第八話:呼び出し
30分後、コウタが原付に乗ってやって来た。表情は固く、今までに見たことないような、むしろコウタじゃないような感じさえした。家の前の塀にもたれかかり、ニヤニヤしながらツトムは言った。
「コウタくん?」
コウタはしっかりと、ハイと答えた。
「で、どうすんの?」
「えっ…」
苦笑いを浮かべながら答えに困るコウタ。
「何笑ってんだよ!この責任どうとるのかって聞いてんの!」
ツトムの怒鳴り声に、コウタの表情が一気に凍った。
「えっ…と、責任は取ります。すぐにでも金も用意します…」
そこでツトムの怒りが頂点に達した。右腕をひと振りすると、コウタの鼻から血が噴き出た。
「金を払う?堕ろせっつってんのかよ?」
「あっ…いや…」
鼻を押さえながら後ずさるコウタ。
ツトムはコウタの腕を掴み、半ば引きずるようにしてマンションの奥へと連れて行こうとした。
「待ってよ!コウタは悪くないよ!私が悪いんだよ!」
片方の腕にしがみついて止めようとしたけど、びくともしなかった。私とコウタをひきずったまま歩くと、
「お前邪魔だから、部屋入ってろ。」
私に言った。
「嫌だ!私も一緒にいる!」
「ふざけんな!もう殴んねーから戻ってろ!」
そうやって無理矢理戻されると、ツトムはしばらく戻ってこなかった。私は気が気じゃなく、長い時間を一人で過ごした。
どれくらい経ったろうか。様子を見に行こうか迷っていると、一人の男を連れて二人で戻ってきた。




