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転生といえばハーレムっしょ

作者はひねくれ者です

 俺は小説が好きだ。


 いくつもの単語が、表現が、組み合わさって形作られる、現実とは別の世界。


 そこで俺は一つの人生を体験する。


 漫然と仕事に行き、いつも通り業務をこなして帰宅する。


 これといった刺激のない俺の人生だが、小説の中では、俺はもっと鮮烈な、彩りのある人生を送ることができる。


 ある時は巨大な怪物を倒しに世界の果てまで旅をするし、ある時はご近所で、様々な人間と出会い、お互いに影響しあって成長を実感する。


 小説のなかでは俺は退屈することがないし、世界は俺を中心に回っている。それは何とも愉快で、甘美な人生だ。


 そんな俺だが、まさか実際に物語の中の世界に入ることになろうとは、露ほども思っていなかった。


    ☆☆☆


「申し訳ございませんっ」


 うすぼんやりと光り輝く長身の美人が、俺の前で頭を下げている。


 気が付いたら目の前に美人がいて、俺に頭を下げている。何を言っているのかわからねぇと思うが俺にもよくわからん。


「勢い余って関係のないあなたまで殺してしまいましたっ」


「浮気した夫にトツカノツルギを叩きつけてやろうとしたら勢い余って地表まで届いてしまったんですっ」


「悪気はなかったんです許してくださいっ」


 涙目になりながら、なんだかよく分からないことをおっしゃる目の前の美人は相当混乱しているようだが、こっちはもっと混乱している。


 何を言っているのかわけわからん。


「古の規約通り、私の権限であなたに希望する世界への転生の権利を差し上げます。どうかそれでゆるしてください」


 ここら辺で俺はもしやと思った。なんか転生系小説とかでよく見るパターンっぽくね?


 かなりの時間をかけて目の前の美人をなだめ、ゆっくりと話を聞いたところ、どうやら俺の予想は当たっていたらしく、目の前の美人は神様で、俺を間違って殺してしまったからお詫びになるべく希望に沿った感じの世界にチート付で転生させてくれるということらしい。


 どんな感じの人生を送りたいですかと聞かれたので、俺はしばし逡巡して、頭に浮かんだ欲望をうっかり口にしてしまった。


「ハーレム」


 だってそうだろう? 転生ものといったら50%くらいの確率でハーレムものじゃないか!? ここでハーレムな人生を希望した俺を誰が責められようか??


 冷静になって考えれば、それはどんな世界がいいかとかそういう希望じゃなくて、どんな感じの人生を送りたいかの希望であって、それは自分の頑張りでどうにかすべきものだったのだろうが、目の前の神様? も混乱していたのか、何も考えずにOKをだしてくれた。


 いや、だしてしまった。


    ☆☆☆


 俺がどんな世界に転生したのか察したのは、七歳くらいのころだろうか?


 いや、ハーレムという希望が叶ったらしく、俺は随分と美形に生まれたと思う。


 ただ、俺の周りでは、なんだか言葉が偉い古めかしく、満足にしゃべれるようになったのは普通の子供と同じくらいだったから、なかなかここがどういった世界なのか判然としなかった。


 この頃になってわかったことは、とにかく父君がやたらと偉い人らしく、しかし物心ついたころには母君はなくなっており、父君が随分と傷心なさっているようだったためか、周りも随分と心配しているようだった。


 それはいい。高貴な家庭に生まれる転生ものはたいていTSと相場が決まっているが、男の子で高貴な家庭に生まれる異世界転生があってもまあいいだろう。


 ただ、なんというか、よく見るとまわりが、古風、どころの騒ぎではないということに気が付いてしまったというか、なんというか、転生してからずっと目をそらし続けていたけど、これだけ情報がそろってしまうと理解せざるを得ないというか、要するに、これって、




「源氏物語の世界じゃねーか!」




 いや、ね、確かにハーレムだよ。幼女から熟女まで、何でもござれなハーレムものだけど、なんか、さ、異世界転生ったら普通ファンタジーじゃね?

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