むーんすたー
「夜が綺麗やね~」
家の屋根の上から夜空を眺めるひとりの影。
腰までかかるくらいの長さ水色の髪を風にたなびかせながら少女は言う。
いや、少女といっていいのかわからないが。
頭の上には狐耳が生えており、お尻にはふさふさの狐の尻尾が生えている。
ゆらゆらと狐の尾が楽しげに揺れていた。
「おっと、時間やね」
そうつぶやくとちょうど出歩く人影を見つけて、屋根から飛び降りる。
軽くジャンプするように跳んでおりて、歩いている自分の前の地面に着地して振り向く。
月光に照らされた瞳が赤色にひかってみえた。
「だ、誰だ!」
「そうやな、ハンターというべきやろうか。
えーと、異種族誘拐の容疑でジルスタ、逮捕させてもらうで☆」
少女はそう言いながらウィンクして手錠を見せた。
「ど、どこから見ていた!」
連れ歩いていた子供を隠すようにしながら叫ぶ男性。
普通の人間に見えるが実は違うのだろう。
夜中に眠くもなく動くのは夜に強い生き物だけなのだから。
そんな叫びを聞いて少女は口元を緩ませていた。
「さきほどからずっとやな♪ ここまできたら捕らえるだけでえぇやろうし」
「おのれぇぇぇぇっ!!」
男はそう叫ぶと姿が変化し、殴りかかるように拳を振るう。
見た目はそうかわらないがコウモリの羽を見せる男性。
吸血種の中でも下級種の存在のようだ。
「ひょい♪」
かるくかわすと壁に穴があいた。
それを見て少女はふぅんというような感じでみてから懐からなにかを取り出して。
「やつの空気を閉じよ!」
「がっぐ!?」
そういうと符が光り、男性は喉を抑えてもんどりうっていた。
そのまま近寄ると、回し蹴りを顎にむけて抜き放ち、さらにふっとんで顎を抑えてながら苦しむジルスタ。
「子供誘拐しすぎたなぁ、ジルスタ」
手錠を光らせてジルスタの腕を掴むと手錠をかけた。
すると檻が出現してジルスタを包み込むと彼の姿はその場から消えていく。
連れてこられた子供達は倒れていき、それを見て少女は子供達を抱え上げると。
荷馬車を呪符で召喚するとそれに寝かせて、それをひいて屋根から屋根へと跳んで移動する。
物音すら立てずに進んでいき、そのままさらわれた子供達はハンターズギルドへと送られた。
そこで親が迎えにくるてはずとなっているのだ。
「今日は最速ですね、深紅さん」
「今日は不意打ちやったし、相手も弱かったからや」
受付嬢の言葉に深紅とよばれた少女はにこにこ笑顔でそう言うと踵をかえして去っていく。
手には依頼料をもちながら、だが。
彼女はハンターをして条約違反した異種族の者達を捕らえることを生業にしている。
それで生活費をたてているのだ。
夜が明けるまえにギルドから送られた寮へとはいり、そこの部屋に入るとワイシャツに身をつつんで布団に寝転んでまぶたを閉じる。




