最終話:感謝
私はずっと母親に、
「普通になりなさい。」「普通でいなさい。」
と言われ続けてきてそれに反抗した時期もあった。自分の個性を認めてくれていないんだと思っていた。母の言う『普通』というのは、自分を無くしてみんなと同じでいなさいという事なんだと思っていたから。
だけど今回の件でよくわかった。『普通』と口を酸っぱくして言っていた母は、誰よりも私の幸せを想ってくれていたのだ。『普通』の暮らしを今はとても幸せに感じるし大切になった。母の言っていたのはこれなんだ、と思った。あんな目に遭って初めて母の愛に気付くなんて本当に情けない。
自分が特別だなんて思わないけど、ああいう体験は誰でもするものじゃない。折角あんな辛い思いをしたんだから、これからはそれを活かすことも頭の隅に置こう。といっても具体的には思いつかないけど。今言えることは自分の事を一生懸命考えてくれる家族や友達は、うるさくても大事にするべきっていうこと。それと、自分で自分を大切にしようっていうこと。
私は男運はないけど、もったいないくらいの親友と大好きな家族がいる。これだけでなんて幸せ者なんだ。それなのに、自ら不幸の道を突き進み私は一人なんだと勝手に孤独感に襲われた時もあった。
二度とあの道には戻りたくない。みんなそれぞれの事情があって風俗嬢になったんだと思う。ただ純粋にそういうのが好きな人っていうのは限りなく0に近く、それしか道がないと頑張っている人ばかりだった。諦めている人もいたけど、もし私達と同じような理由で働いている人や、これから働かなくちゃいけないって思っている人がいたら、もう少し考えてもらいたいと思う。
色んな道があって、決めるのは結局自分なのだ。自分を大切に考えて、決めてほしいと思う。みんながみんなそうじゃないと思うけど、私は想像以上に辛かったし、中々抜け出せない人もいたから。
入るのは自分、抜け出すのも自分。最後はなにもかも自分なのだ。そこに周りの人の支えが必要で、家族や友達以外にもいるかもしれない。
風俗やDVの話だけじゃなくて、色んな悩みがあるけど同じことが言えると思う。結局耐えたり行動するのは自分だけど、一人じゃ抱えきれないものを受け入れたり受け止めてくれる人がいるはず。そんな人は大勢はいないけど、本当に自分を大事に思ってくれてる人はいると思う。それは誰だかよく考えればわかること。人それぞれだと思うけど、自分で気付くべきだと思う。
今は辛いことがあるとあのときの事を思い出す。高校ニ年生の時と19歳の時と、今を比べると悩みなんて大したことない。あの日々に戻るくらいなら何でも頑張れる。そう思えるのが唯一の救いかな。
私は人生で出会う人や起こる事は全部偶然じゃなくて必然だと思ってる。辛い事も楽しい事も。これからの人生に役立つ事なんだと思ってる。まだ何に役立っているのか実感はないけど、きっとそのうちわかると思っている。今後の課題だ。
そうやって気付いていくのが人生なんだ。
最後まで読んでくださって有難うございました。長いわりにあっさりした終わりで納得がいかないと思いますが、人生ってこんなもんなんですね。あれだけ長い間苦しめられた割りに、終わりはたったの1週間くらい。もっと早くに覚悟するべきでした。
現在私は23才で結婚していて子供もいます。若いうちに結婚したいと思ったのは『普通』の幸せを確固たるものにしたいという願望が強かったからでしょうか。今は平穏な日々を送っています。だからこそ文章にもできたのだと思います。でも、言葉にするより辛いですね。
有難うございました。