保健室での困り事
『きゃー、夜瀬くーん!こっち見て~!』
『ちょっと、抜けがけしないでよ! わたしが先なのよ!』
『ちょっとちょっと押さないでよ!』
保健室の前は女生徒でいっぱいであった。
なぜ、こんなにも女生徒がいるかというと……。
とある男子生徒が原因としかいいようがないのである。
「あー、今日も澪次は人気やね~」
「兄さん、女生徒にモテモテだもんね」
「これじゃあ、先生も彼も大変ではすまないわね」
深紅とレイナと霜月は今日も保健室の前の騒動に呆れていた。
保健室に保険委員として在籍もしているのが夜瀬澪次。
女生徒が集まるのも彼目当てだったりする。
「やで~」
「今日は澪次と遊んでもらうの我慢した方がえェみたいで」
しょんぼりしているみっくーを撫でる深紅。
なぜ、ここに彼女たちがいる理由はみっくーが澪次に遊んでほしいがためだった。
「ごめんね、みっくー。 せっかく遊んでくれそうだったのにね」
「それ以外は忙しそうだから、みっくーちゃんも言えないんですよね」
「会長、いきなり変わるのは無しやで」
レイナは申し訳なさそうに謝罪し、抱きしめる。
うんうんとうなづくように言う霜月、いや霞月会長。
それを見て苦笑を浮かべる深紅。
「あら、それはすみませんでした♪」
「おちゃめな会長というのも人気だったね、そういえば」
「それも澪次に負けないくらい人気やったな、男子生徒に」
舌をペロっとだしておちゃめな表情を浮かべる霞月。
それを見て思い出したように言うと深紅も思い出したのかそう言う。
『けが人でもなんでもないものや用がないものはさっさと教室に戻りなさい!』
そんなことしていると保健室の教諭の小波教諭のお叱り声が響いて女生徒達が蜘蛛の子散らすように逃げ出していく。
「やでっ!?」
「あ~、大丈夫だよ? みっくーに怒っているわけじゃないからね」
驚き狐の尾がふくらむみっくー。
それを見て背中を撫でるレイナは優しく声をかける。
そこへ澪次が顔をだして近寄ってきた。
「みっくーに3人ともごめんね、毎度まいどだけど。 こうも騒がしくて」
「澪次が人気やということを証明されたようなもんやから気にせんでええよ」
困ったように笑いながら言う澪次に深紅は笑みを見せてつげる。
「いやいや、深紅は少しは危機感をもとうよ」
「それは無理じゃないかしら、この二人の場合は色々とあるからね」
そんな二人を見てレイナがツッコミをいれるが急に霜月に代わり、ぽつりとつぶやいた。
彼の憂い顔や優しい顔を見てファンクラブが増えていってることなど本人は知る由もないことで。
それを知っているのは深紅・レイナ・霜月&霞月くらいだろう。
「やで!」
「ん? そうだね、休み時間が終わるまで遊ぼうか」
胸元に飛びついたみっくーの背中を撫でて微笑みを見せる澪次。
こんな顔するところも澪次のファンクラブは激写していたりするが本人は知らないだろう。
ま、知ったとしてもなにもしないかもしれない。
「夜瀬。 今日はもういいからそのちっこいとの遊んでやりな」
「はい、小波先生。 今日も迷惑をかけてすみませんでした」
保健室の教諭がいつのまにか近くに来ていて、そう澪次に声をかけると彼は頷いた。
そして小波教諭は保健室へと戻っていく。
「今日はブラッシングしようか」
「やで!」
ブラシを見せて言うと嬉しそうに笑うみっくー。
そのまま一人と一匹は歩き出すのだったが、振り向いて。
「会長もレイナも深紅もきたら?」
「そうだね♪」
「たのしまんと損やしな」
「そうね、たまにはいいかも」
そう言いながら澪次の方へと近寄り、会話しながら歩いていく。
なお、このあと澪次はみっくーにブラシをかけてやり、じゃらしで遊んであげたとか。
まあ、この姿も写真に収められてひそかに売られていたりするかもしれない。




