深紅の過去かも?
冷たい溶液で満たされた培養槽にひとりの人間の姿が浮かんでいる。
それはまるで胎児のようにまるまっているようだった。
その中にいる人物はかすかな記憶で周囲に、自分と同じようにガラスと培養液で包まれたもの達がいることを感じた。
いわば”兄妹たち”といってもいいだろう。
同じ髪色に同じ姿のもの達がこのあたり全体にいる、そうここにいるものたちはコピーともクローンともいえる。
どこかの誰か――――自分と同じ顔をした”誰か”のコピーとしてこの世に生をうけたのだ。
そしてどの程度の時が流れたのだろうか、ガラスが突然ひらきそこから溶液が流れ出て行く。
それとともに押し出されるように少女も流れでてくる。
両手を反射的についてよろよろと少女は起き上がる。
足が生まれたての小鹿のように震えてはいるが気にするところではない。
培養液に長年いたからか、髪は長く伸びており、床につくほどあった。
「やあ、目が覚めたかい?」
「さあ、ここから一緒にでましょう?」
と、起き上がった少女に二人の男女が声をかけてきた。
ひとりは人間離れしたのような容姿の美女ともうひとりは疲れたようなすすけた感じの男性。
少女はわけがわからないような表情で首をかしげる。
「???」
「なにも心配しなくていいからね」
そういいながら男性は少女を抱き上げて女性とともに歩き出す。