秀久とみなもの朝の日常?
とある一軒家の一室に一匹の飼い猫と少年が住んでいた。
彼の両親の一人で父親は警察官で母は海外で働くキャリアウーマンかと思われる。
ただ、父親はある日を境に死亡してしまったそうな。
そんな彼を今まで育てたのは母親で、幼い頃からの仲の良い少女の支えもあった。
「んにゃ~」
寝ている少年の部屋に一匹の飼い猫が猫用ドアを使い、中に入る。
そしてベッドで寝ている飼い主のお腹に乗り、両前足で顔をぐにぐに。
「ん、んん……?」
違和感を感じてうっすらと目を開ける少年。
黒い癖のある短髪の髪にもみあげは襟足が短い、どちらかといえば爽やかなイケメン顔。
目を開けた時に赤い瞳が見え、少年―――上狼秀久は視線をお腹の上に居る飼い猫に視線を向けた。
飼い猫はベンガルで名前はスズという。
「んにぃ~」
「スズ、お前か……」
秀久の顔を見て鳴くスズに、かすれた声でつぶやいた。
まあ、寝起きなので仕方ないといえば仕方ない。
「にゃ~」
「はいはい、わかったから落ち着け」
秀久の腹から降りて、催促するスズ。
それに答えながら、ベッドから出る秀久。
寝起きなので紳士パジャマ姿である。
そのままスズに催促に導かれるように自室を出ると、階段で下に降りていく。
スズが早く早くと催促しつつ、秀久より先に降りていく。
苦笑しながら秀久はリビングに行くと、スズ愛用のエサ入れをもってキッチンに向かい、モンプチの蓋を開けると、足元にスズがまとわりつく。
スズはモンプチも好物だが、秀久が作る猫用の料理も好物だったりする。
モンプチをいれて、キャットフードを測ってからエサ入れにいれると猫用のスプーンで混ぜる。
「んにゃ~」
「わかった、わかったから」
秀久の足に近寄り、すりすりと甘えるスズ。
ここで、甘えた声でなくのも重要なのかもしれない。
エサいれをもって、定位置のエサを置く場所に置いた。
すると、エサの前に座りながらスズは秀久を見上げる。それはまるで秀久からの許可を待っているかのようだ。
「食べていいぞ」
「にゃあ~」
秀久がスズの頭を撫でて言うと、嬉しそうに鳴いてからエサを食べ始める。
あくびしながらリビングから出て、洗面所へと向かう秀久。
どうやら顔を洗うつもりのようだ。
蛇口をひねり、水をだし、それで顔を洗うとタオルで顔を拭いてすっきり。
平均より、上が彼の身長だが、幼い頃からの少女との背の差はちょうど良いのかも?
無造作にパジャマを脱いで籠にいれると、事前に用意されていたのか、制服のYシャツに腕を通す。
ズボンを履いて、ネクタイをつけるが、それは緩めである。
そこへ、チャイムが鳴り響くと、秀久は洗面所から出て玄関を開ける。
「ヒーくん、おはよう♪」
「・・・・ああ、はよ」
にこにこ笑顔で笑いかける少女、銅色の長い髪の左だけを結んでおり、うしろはそのまま下ろしてある。
秀久とよく似た赤い瞳が特徴だが、いかんせん彼女は臆病で泣き虫なところがある。
それでいてまじめでかみかみでおどおどと気弱なところもあるが、勇敢なところもあったりやさしすぎるところもある。
そんな彼女の名前は涼宮みなもという。
秀久の幼い頃からの幼なじみで、パートナーのような存在。
彼にとってみなもが隣にいるのが当たり前だと思っていたりする。
「にゃあ~」
「あ、スズちゃん! ヒーくんにご飯してもらったんだね? ふふ、ご機嫌だね~♪」
大好きな声に気づいたのかスズがトトト、と歩いて来てみなもの足にすりよる。
尻尾をぴん、と立てているのを見てみなもは笑みを浮かべている。
「……スズ。」
「みゃ~」
呼ばれると秀久に近寄り、その肩に脚力でジャンプして乗る。
みなもは少し物足りなさそうに見つめながら、秀久を見つめると。
「ヒーくん、朝食はまだ? なら、作ろうと思うんだけど」
「ああ、頼む」
みなもの言葉に秀久はそう言うと、荷物を持つ為に手を差し出す。
それに苦笑しつつも、荷物を渡して秀久の案内で部屋に入るのだった。