光一とみなも
秋雨様のリクエストのひとつにお答えしてみなもと光一の絡みにしてみました!
「光一くん、見て! 綺麗な景色だよ!」
「わかったから、そんなにいちいち報告しなくてもいい」
銅色の長い髪をひとつにまとめて後ろにアップし、浴衣に身を包んだ少女が下駄の音をカラコロと響かせている。
彼女の名前は涼宮みなもといい、ちょっと天然そうなあるいみ典型的な子である。
背後にいるのは少し長めの髪を無造作に整え、丹精な顔立ちをしているが、
身体は細く一般の男とは違う体型の少年だ。
そんな彼の名前は久遠光一といい、みなもとその父親にお願いされて今にいたり、花火会場にいる。
普通なら断るだろうが、典型的なところがみなもにはあるので一人にさせる方がまずいといえるだろう。
本人はしっかりしているように見せているが周りからはそうみてとれないことが多々ある。
「あ……射的屋」
「へー、こんなところにもあるんだな」
途中で立ち止まり、まっすぐに視線を向けるみなもの視線を追うと射的ゲームの店があった。
そのまま視線をある部分に向けると苦笑いを浮かべる光一。
「よ……よし! おじさん、一回お願いしまひゅ!」
真剣に財布の中身と吟味してからみなもが射的屋のおじさんに声をかけているが緊張しすぎで噛んだ。
口元をおさえて涙目になり、赤い瞳も一緒に潤むみなも。
この状況に店の店主であるおじさんはかなり困惑しているのがわかった。
「えーと、大丈夫かい、嬢ちゃん」
「ひゃ、ひゃい! 大丈夫れすっ」
おずおずと声をかけられて直立不動になりながら返答するみなもだが。
いまだに彼女は涙目になっているのが見て取れる。
「はぁ……。 みなも、どれが欲しいんだ?」
「はぇ? え、でも……」
隣に並んだ光一が一応彼女が欲しいのはわかっていても間違えてはことだ。
彼がそう尋ねると困惑した様子で戸惑いを見せるみなも。
「言ってみな、取ってやるから」
「えぅ……。 そ、それじゃあ」
優しくもう一度尋ねるとみなもは緊張した様子で黒い猫のぬいぐるみを指差すのだった。
「あれか」
「はいよ、一回200円ね」
それを確認するとおじさんはもう準備していたのか店にある銃を手渡す。
ライフルのような形をしているいかにも出店にある銃を受け取るとお金を手渡す。
いまだにみなもはいいのだろうかと悩んだ様子で光一を見ているが、彼は笑うと銃を構えて……。
照準をぬいぐるみに合わせて、引き金をひいた。
カコン!
という音と共にぬいぐるみにあたり、落ちると店主はそれを見て拍手しながらぬいぐるみをもってくる。
そして光一に手渡すとなにやら囁くと光一は慌てて否定をするのだが、にこにこ笑顔で戻っていった。
「たく……違うと言ってるのに」
「光一くん、どうしたの?」
顔のほてりを冷やすべく手で仰いでいる光一にみなもはおずおずと近寄る。
やはりお願いするべきではなかっただろうかとみなもは神妙な面持ちで見つめるのだが。
「あー、気にするな。 こっちの気持ちの問題だからよ」
「そう、なの? なにかあったのかと思ったよ」
光一が苦笑いしながら言うとみなもは安堵した様子で胸元を抑える。
ぬいぐるみをうけとり、嬉しそうに笑う彼女のかんざしの鈴がしゃらんと鳴り響いた。
その音に気づいて、改めて光一はみなもを見つめる。
暗闇でもなぜか綺麗に映える銅色の長い髪にちらちらと垣間見える鎖骨が妖艶だ。
『えらいめんこい嬢ちゃんを連れてるじゃねーか、あんないいこはそうそういないから逃すんじゃねーぞ、坊主』
「だ~!! なんでここで思い出すんだよっ!」
と、ここで射的の店長に言われた言葉が蘇り、頭を左右に振る光一。
突然の彼の様子に目を丸くして見つめるみなも。
「こ、光一くん? どうしたの?」
「あ、いや。 なんでもねー、行くぞ! まだまだ見て回るんだろ?」
みなもがいきなり大きな声に驚いて心なしか涙目になっているが、声をかけた。
そんな彼女に罪悪感があり、手をひいて歩き出す。
足がもつれそうになりながらもみなもは光一の問いに……。
「うん! 光一くんと一緒に見て回りたいものがいっぱいだから!」
と笑顔で頷いたみなもは手を握り返した。
そんな彼女を見ながらあの時の出会いからどうしたらこんな展開になったのかと。
そんなことを考えて苦笑が浮かぶが、誰にでも優しい彼女を見守るように見つめて歩いていくのもいいかもしれない。
そう思ってしまったのはきっと夏のせいだろうと光一は思っていた。
色々なことで世話焼きな光一に誰にでも優しいみなもはあるいみ釣り合いがとれているのでは?と考えてしまいますね。
秋雨様が喜んでくれると嬉しいのですが……。
まだまだリクエストは募集中ですよ~♪