪いのは犯人ですよ。」

そう慰める。さて、その犯人はだれだ?今、話題の人類解放戦線か。いずれにしてもこのままではマリアンを守ることはできない。くそ、なんのための護衛体技ガード・アーツなのか。


 俺は自分を罵る。しかし、今できることは視力と聴力の回復である。とりあえずはそれに専念しよう。俺はもう一度眼を瞑り床に身を横たえる。しばらく眠っていたが、心細かったのかマリアンが背中を預けてきた。


「お兄ちゃん……」

マリアンが恥ずかしそうに訴えかける。

「え……どうしましたか?」

なるべく優しく問いかける。

「お腹……空いた。」


 さすがの俺も笑いを噴き出してしまった。アマレク人ご自慢の皮膚の葉緑素も。暗いところでは役にたたないようだ。

「僕のズボンの左側のポケットに飴ちゃんが入っています。それでいいですか?」

あまり腹の足しになるものではないが、何か口に出来て安心したのか、それをなめ終わると眠りについたようだった。


 どれだけ時間が経ったのだろうか。大きな金属音と共に部屋の扉が開く。突然の音と光に、俺もマリアンも目を醒ました。目だし帽をかぶったいかつい男たちが4人。俺の聴力は回復していた。鼓膜は大丈夫なようだ。


「奴隷の分際でリゾートとは感心しないなあ。」

俺には犯人のい声に聞き覚えがあった。何とか思い起こそうと必死に記憶をたどる。しかし、俺が思考に集中して返事をしなかったことに腹を立てたのか、そのうちの一人が俺を強かに蹴り上げた。マリアンは恐怖で嗚咽を漏らす。


「みなさんの目的はなんでしょうか?」

俺はこの時点でWHF(人類解放戦線)ではない、と判断した。今の俺のネームバリューであれば、彼らは仲間に引き入れようとするはずだ。では、一体誰なんだ?


「憂さ晴らしだな」

 男の一人が意地の悪そうな口調でいう。もしそれが本当であればろくでもなさすぎる。また、営利目的のプロの犯罪者による誘拐の可能性もへった。

 

 「奴隷というものは、法律的には他人の動産にあたります。みなさんが今なさっていることは犯罪にあたります。今ならまだ間に合います。私たちを解放していただき、お互いになかったことにしませんか?」

俺はなるべく冷静に交渉に努める。


「お前が俺たちの財布の心配をする必要はない。お前が死んだところでもただの『器物破損』だ。罰金30万ディルで終わる。」

困った、どうも知的とはほど遠い連中につかまったらしい。

「それは科料です。民事の損害賠償は、また別口になりますよ。」

「知るかよ。」


再び暴行を加える。

「このはアマレク人です。このだけでも解放していただけませんか。少なくともこのには何の罪も恨みはないはずです。」


 俺はいちばんの願いを口にした。マリアンは俺の言葉にはっとしたような顔で俺を見る。

「わたしがあのホテルで休暇を取っていたのは主人の命によるものです。お気に召さなければ謝罪いたしますが。」

なぜ彼らは俺の行動を知っており、それに怒りを感じているのか、俺は慎重に言葉を探す。


 「いや、謝罪には及ばない。お前は今から罰を受ける。今しがたお前の仲間を一人、処分した。まもなくお前にも同じ所へいってもらう。」


ストーさんが……。俺は、頭が怒りで沸騰しそうになったが、必死で落ち着こうとする。死体をこの目で見たわけでもないのに、こいつらの口車に乗って冷静さを失うべきではない。ただ、其のあとはひどいありさまだった。体中に暴行をうけ、かなりの箇所を骨折しただろう。

 可哀そうなのはマリアンで俺が暴力を身に受けるたびに恐怖で震え、嗚咽し続けている。


 まてよ、さっきの音響閃光榴弾スタングレネード……。そういえば、不正使用で俺たちに負けたチームがあった。まさか、その仕返しに? 俺はアマレク人は信用できないが、護衛体技ガード・アーツをしている奴らを疑いたくはなかった。

「アネ…ジイブ大学……。」


 俺の声はほぼ絶え絶えだった。俺がその言葉をようやく絞り出すと男たちは動きを止める。リーダー格とみられる男が嬉しそうに口を開いた。

「やっと気が付いたか。」

気づいてほしければ最初から覆面ははずしておけよ。作戦参謀の俺は、リサーチ段階でお前らの顔を含めた全データが頭に入っているんだ。


「俺たちはお前らに恥をかかされたんだ。」

「せっかく就職が決まっていたのにお前らのせいで。」

「くそう、あのクレメンスの気障キザ野郎め。」

口々に身勝手な言葉を言い放つ。俺に一言でレスさせてくれ。「自業自得だ」と。そして、アモン・クレメンスが護衛体技ガード・アーツ騎士道精神フェアネスを汚されたことへの激高も思い知った。


 しかし、事態は最悪な方向へと進んでいく。

「これから、お前がボディガードとして失格なのを思い知らせてやる。」

ゼロス、そしてマリアンのピンチに救世主は現れるのか?次回「第22話 俺の覚醒と、脳内妹まで現れた件」。また妹ですか?

明日もお楽しみに!  Coming noon! (soonじゃなくてね)

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