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全てが終わった日

初めまして!K@MYという者です。

処女作なのでおかしなところもあるかもしれませんが温かい目で見守ってやってください。


雨が降っている。



俺、矢桐壊斗は今路地裏を小さな屋根や物陰を雨除けに使いブラブラと歩いていた。

時折、建物に囲まれた狭い空を見上げて溜息を漏らす。

鉛のようなくすんだ灰色の雲に覆われた空は、見ているだけである種の憂鬱を感じられる。

今日は降水確率0%の筈なんだが…と、今朝の名前もよく知らない天気予報士に文句を言う。

降水確率が0%であると聞けば、当然傘など持って来るはずなどなく、近くのコンビニに用があるだけだった俺は雨に打たれるしかないのである。

幸い、雨脚は穏やかでこれ以上強くなることはないだろう。



そして、人気がなく、ひっそりとした路地裏を進んで行くと、漸く人の声が聞こえてきた。

目の前には路地裏よりも広い空が見えており、近づくにつれてそこを行き来する人々の喧騒が大きくなってくる。

静寂感の漂っていたこちら側から喧噪感のあるあちら側に踏み出す。

先程までとはうってかわり、T字になっている大通りを人々が忙しなく歩いている。

雨が降っているのに傘を差してない人が多いところをみると、どうやら今朝の天気予報は視聴率が中々高いらしい。



そんなたまたま見た天気予報の人気について考察するというどうでもいいことを考えていると、足元に何かがぶつかった。

見てみると、小学校低学年ほどの少女が尻餅をついて涙目になっていた。

おそらく、俺の体にぶつかった衝撃に驚いたことで怖くなってしまったんだろう。

俺は少女を威圧しないよう、目線を合わせるためにその場で屈んだ。



「ごめんな、ぶつかっちゃって。大丈夫?」



話しかけると少女はビクッとしたが、目線を合わせたため幾分か落ち着いたようだ。



「う、うん…だいじょうぶ。」

「そうか、それなら良かった。立てるか?」



そう言って少女に手を貸し立たせる。

見たところ服は濡れてしまっているが、怪我はなさそうだ。

それでも、用心に越したことはないから一応聞いてみるか。



「転んだだろ、怪我はないか?」

「だいじょうぶ!おにいちゃんはけがしてない?」

「大丈夫だぞ。お兄ちゃんは強いからな。」

「そうなんだ!おにいちゃんかっこいい!」

「ハハハ、そう言われると照れ臭いな。」



実際、純粋無垢な褒め言葉っていうのに慣れてないからな…少し照れているのは本当だ。

なんて思っていると、目の前の少女はシュンと目を伏せた。



「…おにいちゃん、ごめんなさい。」

「ん?」

「ぶつかっちゃって、ほんとにごめんなさい…」

「あー…」



みると、自分がぶつかってしまったことを深く反省して謝っているようだ。

怒られるんじゃないかと今にも泣きそうな少女を見て、俺はその少女の頭を軽く撫でた。



「ふぇっ?」

「どうしたんだ?」

「だって、あたま…おこられるとおもったのに…。」

「キミはちゃんと謝れただろ?それでいいんだ。」

「…ありがとうおにいちゃん!」

「お礼も言えたな、偉い偉い。」



すると、このこの母親らしき人がこちらに気づき近づいてきた。



「この子ったら…すいません、ご迷惑をかけて。」

「いえ、大丈夫ですよ。この子もとってもいい子でしたから。」

「えへへ♪おかーさん!このおにいちゃんにほめられた!」

「あらあら、それは良かったわね。それじゃあ、そろそろ私達は行かないといけないので…。」

「そうでしたか。わざわざ引き止めてしまってすいません。」

「いえいえ、こちらとしても助かりました。じゃあ、そろそろ行くわよ?」

「わかったおかーさん!おにいちゃんバイバーイ!。」

「ああ、バイバイ。」



そう言って少女と母親は去って行った。

二人が仲良さそうに喋っている様を後ろから見ていると、何か心に響いたような気がした。

二人を見送り、自分も帰ろうと後ろを向いたその時





---ゾクッ





背中に悪寒が走り瞬間的に振り返った。

すると、明らかに挙動がおかしいトラックがT字路の奥から猛スピードで向かって来ていた。

そして、あろうことかその向かう先には靴紐を結んでいる先ほどの少女がいた。

しかも、彼女の母親は少し離れたところで店内を覗いており、この事態に気づいていない。

このままだと絶対にあの少女は死んでしまうだろう。

頭の片隅からは「少しぶつかっただけの見ず知らずの少女なんて放っておけばいい」という声も聞こえていた。

しかし、その言葉を聞く前に俺は走り始めていた。





何故だかわからないが助けなければいけないと思った。


あの少女を死なせてはいけないと思った。


あの暖かい関係を崩してはいけないと…


あの家族の笑顔を消してしまってはダメだと思った。





---かつての俺のように…!





頭に電流が流れたように瞬間的に動き出した俺は少女の元に滑り込んだ。

そして、彼女をトラックの向かってくる場所から突き飛ばした。

そのことに少女はとても驚いている様だったがそれにかまっている暇はなかった。

そのまま思いっきり踏み切り、体を前方に投げ出そうとした。

助かる、そう思った。

トラックは目と鼻の先にあったがギリギリで間に合った、筈だった。



だが、自分が飛び出した瞬間何かに腕を掴まれ引っ張られた。

今この場には少女と自分の他に誰もいない。

でも、少女は自分の目の前に突き飛ばした、少女が引っ張るのはあり得ない。

しかし、自分は確かに今腕を掴まれ引き戻された。



どうして、何故、と考えている間もトラックは近づいてくる。

その場にとどめられた俺は、唯々呆然と立ち尽くすしかなかった。

そして、ついに…






ドグシャァァァアアアア!!!!!






無情にもトラックが自分を巻き込んで壁に激突し、凄まじい音が轟いた。

全身にこれまで感じたことのないような激痛が走る。

手足の感覚は消えて痛みだけが残り、上半身と下半身が引き千切られ、喉と肺が潰され声すらでない。

辺りには自分のものと思われる血が飛び散り、どこの部位かわからないほど粉々になった内臓が散乱している。

その光景を見た周りから人々の悲鳴があがる。怒号が響き、凄惨な現場を見て気絶したり嘔吐する。パニックになって泣き出す子供もいた。

まさしく今ここは地獄絵図となっているだろう。



それでも、今の俺にはその全てが耳に入ってこなかった。

そんなものはどうでもよかった。

ただ、身を呈してまで守った少女の事だけを見ていた。

この身を投げ出してでも守りたかった彼女の家族は、笑顔は守れたのだろうか。

それだけが気掛かりだった。



自分の体とは思えないほど鈍重にしか動かない顔をゆっくりと彼女の方に向ける。

彼女は先ほど自分が突き飛ばした場所にいた。

良かった、無事だったのか…と彼女の無事を確認できて安心する自分。

そして、ノロノロと顔を動かしながら彼女の顔を見る。





そこには、自分の守りたかったモノは無かった。




---なんで…なんでなんだよ…。




彼女の顔には自分の予想したものではなく、




---やめろ、やめてくれ、やめてください。




彼女が浮かべていたのは、




---違う、違う、違う。俺が守りたかったのはこんなものじゃない。




あの嬉しそうな笑顔ではなくて、




---俺はただ…ただ…





絶望しきったような虚しい泣き顔だった。

---彼女に笑顔でいて欲しかっただけなのに…





こうして、俺こと矢桐壊斗は雨の降るこの日、トラックに轢かれて死んだ。



事故の描写ってあれぐらいでいいのかな…

次回は転生する前に彼の生涯を見ていきたいと思っています。

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