転生モブの俺が転生ヒロインを説教した後頭を抱える話
生まれ変わって16年
全く平和な世界に戦闘チートを渡されて
使う場面は当たり前のようになく
割とコミュ障の高校生になりました
高校生になってやけに美男美女が増えました。
高校生活。近所の私立高校に近いからと何とかぎりぎり入学出来て、海外出張に行ったままの両親の姿も年に一度か二度しか会わずある意味開放的なある意味孤独な学生ライフを送っていた俺だが、初めてこの世界が恋愛漫画の世界あるいはそれに酷似した世界だと知りました。
昨日の事だ。いつものようにオカ研、現在は通称トイレの花子さんぺろぺろ会という実質某囲炉裏の会みたいな数合わせで入れられた俺ともう一人以外は皆変態という部活の帰りで、人気も少ない夕方近く。
下駄箱で靴を履きかえようと思って近づいていくと下駄箱のどこかで誰かが口論しているらしく、妙にうるさい。注意して聞いてみると口論と言うよりは一方的に男が相手の、おそらく女だろうを怒鳴りつけているようだった。
「もう付きまとうな! 鬱陶しいんだよ!」
「そ、そんなつもりじゃなくて」
「じゃあ何なんだよ! 最初からそうだったよな! いきなり妙に馴れ馴れしくしてきやがって! ふざけんな!」
どっちに非があるのか分からないがまあ男が女にあんなに怒るのは大人げないよな。とは言え少し聞いた限りでは女の方もストーカーなのかもしれない。それでブチ切れたのか。まあ帰るか。
下駄箱で上靴を直して最近新調した某スポーツグッズメーカーの靴に履き替える。履き替えている間に誰かが去る靴音とそれからは静寂があたりを支配していて、話が終わったのだと思われた。
さて、帰るか。
「原作ではもっと仲良くなれたのに……」
ん?
取りあえず最後の言葉が妙に気になったので姿だけは確認しておこうと外に出るついでにちらっと振り返る。可愛い系の美人だが、美形の男に何人も言い寄っていて女子の間で評判が悪い同級生だった。というか同じクラスで見た覚えがある。美男美女が妙にうちのクラスには多くて、一人一人は正直良く覚えていなかったから気づかなかったのだ。
男子にも美形とそれ以外であからさまに態度が違うという事で評判が悪かったように思う。
つまるところぼっちだった。ぺろぺろ会以外にろくに人づきあいが無い俺と大差はない。
一月たってあからさまに孤立している彼女、夏休みが近い今、予定は何にしようと誰もが話し合っている中、彼女は一人だった。
うちのぺろぺろ会は何か日本七大怪奇スポットの廃校にトイレの花子さん見に行くとか言っていた。もう一つ昔は廃校があったらしいが謎の消失とやらでどこかに消えてしまったらしい。そういえば謎の消失! と言う見出しでテレビでやっていたことを思い出した。死んでも知らないぞ、と言いたいが後味が悪いので何だかんだで俺も行くことになるだろう。戦闘チートは幽霊退治には役立つからな。
そんな一応は予定のある俺よりも暇そうな彼女だが話しかける者はいなかった。非常につまらなそうだ。一応美人のはずなんだがどうしてこうなったのか。
1学期終業式の日。一日前に最後の打ち合わせを済ませ部活も今日は無しだから帰ろうか、という所でふと校舎裏に男達と一緒に歩いていく彼女の姿があった。
……何か妙な展開が来そうだな。前世でこういう場面があるときは、まあ大抵あれな展開が来るだろうなと思う。
わざわざ助けない道理は無い。先生を取りあえず呼んでおくか、と思って先生を探した。
「お前はオカ研の……お前の仲間じゃないだろうな?」
うちはJC以上は婆だと言い出す変態ばかりです。
予想通り身包みをはがされていた。パンツはまだ履いたままなのでたぶんまだ事後にはなっていない。
「お前ら! 何をしている!」
「クソがっ! やべえぞ!」
「大丈夫、先生、後そこのたぶん先生呼んできた生徒かな」
何か権力者の坊ちゃんぽいのがいたので、丁寧に記憶を飛ばしておいた。戦闘チートってこういう後始末的な技能ないと普通は平穏に暮らせないよな。
結果的に連れていく意味が無かった先生も纏めて記憶を飛ばして、全員帰らせる。後はこの服がボロボロの彼女もそうするべきだが服がな……記憶はどうにかなっても服は買ってこないことにどうにもならないがそういう店に入ったその時点で俺の容姿なら警察通報だ。
「え……隠しキャラ? でも全然顔がイケメンじゃな」
「隠しキャラって何言ってんだ? ゲームの世界か何かと勘違いしてるのか。それかお前まさか」
「転生者なのか」
「ま、まさか貴方もそうなの!?」
という驚いた顔で言ってきた彼女は何となく想像していたとおり転生者だった。話によるとこの世界は乙女ゲーの舞台で、自分は主人公役らしい。自分で自分を主人公、というのは言ってて虚しくないか、と言ったら流石に自分もそう思ったのか顔を赤くしていた。
だが、正確にいうと前世の乙女ゲームによく似た世界、ではなく地域なのだろう。どう見ても俺とか七大不思議とかジャンル違うの混ざってる。あっちはどう見ても危険度的にホラーゲーだ。
「で、どうしてここに」
「会いたいって言ってるって……あいつらが言うから」
ヒロインの攻略対象の一人が自分を呼んでいる、という胡散臭い話に載ってしまったようだった。というよりあの坊ちゃんがそうだったらしい。あいつが攻略対象とか本当に健全な乙女ゲーだったのか。
「上手くいかないね……私ね、白鳥明日香って名前で生まれてきてこれはまさかって思ってわくわくしてたんだよ。実際原作開始の舞台になるこの高校でちゃんとあいつらいたし。でも上手くいかないな……原作イベント再現したつもりなんだけど全然うまくいかないや。私じゃ『白鳥明日香』にはなれないのかな」
ふと考えてみる。いや、そりゃなれんだろ。
「『俺を信じろ! お前は誰が何といおうが俺の一番に変わりない!』」
「は?」
いきなり何言ってんだという顔でこちらを見る。
「ある漫画のキャラの名台詞だ。少年漫画だけどとある場面でヒロインに言った台詞だな」
「はあ」
「俺を恰好良いと思ったか?」
凄まじく白けたというのが分かる表情をなくした目でこちらを見て来た。
「何言ってんの?」
「格好良いわけ無い。俺が言ってもただの戯言だろ。お前が演じようとしてた白鳥明日香もそうなんじゃねえか?」
「え?」
「凡人が漫画の主人公真似ようとしても基本主人公の劣化コピーしか出来ねえよ。お前は漫画の白鳥明日香には絶対なれないんだろ。今までの失敗でそれは分かってるはずだろ」
じわりと目尻に涙が浮いた。やべえ、泣き出す寸前だ。
「わか、ってるわよ! じゃあどうすればいいのよ、もうこんな状態じゃどうしようもないじゃない! 失敗してもう取り返しが」
「まあそうだがやめれば良いんじゃないか? 漫画の白鳥明日香を。この世界で白鳥明日香はお前何だからお前の白鳥明日香をやればいい、と俺は思うがな」
「私の、白鳥明日香……」
「万が一運よくいまから漫画の『白鳥明日香』やって攻略対象と良い仲なっても維持するの大変だぞ? お前の本来の性格の『白鳥明日香』で良いんじゃないか? まあそれでもお前の容姿なら俺よりは遥かにモテるだろ。高給取りでも何でも捕まえちまえ」
我に返った。自分を棚に上げて説教は精神的に今頃来た。
何も言わず走ってすぐ帰った……が、服ボロボロだったなと通報寸前までいったがぼかした事情説明で何とか購入した後帰ってきて体操服を着て帰ろうとしていた白鳥に無言で渡して帰った。
七不思議のひとつに成仏してもらってよくも花子ちゃんを! という仲間の罵声を浴びて帰って来て終わった夏休み。始業式が始まった後二か月がたった。
歪な感じが無くなったのが功を奏したのか、それともイケメンの攻略対象達に全く近づかなくなったのが功を奏したのか。案外にクラスに彼女は打ち解けていた。
若気の至りだったのよ、というおばさんみたいな言葉を新しく出来た女の友人達に言いながら、まだ少数の女に評判は悪いながらも好感度の高い美人のおそらく原作キャラとやらと友人になったことで急速に評判を改善しながら、当たり前の学園生活を彼女は送っていた。
きっと前世の本来の彼女は普通の女子高生だったのだろう。夏休みにいったい何があったのか、と不思議がられながらも遥かに親しみやすくなったと評判で、何と攻略対象のうちの二人からも二学期以降良く誘われるようになったと言っていた。
迫れば逃げ、引かれたらむしろ気になる、という物なのだろう。ただ彼女は部活入ったからと彼らの誘いを受けた事は一度も無い。
あの怪しげな坊ちゃんは釜を掘られていて何かそっち系にに行っていた。ちょっと記憶の飛ばし方が変だっただろうか。まあ白鳥にもうどうこうということはたぶん無いだろう。
「じゃ行こうか」
「おう」
jKはババアだなんていう微妙な意味で安全なオカルト研究部に新しく入った彼女と一緒に俺は部室の道を歩き出した。
たぶん、彼女はこれで問題ないのだろう。
日替わりの天知る地知る~であれだけ暗いノリにはしないと書いたのにと頭を抱えました。
ノリを引き戻そう、暗い流れは断ち切ろうと明るめにいこうと書いた話です。
投稿しようと気づいたら日替わりクエストのポイントが倍ほどに増えていてあれ? あの流れでも良かったのかと思いました。




