表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はるかかなたのエクソダス  作者: 風庭悠
第3章:鎖を切り裂く翼~ゼロス覚醒編。
18/42

第18話 俺の出生の秘密が結構なレベルで深刻だった件

[星暦992年 11月10日]


 休暇当日、俺はステーションワゴンタイプの家事車に簡単な荷物とともに乗り込んだ。驚いたのはそこにマリアンが乗っていたことだ。


「お嬢様、どうなさったのですか?」

怪訝そうな表情での俺の問いに、マリアンはいつもの不機嫌な表情で答えた。

「ついでよついで。ちょっと買い物があるんだから。」


「そうでしたか。」

 俺は深くは追及せず助手席に乗り込むとシートベルトを締めた。マリアンとドライブするのは通学以外では久しぶりであった。そのため、走行中の車内には微妙な空気がただよっていた。マリアンは車窓に頬杖をつくと外を不機嫌そうに眺めている、俺は気になって何度か窓に映るマリアンの表情を確かめてしまった。窓越しに目が合うとマリアンは舌打ちする。俺はそのたびに慌てて視線をはずした。


「実家…といったね?」

ストーさん(マクベイン家の家令)は俺に確認する。

「あ、はい。」

俺は慌てて答えた。


 マリアンを彼女の行きつけの目抜き通りにあるブティックに降ろして、再び車を走らせる。

「ゼロスは実家のことを覚えていないのかい?」

ストーさんはやや気の毒そうな口調になる。

「それが、なぜか記憶があやふやなのです。記憶の中の実家が、現実ではあり得ない光景で…。だから、真実ほんとうをこの目で確かめたくて」


 俺は記憶にある実家の住所をストーさんに渡す。ストーさんはそれを見てカーナビに行き先を打ち込んだ。そして無言のままひたすらにナビの求めるままに自動車を走らせた。目抜き通りから大分入ったところに大きな研究施設が目に入る。ナビはそこで案内を終了した。


 看板には「国立生産技術研究所」という在り来たりな名称になっていて、門には警備員による物々しい警備体制が整えられていた。ストーさんは高い塀に沿って走ると路肩に沿って停止する。俺は高い塀をただポカンとした顔で見つめていた。


「ここが君の指定した住所だよ。」

「はあ……。」

俺の記憶とは全く違った光景であった。しかし、ナビはここが俺の指定した場所であることを示している。

「君の記憶の半分は正解で、半分は間違っているんだよ。御覧、ここが君の本当の実家だ。」

「??」


俺は二の句が継げない。

「君はここで作られた人造ホムンクルス奴隷なんだよ。」

ストーさんの言葉に俺は絶句する。


「これを旦那様から預かっている。」

ストーさんは分厚いファイルに収められた資料を俺に渡した。「計画プロジェクト:クヌムの涙」という表題になっていた。

「本来は極秘資料で、我々奴隷が閲覧すべきものではないのだが。」

と前置きしてから、


「旦那様は君にとても期待していらっしゃる。ゆくゆくは私の跡を継いで家令を務めてもらえたら、そうお考えだ。ただ、このこと(俺の出生の話)に関しては君が成人してからお話になられるおつもりだったようだ。しかし、君の休暇の希望先が『実家』ということだったのでねえ。良い機会かもしれないということでこの資料を私を通して君にことづけられたのだ。」


 ストーさんによると、政府は地球人種テラノイドによろテロの増加に手を焼いていて、奴隷の数と質を確保するために優秀な奴隷養子や奴隷養女たちの遺伝子を採取して、人工子宮で子どもを生産し始めており、俺はその量産型マスプロの初期ロットだというのだ。


 「それでは…」

 俺は頭の中が真っ白になるのを感じた。俺の地球人種テラノイドとして名前は?あの実家の風景は?両親や妹との思い出は?全身が驚愕と恐怖で動揺し、がくがくと震えている。

「違う…、俺は…俺は…」


 俺はずっと、そうつぶやいていたらしい。ストーさんは慰めの言葉をかけるでもなく、ひたすら車を走らせる。やがて、海が見えてきた。

 首都メンフィス郊外にある高級リゾートビーチである。その中でも星をいくつも取っているホテルに到着した。マクベイン家が定宿としてよく利用するホテルである。呆気にとられる俺に、ストーさんは車を降りるようにうながした。


「旦那様がキミのために部屋を用意してくださったのだ。今は一人で考えたい事が多すぎるだろう、気持ちを整理できるように、ということだ。旦那様からパソコンの使用の許可もいただいた。……良い旦那様でよかったな。それではゼロス、良い休暇を。」


「はい。……ありがとうございます。」

ストーさんは俺に手荷物を渡すと、3日後に迎えに来るから、とだけ言い残し、去っていった。

 

 さあ、どうしたものか…。


今の俺には選択肢がある。そして、そのための道具と、時間がある。

 

 一つはこのまま絶望に打ちひしがれ、無為に時を過ごすことだ。どうせ事態は変わりはしない。ただ俺はそれを素直に受け入れることなどできるだろうか。


 もう一つは、この資料とパソコンを使って自分のことをリサーチすることができる。しかも、役人である養父のパソコンまで貸与された。養父のパスコードを使えば、奴隷などでは到底潜れない、かなり深いところまで潜り、真実を探ることができるはずだ。

 

 さあ、立ち上がれ!ゼロス・マクベイン。そして、不知火尊しらぬいたける。時間は「わずか」三日間。俺が俺であるために、今、なすべきことを選ぼうじゃないか。

明かされる真実、それは希望なのか、絶望なのか。

「第19話 タイトルが綺麗でも内容がとんでもないドラマってあるよね、という件」

 真実はいつもお昼頃にやってくる。明日もまた見てくださいね!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ