第六話:コウタ
コウタとは、一年くらい前からの関係だった。誰よりも優しく、穏やかな人だった。芸能人で言えば、リップスライムのRYO-Zのように丸くて平和な雰囲気の漂う人。
コウタと一緒にいるといつも笑顔で、幸せだった。服に顔をくっつけると、いつもお香の匂いがして、この匂いが好きと言うと大量に買ってきてくれたりした。
一度だけ、人生で初めての告白をしたのもコウタが相手だった。返事は
「いつかは付き合いたいって思ってる。だけど今はバイトも忙しくて中々時間も作れないし、前の彼女と別れたばっかりで…。」
というものだった。でも私は信じていた。いつかきっと私を見てくれるって。私を好きって言ってくれたコウタを信じていた。何より、今一緒にいれることが大事だったけど。
彼はデリバリーのバイトをしていて、確かに忙しい人だった。だけどその合間に会いに来てくれたり、終わった後に会いに来てくれたり、何だかんだで週に三回くらいは会っていた。
ツトムと付き合っていることを告げた時、コウタは驚いていた。
「えっツトムって…あの?」
「知ってるの??」「この辺じゃ結構有名だよね。」
「へぇ〜…」
「悪い人でしょ?」
「えっ?あっ、…うん、そうなのかなぁ。」
「あの人怖いよね。ハッパ以外もやってるでしょ。」
「うーん…やってるのかなぁ。売ったりはしてるみたいだけど。」
「絶対やってるって。やめたほうがいいよ。ハッパまでだよ!」
「…そういう問題?」