SSとSの朝の風景!
「おじゃましまーす」
「いらっしゃい。 兼人なら部屋にいるよ」
玄関から中にはいるのは小柄で小さな少女。
わかりやすくいうなら身長138cmの少女である。
一目見て小学生と勘違いされてもおかしくはない身長だ。
そんな彼女の名前は雨宮つぐみという。
つぐみを出迎えたのは父親である平川霧人さん。
激辛の血縁はこの人から受け継がれたといってもいいとつぐみは思っていたりする。
彼女が料理してもすきあらばその料理を辛くするのでこの親子にほとほとまいっているのだ。
「兼人ー、起きてるー? ……反応なしっと」
階段をのぼって目的の人物がいる部屋をノックすると声をかけるつぐみ。
それにため息をこぼしながらドアの開閉スイッチを押して中へと入る。
そこにはちら借り放題の部屋と143cmしかない身長の少年がいた。
「もう! またこんなに散らかして! 片付ける人の身になってよね」
起こす為に彼の部屋に入ってつぐみの口から出たのがこの第一声。
そうともしらずにすやすやと眠っている少年。
彼の名前は平川兼人といい、つぐみの近所の幼馴染である。
身長の差のライバルといってもいいほど幼い頃は喧嘩をしていた。
まあ、それを止めるのはもっかのところ兄貴分である龍星であったが。
「ちょっと兼人、起きなさい!」
そう声をかけながら身体を揺さぶる。
しかし、これで起きる気配もなく、揺さぶりも激しくなる。
「兼人! 起きてって言ってるでしょ! 朝なんだからうだうだしない!」
「あと5分~」
そう言いながら更に揺さぶるつぐみ。
それでも起きる気配がなく、いっそ深く眠りこけようとしているように思える。
しだいに目がすわりだすつぐみ。
「そう、そっちがその気ならこっちにも考えがあるよ! んん!『兼人、いつまで寝てるのかしら? 早く起きないと甘い物づくしにするわよ~』」
「やめろ、おふくろ!」
つぐみの言葉に飛び起きる兼人。
よほど甘い物が嫌いなのだろうことはまるわかりだ。
「『やめろ? やめてくださいだろう? あぁん!?』」
「お、おやめになってください。 お母様!」
つぐみが声をかえたまま言うと飛び起きて床に額をこすりつけながら謝罪する兼人。
ちなみに兼人母は実は大荒れしていたらしく。
突然、変貌することもあるので兼人も逆らえないでいるらしい。
「『やめてほしいならさっさと起きやがれ!』」
「は、はい!って つぐみかよ」
顔をあげると視界の端につぐみが目にとまり拍子抜けする兼人。
「『兼人がいつまでも起きようとしないからじゃん』」
いまだに兼人母モード声のつぐみ。
「だからって、母さんの声するかよ」
「『これの方が効き目あるからな』」
気がぬけた様子で言う兼人にしゃべり続けながら言うつぐみ。
「もういい、起きたからやめてくれ。 気が気でない」
「『よろしい、反省したみたいね』これにこりたらきちんと早く起きてね」
青ざめた顔の兼人につぐみはそれだけを告げて声真似をやめる。
「本人と見分けがつかない声帯模写……あるいみ反則だろ」
「そんなことより、早く歯を磨いて制服に着替えてよ。 あと部屋の片付けくらいきちんとしなよね」
悔しそうにぶつぶつ言う兼人につぐみがたしなめるように声をかける。
「うっせぇな、小姑かよお前は! ぶちぶち言いやがってよ」
たしなめるように言うつぐみに辟易した様子で言う兼人。
「小姑って、失礼ね! 兼人がきちんと掃除しないからうるさくいうしかないんでしょ!
おばさんだってきちんと掃除しろってうるさく言ってるのに聞かないって言ってたよ!」
「うっせーうっせー! 小学生並みのくせに小姑みたく言ってるんじゃねーよ」
つぐみの抗議する声に対しても彼は変わらずにそう言った。
「わたしそんなにちっちゃくないよ!? これでも高校生なんだからね! 兼人とたったの3cmしか変わらないし!」
「3cm分ほど、俺の方が高いし! 幼い頃からの決着がここでいついたなチビ!」
つぐみは怒ったように言うと兼人はふんぞりとしながらそう言った。
「ち、チビって! よりにもよってそれをあたしに言うの!? なによ、チビなのは兼人だって同じじゃない! 男子の背の並び順ではいつも先頭だし!」
「て、てめぇ! それをいうならつぐみだって女子の背の並び順はいつも先頭だろうが!」
にらみ合いながら喧嘩がヒートアップするつぐみと兼人。
幼いこから背の測り合いでの喧嘩はよくあった二人。
この二人の中では身長によるライバルという構図が広がっていた。
傍から見たら不毛なライバルに不毛な喧嘩でしかないが、これがいつもの日常ともいえるだろう。
「ふむ、どんぐりの背比べだな」
そう言ったのは部屋の階下にあるリビングにいる兼人の父である霧人であった。
兼人の父親だけど背は高く、その血をひいているのにもかかわらず彼の背は低いのだ。
遺伝的なのかそれともなにか理由があるのかは不明である。
彼の手には超煉獄激辛麻婆豆腐があり、それを食べながらリビングにいる。
「どうしてあの子達はああも喧嘩になるのかしら?」
平川頼子はため息をもらしてつぶやいた。
どうやら彼女は朝食を食べた洗い物をしているようである。




