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屋上

ちょっとしたお話です

それは肌寒い夕暮れだった。

かびくさい階段の踊り場に夕日がさしこんでおり、全てを赤く支配している。

ガチャン―――。

屋上へとつながる扉は、ノブを回すだけで勢いよく飛んだ。

いや、飛んだというのは語弊があるかもしれない。

ごう――という、外の世界へ押し出されるような風圧。

かなり風が強いのがわかるだろう。

少女は両足で踏ん張ることができずに、一面の赤い世界へと連れ出される。

あまり踏み入れたことのない屋上という空間は、激しい風で少女を拒んでいるように思える。


「はうう、寒いですようっ」

「は、早く確かめよう」


ぷるぷると、身体を震わす少女。

やはり、外とというものあるのか粉雪が舞い散る中では寒いのだろう。

ここで少女はちょっとだけ貯水槽の点検を任されたことを悔いていた。

屋上よりも一段高いところにある、煤けた大きな水槽に視線を向ける少女。

小柄でやや背が高い少女と小柄で背の低い少女。

風がふいたら飛ばされてしまうのでは?と思われてしまうほどのちみっこい少女は隣にいる銅色の長い髪の少女の親友である。

先生からはよじ上って蓋をあけて確かめることなどしなくていいと言われている少女。

彼女は排水管に吊るしてあるノートにチェックをいれるように言付けられていた。

中を覗いても薄暗い水槽の水を眺めるだけである、まあ、それをみて楽しいかと言われる全然といわれること間違いなしだ。

スカートを抑えながら、はたはたとはためくノートに脚を進める。

……ノートまではもう一歩である。

そこで、ふとなにかに気づいた小柄な低身長の少女――つぐみ。

ばたばた、という音と、ノートの愉快な踊りが突然やんだのだ。


「止まった、ね」

「な、なんなのかな」


銅色のロングヘアーでサイドテールにゆった少女――みなもとつぐみは顔を見合わせていた。

それはそうだろう、あれだけ強かった風がまるで気まぐれ猫のようにくるりと向きをかえてぱたり、とやんだのだから。

しん――――と辺りは静まりかえり、ただ夜の訪れを待つように冷たさだけを残した。

静けさと、消えかかるような夕焼けだけが――この世界の全てなのではないだろうかと思えた。

長く伸びる己の影はどこか、つぐみとみなもの不安を煽る。

だって、長くのびた部分がまるで化物のように思えてならないからだ。

それでひどく不安になってしまうのだ。


「あら、珍客がいたのね」


そこで、声が聞こえたのだ。

とても涼やかな声のように思えるが、違うようなそんな声質。

まるで珍しいものでもみたかのようなそんな声だった。

そんな声がどこから聞こえてきた。


「ほんとうに珍しいわね、ここにくるなんて」


と、言うその声はどうやらつぐみとみなもに向けられているようだ。


「ねえ、聞こえてるかしら?」


日はすでに落ちかけ、遠くの山にそってオレンジの線を描いていた。

その線の中心に長い影が落ちている。

よくみると女子生徒のようで、上履きの色からして上級生であろうこともわかる。

しかし……屋上をあけた時には誰もいなかったと二人は思っていた。


「私ね、夕焼けを眺めていたの。 だって、この夕焼けはまるで私の人生をひっそりとおえらせてくれそうじゃない? でも、そこであなた達が来た。

気分に浸っていたのに、邪魔をするなんてどうしてくれるのかしら」


今、ものすごい難癖をつけられているのではとつぐみとみなも。

ただ入ってきただけでどうしてそう言われないといけないのだろうか。

女子生徒の口はしは持ち上がっていて、不敵な笑みをたたえている。

本気で怒っているようではないようだ。

どこか神秘的な空気につつまれてそうなそんな少女。

ふと、つぐみ達は思い出した生徒会長ではないかと。

どうしてここにいるのか、そこが彼女達には不明でわからない。

そんな彼女たちをしりめに、生徒会長――霜月は薄い笑みを浮かべていた。

つぐみとみなもと生徒会長の出会い?かも

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