ちょっとした妄想
ズブリという音とともに自分の肉体に刺さる凶器。
口からコポリと吐血して、凶器が刺さった腹からも血が流れていく。
血が流れているのはひとりの少女からだった。
凶器を持っているのも少女だ。
刺されている少女はやっぱりなと思いながら刺している少女――実の妹を見ていた。
刺していた少女は凶器を引き抜く、刺されていた少女はドサッと前のめりに倒れてしまう。
「あは、あははははは♪ 殺ったわ、殺ってやった! これであの人たちの心は私のもの!
そうよ、これで私のものなのよ!」
凶器はナイフのようだった、それを投げ捨てると、呆然とみている多人数の人達を睨んで走り去る。
倒れている少女の方からドドドドっという音を立てながら迫り来る影があった。
ゴブリンやグレムリンやスケルトンなどの大人数の大進撃である。
それを見て怯えながら逃げる多人数の人々。
見捨てられた少女はなにもとくに思うこともなく、ぼんやりと眺めており、そのままゴブリンの剣に刺されていく。
グレムリンの槍とスケルトンの剣もどんどんと突き刺さる。
これは絶命まったなしの状態であった。
いや、とっくに死んでしまっているのだからそれは正しくないのかもしれない。
激痛が少女を襲う中、それがだんだんと和らいでいき、意識も途切れていく。
少女は思った、大事な仲間は大丈夫だろうかと思いながらここで死ぬのだろうかと他人事みたいに考えていたまま意識を失う。
ドクン!
脈打つ血の音と共に本来の意識のないまま少女は片手でゴブリンの頭をわしづかんで握り殺す。
その場に血が飛び散る、次にスケルトンの頭を掴んで握るとさらさらと砂みたいになっていく。
……足りない。
ぽつりと少女はつぶやいたまま、そこにいるゴブリンやグレムリンなどを握り殺していく。
時には獲物を奪い、それで切り裂いていく。
意識もなにもなくそこらへんのモンスターを蹂躙してふらふらと歩き出す少女。
その少女の頭には小さな角が生えていた。
髪に隠れていて見えにくいが、よく観察しないと絶対わからないだろう。
ピロン!
新たなスキルを手に入れました。
スキル『羨望』レベルEX
と表示されたが、少女は気づかないまま歩いていく。
ここにでていて倒れているのは深紅のつもりです。