アリアンテールズ
エンゲルと呼ばれる街を目指して街道を二人の女性と一人の男性が歩いていた。
一人は138cmほどの少女で胸部にはメロンを想像するくらいの大きさの豊満な胸。腰までかかる長い銀糸の髪をポニーテールにし、緑色の瞳。水色のビスチェを着ており、黒いケープを羽織り、下はオレンジのキュロット。手には身の丈をこえる透明な水晶付きの杖。どこか神官ぽい感じである。
よく見ると、耳が少しとがっているため……少女はエルフかと間違えられそうだ。
だが、彼女はエルフにしては小柄で小さいため、誰も信じないだろう。まあ、エルフではないので問題はないが。
彼女はネヴァーフという種族である。手先が器用な錬金や戦士系が得意かと思われるが実は違っていたり。
もう一人の女性はふさふさの狼の耳と水色のストレートロングヘアーの少女。
狼の耳に狼の尾から述べられる種族といえば、エルフである。彼女の服装は茶色のビスチェに肩には忍者服に狩人のような弓と矢を装備しており、下は黒のハーフパンツだ。
その隣を歩くのは一人の男性で、前髪に白銀のメッシュがかかった黒髪のざんばらヘッドに淡い黒のクールな瞳。
身長は182cmのほどでよく引き締まった体格で顔立ちはややクール系。
服装に統一性が無くほとんど黒色の着物で茶色の袴をはいてる、左右のベルトには魔剣が装備されている。
「町が見えてきたな」
「さすが、魔人やな? あない遠くまで見えてまうなんて」
歩きながら侍ふうな男性が呟くと隣を歩いている女性がからかいまじりにちゃかしながら歩く。
「魔人になると、視力もよくなるみたいだ」
「……ハイズくん、ごめんね? 私達の為に…」
ちゃかしであっても楽しそうに笑う男性、いや…ハイズと読んだ彼に銀糸の髪を揺らして彼の前に出ると申し訳なさそうに頭をさげて謝る。
「俺はトゥラーシュ達の手助けをしたくて強くなったんだ。 それに魔人になって後悔もしてねーよ
むしろ、やっと力になれるってことの方が嬉しいぜ」
突然前にでられたので立ち止まりながら彼女の話を聞いて苦笑するが、笑みを浮かべてわしゃわしゃとトゥラーシュの髪を乱すように撫でる。それに驚いて慌てて離れた。
「うにゃぁあ!? もう! そんな乱暴にしなくても良いじゃない!……うぅ、髪、また戻さなきゃ……」
不機嫌そうに呟くとリボンを解き、櫛を取り出そうする。こうまで髪をみだされると一旦リボンを解いて櫛で綺麗にしなくてはならない、リボンを取ると銀糸の髪がファっと広がる。太陽に照らされる銀色の髪は光って見えてとても綺麗だ。
「いつ見てもトゥラーシュが髪を解く瞬間は綺麗やなぁ、思わず梳きたくなるもんやな?」
「そう言っておきながらもう梳いてるよね?……はぁ、1人で出来るのに」
そう言うトゥラーシュではあるがクリムに梳いて貰うと自分で梳くより彼女に任せた時の方が綺麗に纏まるのでなんともいえない気分になり、若干落ち込むことがある。
ほどなくして、クリムがトゥラーシュの髪をまとめ終えると
「クリム、トゥラーシュ。 話はそこまでだ……団体さんのおでましだぜ?」
と、ハイズが声をかけてきた。
その顔はとても楽しそうに見えた。
彼が告げた方へと視線を向けるとそこには群青色の一つ目でいびつで小柄なゴブリンと土気色のオークが前で待ち構えていた。
「あらあら、えらい仰山でてきはったなぁ?」
クリムは背負っていた弓を持ち弦を引いて矢を構える。普通は慌てるはずだが、彼女はこの手のことには動じたことなどない。
「でも、ま……遠慮はしやさんせ?」
と言うと、三本の矢を放つ。
風を切り、音すらも置き去りにする矢は真っ直ぐと飛ぶと襲いかかろうとするゴブリン三体の目ごと貫いた。
血しぶきが吹きあがり、ゴブリンが地に伏す。
次にまた、三本の矢をつがえて今度はオークめがけて矢を放つ。これまたみごとに直撃し、オークが地に倒れ伏す。
「ビンゴ♪あとは任せたで、ハイズ」
そのつもりだ、と言いながらハイズは真っ黒な刀身と真っ白な刀身の剣を構え駆け出す、そのスピードは目にもとまらぬ速さだった。
クリムが射抜いたことで陣形が崩れ連携にも満たないゴブリン達やオーク達の攻撃をハイズは情け容赦なく斬り捨てて行く。
その様子を見ながらクリムはトゥラーシュの傍で待機しつつ、矢をつがえて襲いかかるゴブリンを射抜く。
トゥラーシュは目をつぶり、大きく息を吸うと口を開いて音色を紡ぐ。戦場に澄んだソプラノ声の歌が響く。その音色は活力を与えるのような雰囲気があった。
「援護、サンキュー」
ハイズがそう告げて、剣を振るう度に力が増してく。
返り血を浴びるが、彼は気にしたふうもなく切り捨てていく。
その間もトゥラーシュは歌をやめない。
彼女の足元に魔法陣が浮かび、周りに複数の炎の玉が現れると目を開いてゴブリンとオークをみすえて
「ハイズくん、よけて!」
「おう!」
トゥラーシュの声が響くと、ハイズは体を横にずらす。すると、彼女は杖を振り抜く、その時にハイズの近くにいたゴブリンとオークに複数の炎の玉が撃ち込まれて、燃えていく。
数分後……。
「コレで全部だな、あっけねーなぁ」
「まあ、そこまで強くないさかい、しゃーないで」
「もう、二人とも! 不謹慎だよ?」
剣を鞘に戻すとつまらなそうに呟くハイズに苦笑を浮かべて肩を叩くクリムの横でトゥラーシュが腰に手をあてて怒っていた。
「堪忍な、ちょいとしたおちゃめやん」
「そうだって」
慌てて謝る二人を見てはぁ、と深いため息をつく。
いつものことなのだが、この二人の場合本気にとれてもおかしくないのだ。
「とりあえず」
クリムは小さくつぶやくと、突然ゴブリンやオークの死体を火の柱で燃やしつくされた。
「いつ見ても証拠隠滅には打ってつけだな」
「ハイズくん、それは褒めてるの?」
「そうやで、もし本気でいうてるなら…おなじ目にあわせたるけど」
注意するとソレは勘弁だ、わざとらしく大げさに言うハイズに本当に焼いたろうかと思ったがいつもの事なので代わりに溜息を吐いておく。




