第ニ十一話:あっけない終わり
私は決意した、ツトムにはっきり別れを告げようと。恐怖もあったけど、それよりカオリと二人で飲み明かしたことで、何かが変わった。恐怖に勝るものがあった。
ツトムの家のポストに合い鍵を落とすと、家に帰ってから電話をした。
ツトムは驚いた様子だった。まさか私がそんな決断をするとは思わなかったようだ。すでに鍵もポストに入れた事も話すと、意外にすんなりと受け入れた。
電話を切ると、思ったよりあっけなく、今までの生活はなんだったのだろうかと信じられない気持ちでいた。自分の部屋が妙な静けさに感じた。
だけど、そんな簡単に終わるはずがなかった。今度は、ポストに鍵が入っていないと言い出したのだ。だけど私は確かに入れた。ポストと言ってもドアに直接入れるので、外に落ちたり誰かに取られるというのはありえないのだ。だけどツトムはないと言い張り、私が直接渡さなかったからだと責めたてた。そして、鍵を交換するからといってまた法外な額を請求しだした。
もうこれで本当に終わるなら、と家族に被害が及ぶことも示唆して素直に払った。
彼は小さい子供と遊んでいた。自分の子供だと言った。嘘か本当かわからないけど、彼は嘘つきだ。始めからきっと付き合う気なんてなかったんだろうな、と後々思う。
それから、お金はもういらないからヨリを戻してくれと電話がきて、もう他に好きな人がいるからと断ると、またコウタの名前を出してわけのなからない理由でニ十万請求された。それは逃げた。というか逃げることができた。なんだ、逃げられたんじゃん。今までバカみたいに働いて渡していた自分が本当にバカだと思ったし悔しかった。
だけど何より自由になれたことが嬉しかった。これからはもう、金を何に使ったと怒鳴られることもなく、服を買ったりご飯を食べに行ったり、好きなことができる。
風俗で働いていたことに少し引け目は感じていたけど、あっという間に平穏な日々に戻った。しばらくは怯えて暮らしていたけど。