第三話:仕事
私は同じ店に長く勤めることが出来ない。理由は二つあり、一つは長くいるとどんどん気が滅入り、自分が取り戻せなくなりそうな気になるから。二つ目は店を変えると少しリフレッシュできるから。
たくさんのお店で色んな女の子を見てきた。興味本位で入ってきた子や、ベテランのナンバーワン。年を10もサバをよんだり昼間は普通のOLや女子大生、看護士、子供がいる人もいた。
風俗と一言で言っても様々で、見掛けはただのキャバクラでも突然お触りタイムが始まり、女の子が上半身裸で客の上にまたがったりするお店もあった。
私は接客中、心のスイッチを切る。こうして自分というものを必死で守るのだ。
でも、『風俗嬢杏奈』になりきれなくて、戸惑ったり泣いたりするときもある。
今のお店はいわゆるイメクラ。客の好きなコスチュームを着て、好きな設定で好きな役をやる。『自分』でなくていい分少しは楽だ。
私は背が低くて童顔のため、学生やいじめられる役が多い。
キャバクラのように常に客と同じ空間にいるわけではなく、たまに一人で休憩する時間もある。逆に忙しければ常に裸といっても過言ではなく、肌はローションで乾燥し、腕は痺れあごががくがくしたりと、まさに精神的にも肉体的にもきつくて辛い仕事だ。
給料はほとんどが日払いで、接客した時間+オプション─雑費という感じになる。今のお店だと大体一日七万円、多くて十万ほどになる。どうでもいいことだけど。