第14話 NDK(ねえ、いまどんな気持ち?)を命がけでやってみる件
「要は勝てばいいんだ。」
俺は、それがどれだけ難しいことであるか理解した上でそう言った。運営側の態度は明らかに俺たち「奴隷」チームを排除することしか念頭になかったのだろう。元々は単なる員数合わせであり、奴隷に憐れみを施してやる、という高慢な気持ちや、劣等人種にどうせやれっこないという蔑んだ気持。そんなゆがんだ動機で俺たちを呼んだのはいいが、まさか「台風の目」になるとは思わなかったのであろう。
そして、大学チームの中でも強豪校とされる、あのアネジイブ大学が2つ反則を犯した上に敗れる、という前半の結果である。準決勝第二試合を控えたアモンはモニターを見ながら難しい顔をしていた。自分が信じた騎士道精神が、この競技に残されているのだろうか。暗澹たる思いであった。
「確かに敵の銃を鹵獲するという手の内をさらしたのは痛かったな。」
俺たちは装備品のTU(護衛傘)を今一度確認する。対戦相手の持つ自動小銃から俺たちを守ってくれるのはこいつしかいないのだ。
俺は圧倒的に不利な状況に歯噛みしつつも、新たに線を引き直した作戦をチームメイトに説明する。分担はカレブとラザロがフォワード、エリカとジョシュアがセンター、俺がバックアップである。
侵入口から突入すると、廊下の両側のドアは開放されている。
「まあ、おそらくはセンサーオートの小銃がお出迎え、ってところだね。」
俺の予測通り、両側からうたれる銃弾を傘で防ぎながら前進を続ける。傘の柄でドアノブをひっかけたいのは山々だが、生憎引き戸なのである。また、小銃も鹵獲されてもいいように、それほど銃弾は装填されていないはずだ。
俺の予想では2階階段入口あたりにポイントがあると予想したのだが、無人であった。
「これはレストランでの攻防になるな。」
1階ロビーは2階階段から丸見えのため、そこも無人のはずだ。最終目標である厨房の一歩手前で攻防とは。とんだ縦深陣である。
レストランはアジトのすぐ外側にある。間違いなくここが決戦場だ。大きな扉を開いて俺たちは驚く。入り口を半包囲する形でテーブルやいすでバリケードがきれいにきれいに積み上げられていた。
「時間稼ぎか。」
制限時間のうちにこの防御を突破しなければならない。幸いなことにバリケードといっても所詮はテーブルとイス。取り付いて揺さぶりをかければ崩落する。それを狙うしかなかった。俺たちは傘で「ファランクス」を組むと慎重に前へ進む。ただ、これが相手の罠だったのだ。
頭上で爆発音がする。目の前の床に移る影が揺らめいている。俺は不審に思って上を見上げると、真上にあるシャンデリアがゆらゆらと揺れている。まさか、落下する?
「エリカ!」
俺はとっさにエリカを柔術の巴投げのように投げる。次いで、ジョシュアの尻を思い切り蹴とばす。エリカもジョシュアも声も出さずに放り出されていく。気が付いたカレブが傘を上に向けた。
物凄い音がする。俺はサイドへ転がって脱出したが、無事だったのはカレブがシャンデリアを受けてくれたからであった。簡易な建物のはずなのに、なぜシャンデリアが、と思うかもしれないが、TV用の放送機材やカメラ、照明が搭載されているからだ。その重量ではたとえ木刀が仕込んであったとしてもさすがに堪えようがない。直撃を受けたカレブは昏倒する。
「カレブ!」
俺たちはカレブの容態を確認する。呼吸はあるが意識は無い。俺は手で✖を作ると競技の中止を宣言した。担架を持った救護班が駆けつけてくる。
「競技中止」の赤ランプが点灯し、カレブは救急車で病院へと担ぎ込まれた。審判団と大会委員たちが立ち会い、調査と協議を始める。シャンデリアの切れた鎖の部分にやすりで削られた後と、小型のリモコン式爆破装置が発見された。相手の反則は明らかであった。
そこで対戦チームのアネジイブ大学に失格の宣告がなされる。こうして俺たちの決勝進出が決まった。しかし、満身創痍の俺たちにこれ以上戦うのは難しい状況だった。
30分遅れて始まった準決勝第2試合は、予想通りアモン・クレメンスが率いるメンフィス大学チームが勝ち上がってきた。
決勝戦前の昼休み、調教師がカレブの意識が戻ったこと、思いのほか軽症で、今後の生活に影響を来すような後遺症はないだろう、という知らせをくれた。もちろん、しばらくの入院は必要で決勝への出場など論外であった。
「とにかく、カレブが無事で本当によかった。」
ほっとして緊張が解けたのかエリカが泣きじゃくった。俺は決意を固める。
「みんな、残念だが決勝戦は棄権する。それでいいね?」
初めて副将らしい俺の言葉に、みな、うなずいた。
「いや、ここまで来れて、俺たち本当によくやったよね?」
ジョシュアの言葉が皆の気持ちを代弁していた。棄権の申し入れのために俺たちが本部へ向かうと、大騒ぎになっていた。アモン・クレメンスと運営側がただならぬ雰囲気だったのである。TV放送の関係でどうしても決勝戦をしたい運営側は反則負けをしたチームを繰り上げさせたい、と主張し、アモンはそれは受け入れられない、と反発していたのだ。たとえ一介の学生とはいえ、大貴族の子息で学生チャンピオンのアモンの発言は無視できないのだ。
俺は、この人に無理をさせるのも悪いという思いもあり、棄権の申し入れ書を本部に提出すると、アモンに一礼した。
「殿下、このたび我々はご辞退させていただくことにいたしました。身に余るご配慮に感謝いたします。また、ご期待に副うことができず、申し訳ありませんでした。」
俺の慇懃ともとれる言葉に、アモンの出した答えは意外なものだった。
次回、第15話 「怠慢」な俺が「タイマン」勝負に挑んでちょっとイケメンぽい件
です。ついにゼロスがチャンピオンのアモンに挑みます。明日の正午にCheck It Up!




