猫神様と融合しちゃいました
ボロボロの服でふらふらと歩きながら猫の神様が祭られている神社に来て、石段をのぼり猫神の石を撫でながらいてつく寒さに私は意識をなくした。
気が付いたらどこかの家でその天井を見ていた。
これはいわゆるお約束を言わないといけないのだろうか。
「知らないてんじょ、う?」
「おや、目が覚めたみたいだね」
首をかしげている私に声をかけてきたのはかなり美形なお兄さん。
不思議に思いながら身を起こすとチリンと鈴の音がなる。
よくみると首に鈴つきの首輪があり、お尻のあたりの違和感に視線を向けると二股に分かれた猫尻尾がゆらゆらと揺れている。
どれも鈴がついたリボンがまかれている。
「うん、見事に同調しているね……これは次の神は君ってことになるかな」
と、困ったように頬をかく男性。
神?神ってあの神様ですよね?
「混乱しているところに追い打ちかけるんだけど……エジプトの神パステトって知ってるかな?」
「あ、はい。 知ってます」
尻尾をゆらしながらうなずいた。
鈴がなってなんか楽しいなんて思ってないよ?
「うん、それに近い猫神と君はシンクロしちゃったんだよ。 勝手に調べて悪いんだけどさ
君のご両親はいないだろ? しかもかなりの長い期間幽閉されていたみたいだし
それにより衰弱もしていた、それに寂しいって感情もあったはずだ」
うんうんと相槌をうちながら話を聞いていく。
「猫神様も寂しかったんだよ、長いことここには参拝なんてこないしね? それで君に引き寄せられて
シンクロしちゃったみたいでもう魂ごと融合しちゃったんだよね。
だから、外せないからそのままで生きていかないといけなくなった」
「え、えぇェええ~~!!?」
思わず大きな声で叫び、二股のしっぽもぴん、たって逆立っていたかもしれない。
「うん、そうなるよね。 僕も昔はそうだったよ、いきなり選ばれて融合しちゃってね。
そんな僕らのために用意されたのがこの家なんだ」
「そ、そうなんですか‥‥」
困ったように笑う彼はどう見ても神には見えないのだが。
「まあ、僕のことはいいんだよ。これから君はここで住んで生活していかないといけないわけだし。
あ、名前は……思い出せないよね」
「え? えっと‥‥…与えられなかったんでないです」
そう言うと驚いたように目を見開く青年。
そしてそっかと悲しそうにこちらを見て抱きしめられた。
そしたら涙があふれてきて大泣きしてしまったのは仕方ないと思う。
久方ぶりのぬくもりに安堵してしまったのかもしれない。